杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線2000 12月1 No.77
杉並区による 興銀グランド用地の買収規模 は、過大だ! これも立派な銀行救済 補正予算にモノ申す | ||||||
今期の定例会でも、さまざまな審議が行われました。一部では、教育委員の改選が大きく取りざたされていますが、そのほかにも大きな問題のある議案も。以下、主なものを確認しておきます。
堀部やすしを除く全議員の賛成で可決。これによる起債額は、一般会計が1億1200万円+用地会計が113億9500万円で、この10年でも最大規模の起債になっています。 今回の補正予算の成立によって、日本興業銀行が所有している「興銀柏の宮グランド」(浜田山4.3ha)を正式に買収することになりました。財政再建の足を引っ張ることが確実なため、私は、かねてより買収規模を縮小するよう主張していました(報告No.41)。 このため、今回の補正予算には、議会でただ一人反対にまわりました。今回は、この話題を取り上げます(論点は、以下の5点)。 1,買収の背景 銀行救済? 2.買収規模が過大 なにも買うなとはいわないが 半分買収でよいではないか・・・ 3.この地域格差をどうする オープンスペースは区内にバランスよく確保すべき 4.固定資産税 1億円減収に! 維持管理費も膨大に・・・ 5.杉並区の負担はないと言っていたのは、どこの誰だ! 6.おわりに
ごみ問題は深刻。杉並区でも「杉並病」といった問題を抱え、環境問題には真剣に取り組む必要があります。欧米ではデポジット制度がゴミの減量に効果をあげており、日本でも法制化するべきです。自治体単独(地域限定)では十分な効果を出せない恐れもあり、私も、デポジット制度は、広域的に導入することが望ましいと考えています。
11月末に2人の委員が任期満了を迎えたため、区長から提案されたもの。このほか、なぜか委員長も一身上の理由から任期途中でお辞めになることとなり、一挙に3人の教育委員が改選となりました。 なお、この人選については、水面下で議員側の反発が起こり、区長は2名しか人事案を提案することができなくなってしまいました(現在、1名欠員)。込み入った話になることもあり、ことの詳細は、報告No.81 No.82で話題にします。 |
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1.買収の背景 銀行救済ともいわれた興銀グランド買収 | ||||||
上でも指摘したように、今回提出された補正予算によって、日本興業銀行の保有するグランド用地(4.3ha)のすべてを区が買収することが正式決定しました。 昨年(平成11年/1999年)秋、区は、突如として浜田山にある興銀グラウンド4.3haを買収する方針(仮称・杉並南中央公園を創設する方針)を発表しました。 現在、この日本興業銀行は、「みずほフィナンシャルグループ」の一員として、新しいスタートを切っていますが、その経営基盤は安定しておらず、多額に及ぶ公的資金を受け入れています。このため、国の指導に基づいて財務体質の改善を迫られていることもあり、浜田山にあるグランドを売却することとなったというのが背景にあります。 これに対しては、杉並区も前向きな姿勢を見せ、銀行救済ではないかとの批判もあるなか、早々に区立公園化することを打ち出しました。 もちろん、杉並区の将来展望の上では、みどりの保全は重要な課題ですし、この事業の必要性は一定の理解をしています。私も、なにも全く買うなと申したことはありませんでした。 ただ、客観的にみて、今回の買収規模は、厳しい財政の中では、あまりにも過大なものであるといわざるをえず、これまでも議会の場において、「買収規模は半分程度にとどめるべきである」と、再三にわたって主張してきたところです。 |
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2.買収規模が過大 なにも買うなとはいわないが 半分買収でよいではないか・・・ |
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私の反対理由は、すでに、報告No.41でも主張していますが、区による日本興業銀行・柏の宮グラウンドの買収規模が過大であるという点です。 区の説明では、このグランドの買収目的は、【1】グランド内に残された「みどり」を保全する、【2】防災目的のオープンスペースを確保する、というものでした。 【1】みどりの保全については、私がかねてより主張しているように、用地の半分を買収をすれば解決することであり、何ら問題ありません。現在の興銀グランドのなかで、みどりが占めているスペースは約1.7haなのであり、用地全体の40%に過ぎません。私の主張するように、かりに買収規模を半分に抑えたとしても、みどりの保全を図ることは、十分可能なのです。 そもそも興銀グランドの周辺は、たいへん環境が良好なところであり、もともと第一種低層住居専用地域です。また、グランド用地は、すでに都市計画公園の指定を受けたこともあり、今後もマンションや大規模スーパーなどを建設することは、絶対に不可能なのです。 この事実を踏まえれば、なにもすべての用地を区が買収する必要はないはず。仮に、その一部が民間の手に渡ったとしても、基準をしっかり守らせれば、建物は密集せず、低層で「みどり」もある、きわめて良好な住居専用地域(みどりの都市)を実現することができます。 この意味でも、区が財政難のなか、無い袖を振ってまで、興銀グランド用地のすべてを買収する必要など全くないのです。 |
