杉並区議選2011 堀部やすしが重視する杉並区政の課題 公務員が主役の杉並区政に逆戻りさせない


 今回の杉並区議選は「区長交代後の杉並区政をどのように評価するか」が最大の争点と考えています。

 昨年7月の杉並区長選によって、田中良区長(前都議会議長/民主党・社民党推薦)が誕生しています。

 杉並区政は、この区長の交代によって、大きく変容しました。まさに「政権交代」と呼ぶに相応しい状況にあります。しかし、現区政については根本的に支持できない点が多々あり、軌道修正が必要と考えています。

   徹底検証!「杉並区の政権交代」(その1)
   徹底検証!「杉並区の政権交代」(その2)
   杉並区議会に「大連立」が誕生

 このままでは、かつてのような「公務員が主役」の杉並区政が復活しかねません。

 堀部やすしは、「都議会時代より労働組合の支援を受けている田中良区長」の杉並区政を厳しくチェックし、「公務員が主役」の杉並区政に逆戻りしないように、政策本位で牽制していきます。

 1. 財政計画なき「無計画な区債発行」は問題/不自然な「お役所仕事」にメスを
政治家の専横を廃した 入札契約・指定制度改革 と 新たな財政計画が必要です。

 区長交代や族議員の主張により、入札・契約・指定の透明性、競争性、公正性等が再び骨抜きになっています。

 たとえば、新区長当選後、区が最初に(新しく)選んだ業者(指定管理者)は、区長の有力後援者が経営する会社でした。その選定は、当初の方針とは異なり、競争性も透明性も確保されていなかったことから、堀部やすしは、議会でこれを厳しく追及しているところです。

 また、区長の交代によって、財政計画なき「無計画な区債発行」を相次いで決定しています(平成22年度一般会計補正予算第4号で約25億円、平成23年度当初予算で約29億円の新規区債発行を決定)。

 前山田区政時代に策定した「21世紀ビジョン」に基づく現在の杉並区基本計画や財政計画(スマートすぎなみ計画)等は、平成22年度末で終了となりました。田中区長が公約した新基本構想・総合計画は、平成24年度からスタートするとされていることから、平成23年度は何も計画が存在しない、いわば端境期にあたります。

 しかし、端境期だからといって、財政計画がなくて良いということにはなりません。

 新たに起債を起こし、債務負担を抱える場合は、少なくとも中期的な展望を明示し、財政に責任を持たなければなりません。今後の施設改築需要は高く、それらのすべてに対応できる余力があるとはいえないのです。財政計画を持たずに、行き当たりばったりで区債を発行することを許すべきではありません。

 このままでは危険です。起債のすべてが悪というつもりはありませんが、財政計画なき「無計画な起債」は絶対悪であるとしか言いようがありません。政治家の専横を廃した入札・契約・指定制度改革を行うとともに、財政規律を堅持するよう、田中区政を強く牽制していく必要があります。

 なお、前区政で話題になった「減税自治体構想」は、区債残高ゼロを前提とする構想でしたので、その実現への歩みは事実上頓挫しています。前区政の計画では、平成22年度末までに区債残高を80億円にすること(そのうえで平成23年度末に区債残高をゼロとすること)が目標とされていましたが、すでに述べたように、田中区長はこれを継承せず、就任後の補正予算第4号以降、新規区債の発行を決定しています。

 2. 「議会改革」の遅れは致命的です。現区長に「寄らば大樹の陰」では改革は進みません。
(仮称)議会基本条例を制定し、行政と対等に渡り合える議会に

 昨年7月の杉並区長選は、二大政党が激突する大激戦となりました。

 選挙の結果、前都議会議長であった田中良候補(民主党・社民党推薦)が当選しました。その後、杉並区政は大きく変化しています。田中区長は、前区長とは異なる手法で区政を動かしており、政策的にも異なる趣向を持っていることが次々と判明しています。

