◆本会議(議事録)◆


「2000年問題」について(その2)

1999年秋




 前回に引き続き、緊急を要する懸案である2000年問題を取り上げました。その主な内容は、①システムの修正状況・現場の対応状況について、②危機管理計画について、③区民への情報提供について、です。


 
堀部やすし 2000年問題への対策状況を伺う。また、この問題について、区民への情報提供が遅れているのは問題だ。

 
区政情報室長 7月の模擬テストでコンピュータの正常稼働を確認。2000年対応は出来ていると判断しているが、引き続きテストを重ねる。今後は、広報やホームページのほか、区民との会合を開き、情報提供を進めていきたい。

 
堀部やすし 2000年問題を契機として、住民登録・課税納税等をめぐるトラブルが発生した場合の対応はできているか。

 
区政情報室長 データ保護のため、住民登録情報、課税納税情報、国民健康保険情報等、各業務で必要とする帳票等を事前に複写・出力し、対応する。





ここから議事録です
 

 通告に基づきまして、一般質問を行います。

 まず、前回に引き続き、いわゆる2000年問題について取り上げます。
 
 この8月の下旬、世界の2000年問題対策に関する情報を収集しております国連の国際2000年問題協力センターが、第1回の調査報告を発表しております。それによりますと、日本は、国連に情報提供に応じる方針を伝えたとはいうものの、集計の遅れと情報公開が遅れから、実態把握のできない国というレッテルを貼られてしまっております。とても先進国の対応とは思えない状況であります。世界にはもっとひどい状況の国がありますから、それから比べれば、日本の対応は、まだマシなはずなのですけれども、情報公開が遅れているために不信が深まっているのであります。
 
 特に、中小企業と地方自治体の対応の遅れが話題になっておりますけれども、杉並区に目を転じてみても、区の情報提供の姿勢に特に進展は見られておりませんし、相変わらず憂慮すべき状況であると考えております。

 前回の定例会でも指摘しましたように、この問題の重要な特性は、同時多発性ということであります。万が一が発生すれば、輸入大国の日本にとって本当に深刻な事態も予想されております。2000年問題は、コンピュータの誤動作が直接影響する範囲で収まるものではありません。全世界のごくごく一部のコンピュータが誤動作を起こしただけだとしても、その影響がアナリストの予想を超えてしまえば、株式市場・金融市場にも大きな影響を与えることでしょう。
 既に、9が並ぶことで知られるコンピュータの厄日9月9日の前日には、コンピュータ・トラブルによる決済の混乱を警戒した銀行が資金を出し渋り、無担保コール翌日物金利が二倍に急騰し、実際に混乱が発生しております。

 一部のカーナビゲーションが故障した8月22日のGPS問題にしても、相当前から話題になっておりましたし、これは期日のハッキリした有事だったわけであります。その意味では、十分対策をとることはできたわけでありますけれども、ところが実際には、対応ミスで問題が起こってしまいました。私の知る限りでも、メーカーは繰り返し注意を呼びかけ、努力をしていたと思います。消費者への事前の情報公開が必ずしも少なかったわけではないとも思います。しかし、それでも、実際には、メーカー側が情報を伝えたつもりでも、実際には伝わっていなかった消費者が大勢いたわけです。実際、一部のカーナビが動かなくとも死ぬわけではありませんし、大事故がなかったのは不幸中の幸いでありますけれども、メーカーには苦情が殺到し、対応に追われ、担当者は休みの返上であったということでございます。

 現在、各方面で必死の対応が進められてきていることもあり、2000年1月1日自体は、それほど大規模な問題は起きないかもしれないというふうに言われつつあります。しかし、二次災害、三次災害といったその後の問題に対応できるかどうかは、現在全くの未知数であります。直前になって混乱を起こすことのないように、また万一に備えて冷静に対応していくためにも、現状をつまびらかにしていただきたいと願うものであります。

 そこでまず、現状把握の一環といたしまして、現在までの庁内の対応状況についてお伺いしておきます。

 第一に、前回の定例会でもお話にありましたプログラムの修正作業については、現在どうなっていますでしょうか。現在のシステムの修正状況、現場の対応状況についてお答えください。

