杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし 議員一年生の議会見聞録(その1) 1999


やっぱり理解できなかった はじめての議会
  目次
  はじめての議会
  やたら立派な議場
  立候補も政見演説もない議長選挙
  形骸化している議会





 はじめての議会


 今回の臨時会は、今後の議会を左右する役職者を選ぶために招集された。また、選挙前後に新旧の区長が専決処分した案件についても承認を求められた。

 ここのところ、連日、多くの資料が届く。手に入れたばかりの区の例規集も、すでに手アカが入りだしている。

 なかには、不十分な資料・不親切な資料もあり、追加の資料を求めたり、担当者から説明を求めたりする。満足のいく資料を届けているという自負があるからなのだろうか、こちらから動いていかないと、役人はほとんど何も説明してこない。

 仕方がないので、こちらから電話をかけることになる。私のような若造に書類の説明不備を指摘されるお役人は、さぞや腹立たしいに違いないと思うが、しかし、こちらは議員として当然のことをしているだけのことである。



やたら立派な議場


 議場に出向く。毎日使うわけでもないのに、やたらに立派である。なぜ、議事を執り行うのに、こんな立派な議場が必要なのか、私にはまったくわからない。どうして、ふつうの会議室でやっては駄目なのだろうか。

 本会議場は、中央の演壇を中心として扇形に議員席が並んでいる。議場は広いが、その割には傍聴席の数は少なく、そして狭い。傍聴する人間のことを考えてつくった施設ではないようだ。

 ちなみに、杉並区議会の議事は、庁内放送でしか 放映されない。他の自治体では、ご家庭のCATVでその様子が放映されているところもあるが、杉並では多くの区民の知らないところで議事が進むのだ。

 演壇の前の席には、少数派の議員が座らされる。そして、大政党の大センセイは、最後方(最高峰?)の座席に座ることになっている。

 後ろの席のほうが庁内放送にも映りにくいし、途中退出したり、居眠りしやすいからなのだろうか? もし、そうだとしたら、うまい具合にできているものだ。

 いうまでもなく、私の席は、最前列である。隣は当選6回の方だが、むかし所属していた政党はもうなく、今はお一人で活動されている。大センセイでも、一人で活動している人は、最前列にされてしまう。このことに限らず、「良い席」はすべて多数派が占める、というのが議会の常識のようだ。

 おそらく、私も何度当選しても永遠にいちばん前の席だろう(もっとも、次は出ないかもしれないが)。「ハゲたら、目立つだろうなぁ」と、訳の分からないことを思いながら、開会を待った。我が家はハゲの家系だ。長くやってはいけない仕事なのかもしれない。



立候補も政見演説もない議長選挙



 定刻になった。議会事務局の役人が出てきて、臨時の議長が指名された。地方自治法によって、臨時議長は最年長議員が務めることになっている。議会は年功序列でもある。

 ちなみに、最年長議員は欠席していた。そこで、出席者の中で年長の議員が選ばれた。当選12回の大御所が登壇し、議会が始まった(欠席者2名)。

 さて、始まったはいいが、驚いたことに、いきなり議長・副議長選挙をスタートさせるという。

 ふつう選挙といえは、立候補者を募り、その政見を語り合うものだ。ところが、そんな大事な手続きが一切省略されて、いきなり選挙をはじめるというのである。立候補も推薦もなければ、政見演説もない状態で、どうやって相応しい人物を選ぶのか、私には理解できなかった。

 そんな私の意思を表明する場は全く与えられず、すぐに投票用紙が配られた。私の議席は最前列にあるので、投票も急かされてしまう。考える時間は、全くないと言ってもよかった。私は抗議の意味を込めて、白票を入れた。

 アッという間に投開票が終わり、たった一回の投票で新しい議長が選ばれた。こんな状況でも名前を書けてしまう他のセンセイ方は、実に素晴らしい「超能力」をお持ちのようである。

 残念ながら、私は「超能力」をマスターしていなかったために、白票しか手段がなかった。まだまだ勉強が足りないとは思っていたが、政治に「超能力」の才能が必要だとは知らなかった。



形骸化している議会



 こうして、臨時会では、言論ではなく「超能力」で次々と物事が決められていった。

 副議長や監査委員、各委員会の委員長・副委員長といった重要ポストも、実にアッという間に(しかも圧倒的な多数の支持で)決まっていった。ふつうの人間には理解しがたいことが次々とテンポよく起こるのである。

 ちなみに、区議会の勢力分布は、自民党15、民主党8、公明党8、共産党7など(全52議席)となっている。最大多数派の自民党から議長が出たこと、第二会派の民主党から副議長が出たことは納得するが、その獲得票がそれぞれ圧倒的多数というのは理解できないことである。

 これが「オール与党」の実態なのだ。何のことはない。大政党の間では、開会の前にすべて裏取引が済んでいて、誰がどのポストに選ばれるのか予め決まっているのだ。

 議会は完全に形骸化している。とてもではないが、この一連の流れに次々と同意していくことはできなかった。

 「地域密着・身近な街の御用聞き議会」ですら、この有様だ。おそらく国会は、もっと腐敗していることだろう。新しい区長は、その国会から転身してきた人だったが・・・まさに臨時議会は、期待と不安が入り交じった新区政を象徴するスタートとなった。


  



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