 ところが、杉並区長選の直後、杉並区議会に「大連立」が誕生しました(民主党・自民党の一部・社民党などによる統一会派)。そして、この会派は、これまで田中区長の提案する議案に100%賛成しています。

 区長が交代すると、手のひらを返したように新区長に擦り寄り、民主党区長の提案する議案に100%賛成する議員が続出しているのです。

 まさに「寄らば大樹の陰」。杉並区の政権交代は、予想外の方向に走り出しています。

 その典型例は、杉並区長の在任期間に関する条例(多選自粛条例)の廃止に強く表れました。

 多選自粛条例は、山田区長時代に全国に先駆けて制定した条例。議会でも熟議の上で制定されたものです。現職区長が4選をめざす場合には、相応の説明責任を果たすよう要請する趣旨でした。

 ところが、田中良区長は、就任後この条例を痛烈に批判するようになり、突然「廃止する」と言い出しました。

 杉並区長選マニフェストに何も書かれていなかった方針が、突然、当選直後に打ち出されてきたため、多くの区民が驚きました。パブリックコメント手続においても反対多数でしたが、熟議されることなく本当にあっという間に条例は廃止されてしまいました。

 まさに区長の「鶴の一声」で廃止されたわけですが、議員48名中、この廃止に反対した議員は私を含め、たった5名のみでした。自民党から共産党まで、90%近くの議員が廃止に賛成しています。

 しかも、条例の制定時(平成15年)に賛成した議員で、廃止に反対した議員は、堀部やすし一人だけだったのです。条例制定時に賛成しておきながら、廃止に同意した議員が大勢いました。

 愕然とさせられました。区長が交代すると「寄らば大樹の陰」で、立場を豹変させる議員が多いのは何故なのか。改めて区長交代の影響(権力の絶大さ)を実感させられています。しかし、区長が交代する度に右顧左眄し、折々の区長の言いなりになるだけであれば、議員の存在意義はないでしょう。

 区長や役人に鈴を付けるのは、議員に課せられた重要な役割のはずです。日本の地方自治制度が国政とは異なり、二元代表制を導入している趣旨を忘れてはなりません。(仮称)議会基本条例の制定をめざし、議会の役割を一から見直す必要があります。党派を超え、政策本位で区政を考える議員を増やすことも必要です。

 堀部やすしは、大学教授が中心となって設立された議員力検定協会が実施する「議員力検定・議員1級」の初回合格者です(初回の合格者は私を含め全国に9名)。党派対立とは没交渉で、政策本位に徹して活動してきました。これまでの経験を生かし、議会改革を先導していく役割を担う用意があります。

 3. 「ばらまき」を改め「真に必要な対策」に財源を振り向けることが必要です。
少子・高齢化対応はバウチャー制度の進化・発展で/特に乳幼児には原発事故に伴う新たな対応を

 子育て・介護支援など「真に必要な政策」に財源を振り向けるためにも、成果思考を重視しなければなりません。施設入所待機者が増加する中、「ばらまき」型の政策メニューは有効ではありません。現段階においては、バウチャー制度を発展させることで、基盤整備を強化することが必要な段階であると考えています。

 この点、区長交代によって実施された「事業仕分け」において、子育て応援券(子育てバウチャー)が「廃止を含めた抜本的見直し」と評価されたことには疑問があります。廃止には同意できません。

 もちろん、現制度に諸課題があることは事実ですが、廃止すべきは、むしろ民主党が推進してきた類の「ばらまき」型政策メニューです。子育て・介護基盤は「ばらまき」によっては何も解決されないのであって、バウチャー制度を上手に活用し基盤整備を進めることが、最もフェアな方法というべきです。

 たとえば、杉並区においては、この間「ひととき保育」だけでも11ヵ所の整備が進みました。

 この数は他区を圧倒していますが、バウチャー導入による成果でもあります。利用者のニーズにあった公共サービスを整備していくためにも、この制度の有効活用には意義があると考えています。待機児童の解消も、この中で解決を図っていくことが適切と考えています。現状に課題があることは事実ですが、サービスを精選することやサービス水準を客観的に評価する仕組みを導入することで、制度の定着・発展をめざすべきと考えます。