 区の説明では、区の職員が修正作業にあたっているというお話でしたけれども、大変難儀なことであるというふうにお察しいたします。郵便番号が7ケタになったのは、ついこの間のことでありますけれども、武蔵野市などは、この対応に非生産的なお金と時間がかかりすぎるという理由で、いつまでも5ケタ対応を維持していたところです。しかし、2000年問題の修正作業は、郵便番号を7ケタに修正するのとは比べものにならないくらい、暗くて悲しく、非生産的な作業を膨大にこなすことになるのであります。区は、前回の定例会の答弁でも、この実に大変な作業につきまして、すべて職員が対応していると、自信ありげにお答えになっていらっしゃいましたした。

 さて、それはそれで結構ですけれども、それでは理事者のみなさん方は、現場の状況をしっかりと把握していらっしゃるのでしょうか。といいますのも、この杉並区は、かつて、今年の3月末には修正中を完了すると言っておきながら、それが、きちんとした説明もなく、前回の定例会では10月末をメドに修正中ですなどといううふに、いつの間にやら変わってしまっておりました。政府の高度情報通信社会推進本部がその行動計画の中で、6月末をプログラムの修正・模擬テストの期限に定めていたにもかかわらずの状況であります。その場しのぎでいいかげんな答弁をするのではなくて、現場の対応状況について正確なご答弁をお願いしたいと思います。

 同様に、6月には2000年問題対策部会による庁内調査を行われたというお話でしたが、その結果についても、ご報告をお願いいたします。
 
 その後、実施された模擬テストについても、その結果はどうであったのか、また、区はその現状をどう判断されていらっしゃるのか、お答えをお願いいたします。

 前回の定例会では、マイクロチップについても調査し、把握するという答弁を受けております。これはどうだったのでしょうか。マイクロチップについてかつて一度簡単な調査をして、問題ないという回答をいただいた、というお話もしていらっしゃいましたが、これは一体だれがした調査で、どう裏づけをとって問題ないと言っているのでしょうか。この際、あわせてしっかりとご説明をお願いいたします。

 次に、日本独自の2000年問題である和暦問題についてお伺いいたします。

 実は、日本では、和暦、平成年度があるからこそ問題が複雑になっているという状況にあります。このあたりの対応は一体どうなっているのでしょうか。和暦表示については複数のプログラムが存在しておりますが、杉並区のプログラムは、どのようになっていますでしょうか。お役所はいまだに和暦主義でございますので、杉並区も、この和暦問題について庁内の現状をお答えください。

 さて、2000年問題では、さきに指摘したように気の遠くなるような作業、問題を次から次へと扱わなければならないわけですが、前回も指摘したように、修正する際には、まず製造元にきちんと確認を取っていくという作業が基本になるはずであります。そこで初めて対応が意味あるものになってくるわけでございますが、さて、区では、最終的な、例えば修正完了、2000年問題の対応終了といったことを、一体どのような観点から判断されていらっしゃいますでしょうか。

 私は、さきの定例会で、区に製品を納入している各業者に対し、2000年問題に対する対応状況を確認した上で、各業者に確認書、保証書を求めるよう要望をさせていただきました。さて、区では、製品の製造業者がどのような判断基準によって2000年問題をクリアしているのか、きちんと把握し、しっかり保証書をとったうえで、対応を完了していっているのでしょうか、お答えをお願いいたします。

 さて、次に、コンピュータの話を少し離れまして、区の危機に向けての取り組みという観点に視点を移して質問を進めていきたいと思います。

 区は、この問題における危機管理について、もう2月の段階でその必要性を認めておきながら、自治省が要望した6月末までに危機管理計画を仕上るわけでもなく、大変のんきに取り組んでいらっしゃいます。しかも、なぜ、このような事態になっているのかということについても、区は一切説明していない状況であります。このようなことが続いておりますと、こちらといたしましても、一層の不安を感じないわけにはいきませんので、どうかひとつ区長、きちんと説明責任を果たしていただきたいと思います。

