山田宏・前区長の退職に伴い、昨年7月に区長選が行われ、田中良区長(前東京都議会議長/民主党・社民党推薦)が就任しています。
わずか数ヶ月で杉並区政は大きく変化しましたが、これは徹底検証!「杉並区の政権交代」(その1)でお伝えしたとおりです。今回はその後の変化のうち、見逃せないものを説明します。数多くの問題が発生しています。
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財政計画なき「無計画な区債発行」54億円 |
田中区長は、当選後、2度にわたり新規区債発行を決定しています(昨年の補正予算第4号で約25億円、新年度当初予算で約29億円)。
これによって、従来の財政計画を達成することはできませんでした。
したがって、現在の基本構想(21世紀ビジョン)に基づく、杉並区「基本計画」及び「行財政改革プラン(スマートすぎなみ計画)」は、達成されることなく平成22年度末で終了しています。さらに、これに続く平成23年度は、計画の空白期となっており、財政計画さえ存在していません。
要するに、田中区長は、新たな財政計画をつくらないまま、新たな区債発行を決断しているのです。過去の財政運営を否定するのは構いませんが、財政計画をつくらないまま行うべきことではありません。
どのようなご家庭においても、今後の収入を推し量りながら中長期的な返済計画を立てるなど、将来の見通しをもったうえでローンを組むでしょう。その当たり前の説明責任が果たされていないのです。中期的見通しを踏まえた財政計画を持たずに起債するのは大問題です。
起債のすべてが悪というつもりはありませんが、無計画な起債は絶対悪であるとしか言いようがありません。国政が混迷を深め、国家財政が危機的状況を迎えている今、このような「財政計画なき無計画な起債」に同意することはできません。
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選挙公約であったはずの「減税政策」を当選後あっという間に放棄 |
「経済状況を考慮した恒久的な減税政策の推進」は、昨年7月の杉並区長選における田中良候補の選挙公約でした。選挙公報にも、マニフェストにも記載されていました。
ところが、当選すると、田中良区長は、減税を目的とする政治を強く批判するようになり、減税政策は妥当でない旨、発言するようになりました。減税基金(災害対策基金を廃止して新たに設置した基金)への新規積立も凍結を発表しました(昨年9月)。
選挙公約に明記の「経済状況を考慮した恒久的な減税政策の推進」は、このように当選後たった数ヶ月で放棄されてしまったのです。
選挙公約をあまりにも軽く扱い、当選後たった数ヶ月で事実上撤回してしまった現実には驚くほかありませんが、今後については、せめて「大きな政府」とならぬよう、堅実な経営に努めてもらわなければなりません。
なお、これは東日本大震災前に発生した話であり、大震災を受けて政策が放棄されたわけではありません。
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選挙公約になかった「多選自粛条例の廃止」を強行 |
選挙公約になかった「多選自粛条例の廃止」を強行したことも問題です。
杉並区は、前区長時代に多選自粛条例(杉並区長の在任期間に関する条例)を制定していました。現職区長が4選をめざす場合には、相応の説明責任を果たすよう要請する趣旨でした。
ところが、新区長は、当選後この条例を痛烈に批判するようになり、突然「廃止する」と言い出したのです(その後については、これまでも他の項で詳しく述べてきましたので、ここでは割愛します)。
条例の廃止は、パブリック・コメント(区民意見の提出手続)において反対意見が多数となっていたにもかかわらず、就任後たった5ヶ月で決定されてしまいました。重要事項でありながら、区長選のマニフェストには何も書かれていなかったこともあり、熟議が必要というべきでした。
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区長公設秘書を4名に増員 |
杉並区長の公設秘書は、これまで正規職員2名に再任用(定年退職者)1名という配置でしたが、4月より正規職員4名体制にすることがわかりました。
そこで、予算審議の際に、その理由を問い質しましたが、「単独行動が多かった前区長と異なり、どこに行くにも秘書を同行させる必要がある、それが私のやり方」「出先でメモをとったり、聞き漏らしのないようにしたい」といった趣旨の説明がなされていました。
しかし、杉並区では、一貫して職員定数を削減してきたのです(前区長時代に職員1000人以上削減)。それも各部局で痛みを分かち合って削減を進めてきたのです。
いまなお各部局が懸命に職員削減の努力をしている中にあって、区長のお守り役公務員から増員し、聖域化するというのでは説得力を欠いています。
学校現場をはじめ、他に人手を必要としているところが多数あるにもかかわらず、これでは他部局に示しがつきません。
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