 場所の確保には一定の課題がありますが、それでも区立校の跡地や空きスペースなど活用できる場所を生み出すことは可能であり、保育室・学童クラブ・介護拠点として民間開放を図ることで、基盤整備を加速させることはできると考えています。

 このほか、遅れがみられる分野は多々ありますが、以下については特に先送りできない課題と考えています。

 第1は、児童虐待への対応です。

 児童虐待防止法が施行されて10年が経過し、対応は強化されてきましたが、いまなお悲惨な事件が防止できないでいます。年少期の虐待は、その後に大きな影響を与えるため、なんとしても解決にむけ努力していかなければなりません。杉並区子ども家庭支援センターの組織体制・機能を強化することが必要です。

 数多くの課題がありますが、事件発生の度に問題になるのは、児童相談所等の人事政策のあり方や関係機関相互の連携のあり方です。区内においても、杉並児童相談所が設置されていますが、これは東京都が所管しており、杉並区の機関ではありません。早期に区移管を実現し、杉並区として対応を強化することが必要です。

 既に政令指定都市については、独自に児童相談所を有しています。人口54万人を有する杉並区においても管理運営できないことはありません。

 第2は、高齢者対応と介護保険事業計画の見直しです。

 介護保険事業計画の改正が平成24年(2012年)に予定されています。議論が必要な時期を迎えていますが、政府の見直し動きが遅いこともあって前進していません。改正を一部の人間に委ねず、地域包括支援センター等においても地域住民の参加を拡大し、地域資源を生かした計画策定を進める必要があります。

 また、非実在高齢者(所在不明高齢者)が大きな問題となり、対応が求められています。その後、杉並区では積極的な対応が図られましたが、継続可能性に課題があると感じます。既存の町会・自治会等にも関与していただき、高齢者のSOSを受け止めるための新たなルールづくりを模索していく必要があると考えています。

 第3は、原発事故対応。特に乳幼児に対する新たな対応の必要性です。

 東日本大震災を起点とする原発事故が発生して以降、多くのご家庭が毎日大きな不安を抱えながら育児をされています。杉並区は、他自治体に比べると、問題に積極的に対応してきたため、高い評価をいただきました。しかし、まだまだ十分なものとは言えません。事態の長期化を踏まえ、新たな対応が必要と考えています。

 具体的には、杉並区としても独自に放射線数値を調査し公表すること、特に乳幼児に対する放射線対策を徹底させること等が必要です。

 現在、国や自治体で公式に放射線量のモニタリングしている場所は非常に少なく、近隣では東京都が新宿区で計測しているのみです。杉並区は、新宿区より西側に位置しており、福島原発の位置より遠いのは事実ですが、乳幼児を屋外で安心して元気に遊ばせるためには、杉並区における対応も必要です。

 また、乳幼児に与える食材については、特に厳しく管理することが必要です。今ほど「チルドレン・ファースト」が求められている時はありません。「今は平時ではない」との自覚の下、乳幼児向けについては徹底管理が必要と考えます。

 第4は、震災対応です。

 杉並区地域防災計画の見直しが必要です。計画は平成21年に修正が行われていますが、その後、原発事故を受けて新たな課題が発生しています。区民意見を反映しながら、平成22年国勢調査の結果を踏まえ、新たに策定することが必要と考えています。

 また、堀部やすしは、杉並区防災対策条例を制定する際、帰宅困難者対策の充実を図る修正案を委員会で単独提出したことがありますが、当時は可否同数となり、委員長判断で否決されました。今回の震災経験を踏まえ、改めて帰宅困難者対策を再検討する必要があると考えています。