 まず、自治省は、危機管理上の対策本部を設置するように求めてきております。これについて区では現在どうなっているのか、お答えください。この問題に関する本部長に相当される方及びその構成メンバーは、どなたになっていますでしょうか。また、現在ここではどのような取り組みを進めており、今度の対応はどうなっているのでしょうか。お答えください。

 次に、この8月から9月にかけて、この杉並区でも防災訓練が行われておりますけれども、区の広報ポスターによれば、2000年問題対応というような表記があったかと思います。2000問題は、もちろん訓練以上に正確な情報発信が大変不足している現状ですが、防災課の説明では、この訓練のときに2000年問題の説明も計画されていたはずであります。さて、この8月から9月に行われた防災訓練の際は、この2000年問題についてはどのように位置づけられていたのでしょうか。お答えをお願いいたします。

 この9月といえば、先ほども指摘しました9月9日という日がございました。コンピュータの厄日の一日でありまして、いわゆる危険日の一つということでありました。これについては、前回の定例会でも指摘させていただいた点ですけれども、世の中に99を入力することでファイルが終了するシステムが過去に存在していた以上、不安がぬぐえない日でありました。実際には、先ほども言いましたように、短期金利が急騰するなど一部に反応は見られましたけれども、大方無事に乗り越えたようであります。

 しかし、トラブルが全くなかったわけではありません。新聞報道によれば、茨城県のとある病院で、9月9日午前9時9分から約5分間にわたって、患者の呼吸数や血圧、脈拍を自動的に記録するコンピュータを使った装置にデータが記録されなくなるというトラブルが発生しているように、やはり油断できない問題だったということが明らかになっております。

 ただ、こうした事件、社会的な信用問題にも関わるためか、トラブル隠したがる傾向があると言われております。まさか杉並区はそんなことはないと思いますけれども、9月9日については、とくに問題は発生していませんでしょうか。厄日として一応指摘されていた日でもありますので、一応お尋ねしておきます。

 さて、以前のお話によれば、いよいよ今月末、2000年問題に対応した危機管理計画が策定されると伺っております。とはいえ、問題はむしろここからであります。計画を作ったとしても、それが庁内の自己満足で終わってしまっては、全く意味がありません。この新たに作成される危機管理計画は、今後どのように生かされていくのでありましょうか。議会への報告や区民への周知はどのようになっていますでしょうか、お伺いいたします。

 次に、危機管理対応ということで、区の事務事業に関しても幾つかお尋ねしておきます。

 ご存じのとおり、阪神・淡路大震災では大きな被害が発生し、ホストコンピュータが吹っ飛んでしまったという企業もございました。聞くところによれば、企業によっては、システム回復まで伝票や帳票で顧客データを回したといいますけれども、中には随分手間取った企業もあったようであります。

 杉並区の場合、一般的な災害を念頭においたものとして、平成9年に、杉並区を含む都内8区で、災害時における大型汎用電子計算機の相互支援体制に関する協定が結ばれております。しかし、この8区のホストコンピュータがすべて吹っ飛んでしまった場合どのような対応をしていくのかということについては、この協定を読む限りでははかりかねますので、このあたりについてもお伺いしておきたいと思います。

 余り過激なことは言いたくありませんし、また、これから指摘するようなことは恐らく起こらないというふうに思ってはいますけれども、一応危機管理計画といいますのは万一の事態を想定してつくっておくべきものですから、少し仮定の話をさせていただきたいと思いますけれども、例えば、あくまで例えばの話ですけれども、間違って、住民登録がいつのまにか抹消されてしまったというときの対応はどうなっていますでしょうか。それから、どういうわけか税額計算が狂ってしまい、後から区民のもとに住民税や年金が未納だというような連絡がきたり、信じられないような額の請求がやってきた、このような場合の対応はどうなっていますでしょうか。こうしたことは自然災害の場合でもあり得る話かと思いますので、今さら対応がないわけはないとは思いますが、明確にお答えいただきたいと思います。

