杉並区議会議員(無所属)堀部やすし最前線



第2の「赤池」「夕張」とならないために  
土地開発公社はもう廃止すべきだ(3)
2007.
(2)こんな土地開発公社が、本当にまだ必要なのか?

 ●自治体破産の第一号は土地開発公社の暴走が原因

 夕張市が財政破綻し、史上二番目の準用財政再建団体に指定されると話題になっている昨今であるが、日本における準用財政再建団体の第一号は、福岡県の旧赤池町である。平成4年のことだ。

 赤池町が財政破綻した原因は、炭鉱の閉鎖と言われている。しかし、より具体的に言えば、新たな産業を誘致すると称して、土地開発公社が無謀な土地取得を行い、町の会計にあらわれてこない隠れ債務を膨大に抱えてしまったことが最大の原因である。

 現在の現金主義を基本とする公会計制度においては、土地の取得や処分に関する情報がなかなか得られないのが実態である。

 一見して情報が得られないということは、それは、財務会計の書類上において、それらがほとんど影響を与えていないように仕組むことができるということであり、問題を潜在化させることが容易ということである。

 その結果、「実態が広く明るみに出たころには、もはや取り返しがつかない状態になっていた」ということが各地で起こるわけであり、このような現金主義構造によって問題が顕在化していたのは、赤池の場合も、また夕張の場合も、似たような構図であったということができる。

 外部によるチェックが働きにくいだけでなく、内部統制も働きにくい組織構造を持つ土地開発公社が暴走した場合、非常に恐ろしいことになるのである。


 ●全国各地で深刻化する土地開発公社

 こうした実態を受けて、政府においても、土地開発公社の会計制度を変更させてきているが、公社そのものの構造的性格が変わっているわけでもなければ、課題がなくなっているわけでもない。

 旧赤池町が財政再建団体の指定を外れるまでには、十年もの歳月がかかったが、この間、住民サービスは大きく低下し、議会の面目も丸つぶれとなってしまった。

 これは土地開発公社が抱える構造上の問題のひとつである。その気になれば、独立した団体として何不自由なく土地を先行取得することが可能となっている土地開発公社の構造は非常に厄介なものがある。

 その組織体質が健全なうちはよいのであるが、暴走した場合、歯止めがききにくい。土地開発公社の問題は、旧赤池町だけでなく、川崎市を始め、各地に実に大きな影を投げかけてきた。

 幸い、杉並区においては、住宅開発などデベロッパー行為に手を出さなかったこともあり、長期にわたる塩漬けによって、関連債務が雪だるま式に膨らむといったような深刻な問題は発生してこなかった。

 しかし、結果論として、取得価格や土地利用のあり方や区への譲渡の遅れ(支払金利の膨張)といった点で、疑問のあるケースは存在してきた。

 それは土地開発公社の存在そのものが構造的に抱えている問題と言うべきであり、もうそろそろ杉並区においても、公社のあり方は真剣に問い直さなければならない。


 ●安易な債務保証は危険

 最大の問題は、多くの区民の知らないところで、議会の正式な審議や議決を得る前に、いとも簡単に高額な用地を買収することができてしまう抜け穴的手段として土地開発公社が存在している点である。

 もっとありていに言ってしまえば、用地購入に当たって、公社が一種のトンネル機関となっているという点である。

 なぜこのようなことが可能なのかといえば、区がこの公社に毎年上限200億までの債務保証をしているからである。

 銀行としてみれば、区が200億円もの債務保証をしていることで、まさに取りっぱぐれがないと判断できることから、極めて大胆に融資してくれることになる。これほどもの債務保証額を認めてしまっては、その気になれば、土地開発公社は200億円近くまで何不自由なく、幾らでも用地購入ができてしまうのだ。

 これが一歩間違えれば財政破綻を引き起こしかねない構造上の問題点であり、事実、各地において取り返しのつかない財政問題を引き起こしてきた原因でもある。

 土地開発公社が取得した土地は、利子をプラスした価格で自治体が必ず購入しているという現実もあって、公社が最終責任を負わされる構造にはなっていないのである。したがって、公社が買収する段階においては、買収面積や土地条件、買収価格についての判断がずさんになりがちである。

 これが各地の土地開発公社が行き詰まりを見せた大きな原因である。


 ●主張が実って、債務保証額だけは大幅減額になったが・・・

 一般に、土地開発公社の役員、職員はすべて自治体職員である。

 上に立つ者がしっかりしていれば、本来そのようなことはあり得ないことであるが、構造上は悪用することが可能であるから(悪用が容易であるから)、上に立つ者が卑しければ、たちまち財政規律を失ってしまうわけである。

 杉並区においても、土地開発公社に対する債務保証として、これまで毎年当初予算で200億円という高額な包括的債務負担行為を設定してきた。

 しかし、果たして今日、これほどまでに高額な債務保証をつける必要がどこにあるのか。そもそも金額としてこれは適切なものと言えるのか。

 また、高額な用地購入が必要な場合、物件ごとにその都度議会に予算を計上し、議案を提出し、議決する方法ではなぜいけないのか。

 杉並区では、年に3回も4回も補正予算を組むことが、いわば年中行事化しているという状況において、それが不可能なことと言えるのかどうか。

 特に、柔軟な議会開催が現実的に可能となっている昨今においては、これらの問題は極めて疑問に感じる点ばかりであった。

 私の問題提起を受け、平成19年度当初予算より債務保証額が、50億円に大幅減額された(従来の4分の1)。大きな前進となったと思う。

 しかし、50億円といえども、依然として高額だ。過去の実績から見ても社会情勢から見ても、バブル崩壊後、用地購入の実情を見ても、このような高額な債務保証を設定する必要はない。

 土地開発公社に対する包括的債務負担行為は必要最低限度のものにとどめ、できるだけ早期に土地開発公社を廃止すべきである。

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