 4.電力対策/後世にツケを回す姿勢にはノーを 
省エネ・環境配慮行動に欠けた指示をしていた区長を牽制し、姿勢を改めさせる必要があります。

 東日本大震災と福島第一原発の事故により、国のエネルギー政策が岐路に立っています。

 東京都は、電力の最大消費地であり、原子力発電所のあり方に無関心ではいられません。脱原発にむけて、杉並区が単独で対応できることには限界がありますが、再生可能エネルギー等へのシフトが起こるよう政策誘導するとともに、新たな都市計画(スマートグリッドシティ)に協力していく必要があると考えています。

 杉並区は、これまでも太陽光発電・エネファーム・エコドライブ支援機器など省エネ各種助成を行ってきましたが、今後よりいっそう強化する必要があります。商店街装飾灯等のLED化も、段階的に進められていますが、電力消費量の削減に大きな効果を上げていますので、前倒し導入を推進していきたいものです。

 しかし、これまでの区長の方針を見ていると、不安の種は無数にあります。

 田中区長は、7月の暑い日に初登庁し、真っ先に庁舎内の空調温度が暑いことを疑問視し、温度を下げるよう指示された方です。その結果、庁内の環境は大きく変わりました。

 たとえば、夏場、省エネの一環ということで一部停止されていたエレベーターは、区長が交代すると、全エレベーターが稼働するようになりました。夏場非常に暑かった庁内の温度も劇的に下げられ、区長の交代によって職場環境は快適になりました。多くの職員が喜んでいるようであり、やはり労働組合の支援を受けて当選した区長が登場すると違うのだな、と痛感させられたものです。

 暑く仕事にならなかった少数会派議員の控室(タコ部屋と呼ばれることがあります)についても、快適な温度が維持されるようになったことには驚きました。少数会派の議員の中に、田中区長を応援した議員がいたからだろうか、と疑心暗鬼になったくらい快適になったのです。

 しかし、これでよいはずがありません。

 東京都環境確保条例によれば、杉並区役所もまた温室効果ガスを基準年度より8%削減しなければなりません。このままの状態で、この高い目標をクリアできないことは、都議会議長を経験された区長が一番よくご存じのはずでしたが、それでも、この方針は貫かれました。

 大震災の影響を受け、夏の電力需要は逼迫しています。大口契約者である杉並区は、より積極的に節電に協力していかなければならない立場にあります。以上のように区長は省エネ政策に熱心な方ではありませんでしたが、今まさに区長のリーダーシップと指導力が問われています。環境配慮行動の推進を強く主張していきます。

 なお、東京電力の労働組合は、民主党を支援していることで有名ですが、このような特定利益集団の利害に左右されることなく、後世にツケを回す政策には強く反対していかなければなりません。

 5. 地域運営学校(コミュニティ・スクール)をさらに拡大し、活力ある区立校の実現を
学力の低下傾向に対応し、教育水準を後退させないために

 堀部やすしは、幼少期に父と死別しているため、家庭環境による教育格差の拡大に強い危機感を持っており、教育政策の充実を重視しています。

 過去に進められた「ゆとり教育」一辺倒の強制には終始反対してきました。教育現場の活性化を支持しています。多様なニーズを踏まえ、特色ある学校づくりを通して教育内容の充実を図ることが必要と考えており、個性・能力・関心に応じた「選択の自由」を認める教育を推進しています。

 これは学力の低下傾向に対応し、教育水準を後退させないためにも必要と考えています。

 幸い、杉並区においては、これまでの取り組みの結果、小学校5年生までの30人程度学級が実現しました。小学校6年生までの実現にも見通しがつくようになっています。学校司書も順次配備されています。今後さらに土曜日・夏休みの有効活用を図りながら、活力ある杉並らしい教育改革を推進していく必要があると考えています。

 区立校不信を払拭するために導入された外部人材参加型の地域運営学校(コミュニティ・スクール)も定着し、複数の先進事例が杉並から誕生しています。先進事例のよい部分を大いに取り入れ、地域運営学校(コミュニティ・スクール)の導入をよりいっそう拡大していくことが必要です。これは選ばれる学校になるために、地域社会が学校経営に参画する新しい区立校を創造していく営みでもあります。