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3.この地域格差をどうする オープンスペースは、区内にバランスよく確保すべき |
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つぎに、【2】防災目的のオープンスペースを確保するという理由についてですが、これも区全体として考えたとき、納得しがたい理由です。 まず、興銀柏の宮グラウンドのある浜田山・高井戸界隈は、すでに多くのオープンスペースが存在しています(興銀グラウンドのほか、新日鉄のグランド、三井不動産のグランド、郵政省のグランド、明治生命のグランド、千代田生命のグランド、さらには区立の塚山公園に小中のグランドが各一つずつ)。 その一方で、同じ杉並といっても、JR中央線沿線には、こうしたスペースが、ほとんど皆無に等しい状況にあります。そのため、緑被率も低く、地域危険度も非常に高く、災害が起これば、まず、助からないといわれています。オープンスペースの確保は、こうした地域格差を念頭において考えるべきではないでしょうか。 幸い、こうした杉並区のオープンスペース不足地域には、都合よく日産の工場跡地が存在しており、日産もこれを売却すると言っているのです(杉並区桃井。敷地はなんと9ha!)。 しかも、ここを防災公園にする際は、新たに組まれた国の補正予算(平成11年度)「防災公園街区整備事業」を活用することによって、より多くの国庫補助(返済義務なし)を受けて買収することができます(ただし、今年度中に事業化する必要あり)。 みどりとオープンスペ−スの地域格差を考えれば、こちらのほうが、より重要度が高く、優先順位も上であると、私は断言することができます。日産工場跡地で、より広い防災公園を整備する方が、区全体のためになることです。 ところが、区は、興銀グランド(周囲にオープンスペースが豊富な立地)を全部買収する一方、日産荻窪工場跡地(周囲はオープンスペースが著しく不足している地域)では半分しか買収しない方針だというのです(→9haのうちの4haを都市公団が公園化。その後に、区がこれを買収)。 オープンスペースの必要性(重要度)を考えれば、まさに「あべこべ」もいいところです。本来ならば、興銀グランドを半分買収に止め、日産工場跡地のほうで、その分、多く買収できるよう交渉するのが筋というもの。区の方針は、地域格差の解消を念頭においておらず、バランスが悪いと言わざるを得ません。 |
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4.固定資産税 1億円減収に! 維持管理費も膨大に・・・ | ||||||
また、この用地買収によって、【1】これまで興銀が支払ってきた1億円もの固定資産税収入が見込めなくなること、【2】さらに、敷地4.3haのすべてを公園化した場合、新たに発生する多額の維持管理費が発生することによる影響なども、強く懸念しています。 【1】固定資産税の減収! これまで興銀が払っていた固定資産税は、毎年約一億円にも上っていましたが、当然、今後、これは消滅してしまうわけです。 もともと浜田山は、区内でも有数の高級住宅街。もし、興銀グランド用地の半分が、民間に売却され、宅地になれば(繰り返しになりますが、マンションは建てられません)、さぞや立派な住宅地になったことでしょう。こうすれば、固定資産税収入はもちろん、多額の住民税収も期待することができたわけです。 ところが、もし、大規模公園になれば、どうなることでしょうか? いろいろ聴いてみますと、この地は、かつて深夜番組で取り上げられるほど、夜は不穏なところといいますか、風紀のよくないところだったそうです。たしかに、北側の新日鉄グラウンドとの境にあたる道路など、今でも、夜、女性が一人で歩くのは少し躊躇われるような感じがあります。 また、敷地内にはかなりの大木が複数存在しています。あの木々をそのまま今後も活用するとなれば、かなり視界の陰になってしまう部分ができてしまいます。現在は、敷地全体がフェンスで仕切られて自由に入ることができませんし、管理の方が厳重に管理されていますから問題は起こっていませんが、もし、区立公園として開放されるとなれば、とくに夜間は犯罪にはもってこいの場所にもなりかねません。 最近では、いわゆるホームレスも増えていますし、また児童や女性に対する暴行や虐待も増えています。大きな公園は、夜になると、いわゆる不良のたまり場になったりするものですが、浜田山界隈は、杉並でも有数の高級住宅街であり、万一、事故が起こったり、悪評が立てば、区としては大損害。井草森公園の二の舞になる可能性があります。 現在とは異なり、不特定多数が利用する大規模公園にすることによって、かの地の治安がかえって悪くなる危険性は否定できず、区は、警視庁に交番の設置を求めているといいます。 そこで、問題になるのは、【2】今後の維持管理費の問題です。すべてを公園化した場合、新たに発生する維持管理費も、きわめて多額に及ぶことを指摘しておきたいと思います。 先に、敷地内にかなりの大木が存在していることを指摘しました。