杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線 No.40


興銀グラウンドの買収計画
新たな起債100億円程度? 財政への影響は?


 今期の定例会がスタートしています。今回は上程されている議案も膨大ですが、3月下旬までみっちり審議が続くことになります。さっそく、一般質問に登壇し、
  1. 山田区長の選挙公約だった「20%歳出削減」の根拠や、その達成見通し
  2. 興銀グラウンドの買収問題
  3. 杉並区の介護保険のありよう・・・
などを話題にして話を進めました。今回はとくに非常に曖昧な答弁で逃げられてしまったのですが、3月の予算の集中審議において、曖昧な点を深くつっこんで話を進めていきたいと思っています。追って詳報します。

興銀グラウンド買収の背景


 さて、今日は、私が議会で取り上げた問題の一つである興銀グラウンドの買収について話題にしましょう。

 杉並区は、日本興業銀行柏の宮グラウンド(杉並区浜田山駅より徒歩6分)を買収する方向を打ち出しました。この2月に都市計画決定され、平成12年度末までには杉並区がこれを正式に買収する予定で、今後交渉に入ります。跡地は地域公園として整備する予定ということです。

 この興銀グラウンドは、4.3haにも及ぶ広大なグラウンドです。これだけの規模のものを購入することができるのは、まず行政ということで、昨年の9月に興銀が杉並区への売却を打診してきました。杉並区は、狭い地域に52万人もの人口密集地であり(定住外国人含)、みどりの保全や防災の面からも、オープンスペースの確保が課題となっていたこともあって、早々に買収する方針を決定したというわけです。

カネはどうするのか?

 しかし、この財政難。いったいどこから財源をもってくるのか・・・といえば、モチロン借金するしかありません。財源構成は、以下の通りです。


財源構成

全体事業費(用地費・整備費)
国庫補助金
都市計画交付金
起債(区の借金)
約15% 約85%
●起債相当額は、都区財政調整金の財源措置を受けるなかで返済。しかし、先週も報告したように、都区の財政調整はうまくいっていない。しかも、区の正当な主張すら聞き入れられず、減額されているのが現状である。


 ご覧いただければ、わかるとおり、国や都からふってくる補助金・交付金以外(総額の85%)は、まず、杉並区が借金をし、都区財政調整金の財源措置を受けるなかで、それを返済していくという計画です(都と区の共通の財源のうち、区の取り分がある)。しかし、先週も報告したように、現在、都区の財政調整はうまくいっているとは言えない状況です。しかも、都の深刻な財政難もあって、区の正当な主張すら聞き入れられず、区の取り分は減額されているのが実状なのです。

 このように、ますます深刻になる財政難によって、今後、区の返済が順調にいかない可能性がないとはいえません。そうなれば、区の負担はさらに重みを増すわけです。なお、杉並区は、公式の説明で、「杉並区の負担は一切ない」と言っていますが、それは、区役所の勝手な理屈に過ぎません。そもそも国のカネも都のカネも、区民が払っている税金(国税・都税等)に違いないわけで、ここで支出が発生すれば、今度は別のところで支出ができなくなる話に他ならないのです。どのみち区民のフトコロにひびく話なのです。


たしかに、みどりは保全すべきだが・・・

 たしかに、みどりは保全すべきです。4.3haのうち、1.7haを占めるみどりは残すべきでしょう。しかし、4.3haのすべてを買収するとなると、気になる点がいくつかあります。

●気になる問題1 返済は本当に大丈夫?

 買収だけでも100億円〜130億円かかる可能性があるといわれているが(整備費含まず)、総事業費の85%を区の借金で賄うとなれば、少なくとも100億円もの区債発行となる。区は、これは都の資金で補填されるべきものだというが、ここ最近、都の財政難から、都の補填(財調)は大幅にカットされており、順調に返済が進むかどうか不安・・・

●気になる問題2 地域格差の問題

 興銀柏の宮グラウンドのある浜田山・高井戸界隈は、すでに多くのオープンスペースが存在している(興銀グラウンドのほか、新日鉄のグランド、三井不動産のグランド、郵政省のグランド、明治生命のグランド、千代田生命のグランド、さらには区立の塚山公園に小中のグランドが各一つずつ)。
 一方で、同じ杉並といっても、JR中央線沿線には、こうしたスペースが皆無に等しい。そのため、緑被率も低く、地域危険度も非常に高く、災害が起これば、まず、助からない。こうした地域格差を念頭において政策を考えるべきではないか? なにか優先順位が間違ってないか? 