 その一方で、区長交代によって、学校選択制(学校希望制度)の廃止を求める意見が複数の会派から出され、議会の多数を占めつつあります。しかし、これには同意できません。

 それらの理由を確認してみると、いずれも地域と学校の関係を問題視するものが中心となっています。「お祭りをするにも、こどもを集めにくい」「保護者の学校観が狂わされている」といった話が指摘されています。しかし、このような考え方を前提として学校希望制度を廃止するのは妥当ではありません。

 学校が地域の介在を拒否するようなことがあってはならず、地域の大人の理解と協力を得て地域に開かれた学校にするのは当然です。しかし、学校は地域やOB、OGのノスタルジーを満たすための場所ではないのであって、あくまで児童生徒の教育活動のための場所なのだということもまた自覚しなければなりません。

 進路、進学先を決定するに当たって一定の選択の自由を保障することは、自由主義社会における大原則です。一切の選択の余地を与えず、特定の進路・進学先を一方的に強制するなど、時代錯誤で全体主義の復活というほかありません。このような「官による一方的な押しつけ」には賛成することができません。

 杉並区では、学校選択の機会があることで、学校のあり方を考えるきっかけになり、学校側の説明責任もより積極的に果たされてきました。時計の針を逆に戻すべきではない、と考えています。

 杉並区の場合、学校を選択できるといっても、実際には単なる「希望制度」なのであって、実際には自由に選択できるとは言いがたい状態にあります。その実際は、学校選択の自由化や自由競争とはほど遠い内容であり、各家庭に希望提出の機会を与え、選択のチャンスを与えているにすぎない運用です。多くの児童生徒は、地元校に通学しています。現制度の運用を見直すことは是としても、廃止は妥当ではありません。

 なお、杉並区では、これまでエコスクール(環境共生型学校)を推進してきました。空調に頼らない新たな試みとして、ここでも意欲的な取り組みが行われてきました。ただ、実際に整備されたエコスクールには管理上多くの課題が指摘されるようにもなっており、安易な発想で整備することが本当にエコといえるのか、疑問もあります。

 エコスクールになって電力消費量が増えた、という笑えない話もあり、改めて課題を検証し、見直しを進める必要があります。

 (※関連) 教育委員の公募により、広く有為の人材を確保していくことが必要と考えています。

 平均年齢が極めて高いためか、教育委員会の議論が極めて低調です。その低調さは議会の比ではありません。教育委員ポストは、天下りや退職学校長の「上がり」ポスト等々として使うべきではなく、広く各界各層の有識者を選任し、委員会の活性化を図る必要があります。

 教育委員は5名と人数も少なく、一人ひとりが重要です。大所高所から意見をする高齢の委員も大事にしなければなりませんが、保護者と年齢の近い30代・40代のやる気と人望のある若手を積極的に登用していかなければなりません。

 6.焦れば失敗する 杉並区電子地域通貨構想は「急がば回れ」
正しい理念は正しい方法で普及させることが必要

 杉並区は「電子地域通貨」構想を推進しています。かつてない規模の構想にメディアも大きく報道しました。

 地域通貨をツールとして経済循環とコミュニティの活性化を図る理念そのものについては、基本的に高い意義があると考えています。

 しかし、導入にあたっては、いくつか大きな課題があり、それらを確実に解消していく必要があります。正しい理念は、正しい方法で普及させることが必要であり、事業を成功させるためには、杉並区、フェリカ、加盟店がそれぞれ対等かつ応分のリスクを分担することが必要です。

 このままでは、かつて行政の音頭でスタートさせた「マルチすぎなみカード」の二の舞になりかねない危惧があります。今の構想のままでは電子地域通貨は有効利用されず、ベンダーを儲けさせて終わりとなりかねません。マルチすぎなみカードの際は当初約1億の公金投入でしたが、今回はその数倍の費用をかける大掛かりな構想です。貴重な公金を投入する以上、役所とベンダーの都合だけでスタートさせるべきではありません。