聴けば、敷地内の落ち葉は、現在のところ、焼却処分されているそうですが、これが実に膨大な量に上っているとのお話です。しかし、場所が環境保護を訴えて作る公園ということを考えてみれば、落ち葉をこれまでと同じように焼却処分することは、非常識。とはいえ、大量の落ち葉を有効利用するには多額の費用がかかり、現状では焼却とは比べものにならないくらいの高コストになるのです。 現在の興銀グランドの年間の維持管理費は約3000万円。それでも、現在の興銀グランドは、周囲をフェンスで仕切っており、不特定多数が自由に出入りできるような環境にはありませんから、維持管理費が節約され、低コストで済んでいるのです。 しかし、今後の区の計画では、そうもいきません。コスト増の要因としては、 (1)敷地内の緑、なかでも木々をそのまま維持し、落ち葉を焼却処分しないと言っている点。 (2)これまでとは異なり、公園を不特定多数に開放することによって、ホームレスやゴミの不法投棄が発生する点。 (3)これまで発生しなかった夜間の照明代、治安対策のため新たに交番を設置する点。 ・・・などを計算に入れたとき、現在とは比べものにならない維持管理コストがかかってしまうことは明白です。区は繰り返し、できるだけ維持管理費を抑えたものにするとの答弁をしてきましたけれども、少し考えただけでも、それはかなり困難なのです。 これらを考えたとき、毎年の新コスト(税の減収分+維持管理費)は、2億円近くに達するかもしれません。これは、まさに新たな負担。今後、右肩上がりの経済成長を見込むことのできない現在、減収だけでなく、新たに多額の義務的経費をかかえるのは、困ったことですし、間接的にそれが他の事業に大きく影響していくことは、確実です。 やはり、少しでも財政負担を軽くするためにも、買収規模は半分に抑えるべきなのです。 |
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5.杉並区の負担はないと言っていたのは、どこの誰だ! | ||||||
さて、今回の補正予算最大の問題は、一般会計と用地会計をあわせ、起債総額が115億円にも上り、あまりに多額になる点です。これは、過去10年のなかでも、最大規模の区債発行額になります。 まず、興銀グラウンド用地4.3haの全部買収を行い、跡地を杉並南中央公園とするためにかかる総経費は、総額約220億円にも上るということですが、区がかつて行っていた話のなかには、興銀グランドの買収・公園化にあたっては、区財政は痛まないという説明がありました。国庫補助金や特別区都市計画交付金、それに都区財政調整金の財源措置があるので、区の財政支出はないという説明だったわけです。 また、平成11(1999)年12月21日発行・広報すぎなみ掲載の「区長のいいメール」上においても、区長は、買収のための区債を発行するが、これは都からの資金で償還返済できるので、実質的な借金ではないという説明をしていたわけです。 しかしながら、明らかになった全体像によれば、総経費220億円のうち、国庫補助はわずかに15億円弱、都の都市計画交付金もわずかに16億円弱、あわせて30億円強に過ぎません。 このほか、都区の財政調整交付金96億円弱などを見込むことができるようではありますが、ここ最近の都区の調整のほどをみておりましても、都区財政調整金は実質として、大幅に減額されています。さらに、今後、財政事情が好転しなければ、さらに苦しい事態に陥るわけです。 このような状況を踏まえたとき、区の支出がさも軽微であるかのような宣伝や、「起債はするがそれは実質的な借金ではない」などという支離滅裂な理屈を持ち出して、これを説明をするのは、赤字区債を乱発して苦しくなっている現在の区の姿を念頭においていないとしか思えない発言です。 そもそも国のカネも都のカネも、国税・都税といった形で区民が払う税金に違いないわけであり、「杉並区の負担は一切ない」などといった過去の説明は、目くらましそのものであり、ましてや、多額の区単独の特別区債の発行や、その金利負担まで余儀なくされる事態を考えれば、区の過去の説明は、まったく理屈に合わないものです(実際に、区の一般財源から6億強を投入することが明確になりました)。 |
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6.おわりに | ||||||
このような点から総合的に判断し、私は、今回の議案には賛成することができませんでした。 たしかに、区が言うように、みどりや防災機能を持った大きな公園は数多くあるに越したことはありません。このような財政難でさえなければ、今回の買収について、私も諸手をあげて賛成したいところなのですが、さまざまな福祉施策・教育施策が再構築を余儀なくされている今日の厳しい状況では、用地の買収規模は半分程度にとどめるべきだと確信しています。 今後、劇的な経済成長が期待できないことや、こうした行政の厳しい状況を踏まえれば、国や都のサポートが見込めるものであったとしても、投資的な公共事業は抑制的に行うべきです。 現在、杉並区における起債残高は、依然として800億円超。経常収支比率も95%を超え、区財政は「重体」なのです(もちろん、東京都や国においては、さらに厳しく、瀕死の財政状況にあります)。 |
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