●気になる問題3 
  より有利な条件で大規模公園が整備できる場所が他にある


 そうした杉並区のオープンスペース不足地域には、都合よく日産の工場跡地がある(杉並区桃井)。そこを防災公園にする際は、国の「防災公園街区整備事業」を活用することによって、より多くの国庫補助(返済義務なし)を受けて買収することができるという。みどりとオープンスペ−スの地域格差を考えたら、こちらのほうが、より重要度が高く、優先順位も上なのではないか?


 みなさんは、いかがお考えでしょう?浜田山付近の方にとっては、少々不愉快な意見かもしれませんが、杉並区全体の利益を考えたとき、私はこうした判断をすべきではないかと考えるのです。

まずは、地域格差を是正することを優先すべき

 ちなみに、中央線近くには日産の工場跡地(杉並区桃井)が存在しており、もうすでに何年も前から、跡地利用について話題になってきました。区全体をみて、オープンスペースが偏在していることを考えれば、まずは日産工場跡地のほうで、より広い防災公園を確保することが必要だと考えています。

 新たにスタートする防災公園街区整備事業によって、日産工場跡地も、防災公園を整備することができる見通しがあります。しかも、この制度を活用した場合、区が購入するにあたっては、その3分の1が国庫補助され、さらに都市計画交付金も期待できるというのです。つまり、興銀グランドの購入よりも有利な条件で、より必要度の高いところに防災公園を整備することができるわけです。

 区も過去の答弁では、都市計画交付金にもパイがあるといっています。そうそうあちらこちらで交付を受ければ、他の計画にも影響が出ます(近年、すでに東京都は財政難から都市計画交付金を減額してきていました)。この財政難を考えれば、やはり区債発行残高を増やすことには、できるかぎり慎重になるべきであって、かりに買収するとしても、その規模は最小限度に止めるべきでしょう。

 私は、買収規模は、用地の半分に止めるべきだと考えています(敷地4.3haのうち、みどりは1.7haです)。そもそも現地は、第一種低層住居専用地域であり、残り半分を民間に売却したとしても、用途制限が厳しいため、妙な建物を建てることはできませんし、また大型店が出店することもできないのですから、心配には及びません。それよりも、区全体のことを考えて、緑被率やオープンスペースの地域格差を是正することを優先し、より必要度の高いところに集中的に資金を投下するべきだと考えます。

まさか興銀救済?

 そこで、「周囲に多くのオープンスペースが存在している興銀グランドの買収規模は縮小し、その分、日産工場跡地のほうで、より広いスペースの防災公園を確保する方が、区全体の利益に適うものであると考えるが、区の見解は・・・・?」と、問うてみたのですが、区の反応は鈍いものがありました。まさか経営難に陥っている興銀を救済する意図があるとは思いたくありませんが・・・

 財政難で公有地を積極的に売却していく時代の流れの中で、あえて買収するというのですから、すべての用地を買収するということに対する財政への影響をよく吟味していく必要があるのではないでしょうか? すでに都市計画決定が済んだ以上、慌てて買収しなくとも、緑を消失させることは絶対にありません。興銀のペースで交渉を進め、あせって高値買収するのはマイナスですので、熟慮しつつことを進めるよう求めていきます。(以上2000年2月報告)


 (以下、2000年4月追記)
 杉並区では、興銀との交渉がまとまり次第、区議会に諮り、区議会がこれを認めれば、正式に買収することが決まります。今のところ、私の他にはとくに疑問を投げかける方がいないため、区の方針通りに用地の全部買収が決まることでしょう。もちろん、大半の方がそれでよいといいのであれば(民主主義社会である以上)、私もそれに従います。しかし、財源は常に有限であり、問題点が多くの区民に明らかになっていない状況では、これが将来に禍根を残さないとも限らないのです。

 さて、私はこのように考えていますが、みなさんは、どうお考えになるでしょうか? たしかに、この地が貴重なオープンスペ−スであることは間違いありません。ただ、これほど大がかりなカネが動く問題であるにもかかわらず、検討する時間も少なく、どんどん話が進んでいったことに、面食らっているのが正直なところです。どうか、みなさんのご意見をお聴かせください。

 最後に、以下は現地の地図です。23区には珍しく、多くのオープンスペースが残っていることがおわかりいただけることでしょう。これをみれば、買収規模は、みどりの保全に重点をおいて考えるべきで、スペース確保は次の問題とは思われませんか? 今後、よりいっそうの財政難が予想される今日、オープンスペースが不足している地域を優先した政策を打ち出せないのは、いったい、なぜなのでしょうか?


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