 まず、事業者の加盟方法に柔軟性がないことが問題です。

 区内事業者の規模・業種は多種多様であり、業種が異なれば、当然、粗利率も異なります。したがって、区がいくら補助金を出して誘導しようとも、加盟店に一律の固定料金を負担させるというのでは、加盟に二の足を踏む個店が出てくるのも当然です。クレジットカードが普及した経緯を踏まえ、決済端末を無料にしつつ、手数料を相当割合に設定するといった柔軟な選択を可能とする検討が必要です。

 また、行政窓口・行政サービスへの拡大に目処が立っていないことも問題です。

 構想の実現にあたって、区内事業者への端末設置を先行させており、行政サービスへの拡大が後手後手となっています。個店に対し強く導入を迫りながら、杉並区の窓口で電子地域通貨が思うように使えない、というのでは全く説得力がありません。杉並区は年2500億円の財政規模を誇る区内最大の事業者なのです。

 杉並区はこれを行政改革にもつなげていきたいと抱負を語っていますが、今のところは寝言を言っているに過ぎません。初年度については、まず長寿応援ポイントが事業に参加するというので確認してみれば、実際には現在の紙のポイントシールが残ることが判明しました。このような中途半端なことでは行政改革効果はゼロといわねばなりません。理念は悪くないのですから、今は「急がば回れ」です。

 7.外郭団体・行政委員会の改革が後退することは許されない
本丸ではなく外郭に隠れている問題も軽視することはできません。

 杉並区の本丸にある問題は目に付きやすいですが、外郭に隠れている問題も軽視することはできません。重要な問題の隠れ蓑になっている場合があります。

 第1に、外郭団体の廃止・縮小が必要です。

 天下りに象徴される官業の肥大化が問題になって久しいものがありますが、依然として課題は全く解決していません。このことは区においても同様であり、外郭団体からの要請と称して、区退職職員を紹介したり、区職員の違法派遣を行ったりと、自由気ままに不適切な関係を継続してきました。

 区が出資している公益法人の中で、特に問題であるのは、勤労者福祉協会及びスポーツ振興財団です。

 各団体は、いまだに存続を念頭に置いているように見受けられますが、実際にはそう甘いものではありません。公益法人認定法によれば、公益目的事業の定義は、「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう。」とされています。不特定または多数ではなく、不特定かつ多数の者のために存在する法人である必要があり、特定多数の者のために存在しているような法人は、一般の社団・財団法人になってもらうしかありません。

 したがって、専ら不特定かつ多数のための事業を提供しているとは言いがたい勤労者福祉協会ジョイフル杉並については、その決算内容から判断しても、存続は不可能で、一刻も早く廃止すべきです。また、類似の団体が多数存在するスポーツ振興財団についても、その公益性は乏しく、公益法人としての存続に正当な理由があるとは言えません。

 さらに、土地開発公社は、とっくに役割を終えていますが、これまた惰性で維持されています。この公社は議決逃れのトンネル機関に過ぎず、民主主義のあり方としても問題があるため、各地で廃止が相次いでいますが、杉並区では課題が放置されています。

 土地開発公社による用地購入にあたって、杉並区は50億円もの債務保証を行っています。このため、土地開発公社は、その気になれば、どんどん土地を買うことができるようになっているのです。しかし、財政難の中においては、そもそも密室の中の話し合いによって高価な土地購入を決定するべきではなく、誰もが傍聴しチェックできる議会の場で、意思形成の初期段階から正々堂々と議論し、購入の是非や買収価格の当否を判断していくことが必要です。

 第2に、外郭団体には過去の違法補助金問題が残っており、解決が必要です。

 平成21年12月10日、神戸市の外郭団体に支出された補助金の返還を求める訴訟が確定し、神戸市長に約2億5,000万円の返還が命じられています。その判旨は、神戸市が補助金として支出した公金の一部が公益法人派遣法に反し、違法無効なものであるとするものでした。

 杉並区においても、この神戸市とうり二つの方法で、外郭団体に多額の補助金を支出してきました。杉並区もまた長年にわたって違法な補助金を支出してきたのです。直後の予算議会では、私の追及に対し、過去5年間に杉並区が支出した補助金のうち11億5,600万円分が違法無効なものであったことが確認されました。

 区は、当初は最高裁の判断を重く受けとめ、早急な問題解決に向けて取り組んでいく段階にあると述べていましたが、現在では開き直りとも言える態度を示すようになり、最近では杉並区が違法と判断されたわけではないと強気の姿勢をみせるようになっており、問題は全く解決していません。

 しかし、区は違法状態を明確に意識したからこそ、昨年4月には外郭団体から職員の引き揚げを行わざるを得なくなり、続く6月には条例改正を余儀なくされ、さらに補正予算において予算のつけかえを行わざるを得なくなったのは事実です。これを棚に上げて開き直るのは、最高裁の司法判断に対する重大な挑戦です。

 この問題の核心は、区の仕事をしていない者に区が給与を支払ってはならないというごく当たり前の原則を再確認したところにありました。外郭団体のために働く者は、外郭団体の実質的な負担と責任において給与を支払うべきであり、杉並区が原則それを負担することはできません。神戸市の外郭団体訴訟においても、その極めてシンプルな原則が裁判所によって確認されただけのことでした。杉並区においても、区の仕事とは言い得ないような類の仕事をこなすために、外郭団体に多数の職員を派遣していた過去があるのは、明白な事実です。

 当然、既に支出済みの補助金についても、これが違法であると基準が明確にされた以上、本来は責任を持って返還してもらわなければなりません。それを怠っているのは、区管理職OBや職員労働組合の委員長OBなどが続々と天下りをして、外郭団体の重要ポストを担っているからではないのか、外郭団体のトップを副区長が兼任しているから手かげんしているのではないのか。あたかも時効が到来することを待ちわびるかのようなのらりくらりとした態度には大きな問題があります。

 このような聖域は一刻も早くメスを入れ、新しい公共の理念のもと、仕事のあり方、組織のあり方を再検討し、一から出直すことが必要です。

 なお、俗にいう「天下り」は減少してきていますが、それに代わって近年では退職職員の再任用が激増しており、問題視しています。

 技術職や福祉職などにおいては、定年退職者を再任用という形で積極的に活用することが必要な場合もありますが、事務職の場合は必ずしもそうとは言えません。仮に採用が必要な場合であっても、公募が望ましく、民間にも門戸を開放していかなければなりません。これは次の問題とも密接に関係する話題です。

 第3に、各行政委員会のあり方についても見直す必要があります。

 教育委員については、5で述べたとおりです。

 監査委員の選考については、区職員OBの採用は不適切です。厳しい追及を繰り返し、内部監査が充実するようになったことは嬉しいことですが、まだまだ問題があります。監査委員は公正中立な存在であるべきであり、区職員OBが居座っていたのでは厳しい監査はできません。公務員経験者を採用するにあたっては、東京23区と利害関係を持ったことのない者を選ぶ必要があります。

 選挙管理委員会が議員の再就職先として悪用されています。退職議員は、選挙制度に精通していることもあり、選管委員になることが問題であるとまでは思いませんが、現在のように議員ばかりが委員に就任しているのは大問題で、このままでは公正性に疑問が持たれても仕方がありません。

 堀部やすしは、かねてより選管委員の選考にあたっては、議員OBの登用に反対し、常に不支持を表明してきましたが、その報酬のあり方を含め、一刻も早く問題を解決することが必要と考えています。

 8.公務員制度改革は待ったなし
堀部やすしは、これまで「役人特権」「議員特権」を徹底追及するとともに、率先垂範してきました。

 公務員制度改革の断行は待ったなしの課題です。

 第一に、給与報酬の適正化が必要です。

 その最大のガンは人事委員会の存在です。

 公務員は、労働基本権が制約されているため、その代償として、人事委員会の勧告にしたがって給与が決定されています(区長や議員についてもも勧告にしたがって調整されています)。しかし、近年では合理的な解決がなされているとは言えません。人事委員会には、公務員の給与水準を民間従業員の給与水準に均衡させるべく、報告及び勧告を行う責務がありますが、実際には勧告は民間の実勢を反映しているとはいえないのです。

 そもそも人事委員の選任からして大問題なのです。教育委員会や選挙管理委員会が政治家から完全に独立した独立行政委員会として存在していなければならないように、人事委員会もまた、本来は任命権者である区長から完全に独立した組織として存在していなければなりません。

 しかし、実際にはそうでなく、元区長などの天下り先になってしまっているのです。

 職員の任命権者である区長が、退職後に人事委員になるという慣例が続いているわけです。任命権者から独立していることが人事委員会の使命ですが、実際には元任命権者がそのトップに君臨しているというのでは、意味がありません。本当に「人事委員会の独立性」が確保されていると言えるのか、疑問があります。毎年のように民間実勢と離れた「お手盛り勧告」をする理由はここにあります。

 また、人事委員を選んでいるのは、特別区人事・厚生事務組合議会の議員のみなさん方ですが、この組合議会の議員というのは、何のことはない、東京23区の23人の区長が兼職する形をとっています。

 すなわち、各区の区長が人事委員を選び、各区の区長が組合議員という別名を使って、自らの選任にお墨つきを与えているというわけです。これは身近な例で例えて言えば、田中良氏が区長と区議会議員を兼職し、杉並区の教育委員を選んでいるというような状態です。明らかに地方公務員法9条の2の立法趣旨に反しています。

 このように、独立行政委員の一種でありながら、各区議会の同意もなく人事委員を誕生させているのは、東京23区のみです。これについては完全に違法であると言わざるを得ません。東京23区が共同設置している特別区人事委員会は、その存在のあり方を含め、たいへん問題の多い組織であり、一刻も早く特別区人事委員会からの脱退(区独自に公平委員会を設置する等)を含め行動することが必要です。

 第2に、定数管理の見直しです。

 議会機能は、議員の数が多ければよいというものではありません。政策立案・調査機能の充実がないままでは、いくら議員の人数が多くても役割を果たせません。大選挙区制を維持しつつ、議員は少数精鋭化を図り、議会スタッフの陣容を強化していく道が適切と考えています。

 議員定数について、8年前に4議席を削減しましたが、その後はストップしてしまっています。さらなる削減のため、議員提案をめざし努力しましたが、賛意を示したのは補欠選挙で当選してきた みんなの党の横田議員のみであり、提案権(議員4名)を満たすことはできませんでした。

 もっとも、職員定数管理を含め、もはや単独の自治体で考えるべき状況ではないかもしれません。将来の「道州制」を見据え、杉並区も近隣自治体との合併による政令指定都市をめざすべきと考えていますが、その中でメリハリを持った組織再編を図ることが理想と考えています。


 なお、堀部やすしは、これまで議員特権・役人特権を徹底追及するとともに、率先垂範してきた議員です。

 自ら「お手盛り費用弁償」の制度を改めるための訴訟を提起するなど、法的手段を行使することもありました(その後、この制度は東京23区で最初に廃止になりました)。たびたび取材を受け、「公務員の特権」解消を推進する堀部やすしの主張・活動が、いくつかのメディアに紹介されたこともあります。

 議会においても、@不要不急な議員の海外視察には反対し、A「物見遊山」「大名行列」と批判の強い遠隔地への国内宿泊視察についても、あくまで調査の必要性を吟味し参加するようにしています(その結果、過去7年間は不参加としています)。B議員定数の削減や議員年金の廃止はかねてからの持論であり、D勤続10年の議員表彰なども、率先して辞退してきました。D議員提案の期末手当削減案にも賛成しています(否決)。


杉並区議会議員(無所属) 堀部 やすし


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