 前回も指摘しましたように、個人でなければ、2000年問題については損保も相手にしてくれませんし、PL法上も、2000年問題によるコンピュータープログラムの障害については、どうやら免責になりそうであります。結局ぼんやりしていた者がバカを見るということになるのでありまして、どうかそうならないように、せめて行政ぐらいはしっかりとしていただきたいわけです。

 繰り返しになりますが、危機管理といいますのは、やはり最悪の事態を想定して万全の備えをしておくべきなのであります。ところが、最近の日経新聞に大変厳しい内容の記事が載っておりました。つい先日、9月10日のことであります。この記事によりますとと、銀行界では内部の対策は大筋で終了しているのに、ここへ来て、地方自治体や中小企業の対策の遅れから業務に支障が発生するかもしれないというのであります。この記事を読んでまいりますと、県庁や市区町村など数十の地方公共団体の指定金融機関となっているとある銀行では、担当者が行政に接続テストは必ず必要というふうに説得しても、役所側に、うちのシステムは年号を和暦で処理しているので2000年問題は関係ないなどと突っぱねられるそうであります。和暦だから安心とは言えないことは、先ほど指摘したとおりであります。職員の給料や年金、区民の税金などを対象に収納、支払い事務を扱っている銀行にとって、行政の非協力的な態度や情報開示の遅れは業務全体に影響を及ぼしかねないことであります。

 杉並区ではこうしたことは、ありませんでしょうか。そして、杉並区では、こうした外部の公共機関との連携、取り組み状況は一体どうなっていますでしょうか。これまでのお話では、区以外の公共機関とは、2000年問題関係機関連絡会で検討しているというお話でありましたけれども、どのような話し合いを進めていらっしゃいますでしょうか。お答えをお願いいたします。

 危機管理ということでは、この2000年問題についての今後の区の対応スケジュール、また、年末年始の対応予定についてもあわせてお伺いをしておきたいと思います。

 恐らく現状では、年末年始よりもその前後に徐々に悪い影響が出てくるように想像しているわけですけれども、一応都は年末年始に災害対策本部を設置するということになっております。ただ、現在、災害対策基本法などにおいて、災害の定義は、自然災害ということになっておりまして、現状では、2000年問題のような社会システム災害は、この法律上災害に含まれていないという現状にあります。にもかかわらず、都は2000年問題を理由として災害対策本部を事前に設置すると言っているわけです。ということは、石原慎太郎都知事は、災害救助法の適用をにらんだ食糧の配布や自衛隊の災害派遣要請を迅速に行うことができるよう準備しておきたいという意思判断なのだろうと私は想像しております。

 この問題については、アメリカでも州政府が軍の待機を検討したり、カナダでも国軍のレベルで危機対応を計画を準備しているそうですから、何も不思議なことではないと思います。ただ、自衛隊法によれば、都知事の要請がない限り自衛隊は災害現場に出動することができないことになっておりますので、都知事としても、いざというときにももたもたしないようにしておきたいという配慮なのかもしれません。そうでなければ、災害が発生してもいないのに、災害対策本部をつくると発表するわけがありません。

 このように、危機管理計画を6月中にきちんと作成し、具体的に準備が進みつつある都に対して、区では、年末年始一体どのように準備していく予定なのでありましょうか。情報が今のところございませんので、ご説明をお願いしたいと思います。過日、担当課長、部長ほか数人が役所に出てくることになるだろうという、待機体制を検討しているというお話でありましたけれども、区としての現在のところの対応計画についてお答えをお願いいたします。

 さて、ここに来て、2000年問題を悪用した事件が起こる可能性についても報道され始めております。この観点からも質問をさせていただきます。

 この夏に公開された映画で、ショーン・コネリーが主演している「エントラップメント」という、2000年問題を契機に銀行から大金を奪い取ろうとする設定の映画であります。具体的には、銀行が2000年対応の新システムに移動するわずか十秒の間に、犯人がプログラムを変えまして自分の口座に大金を移そうという企てを一つのテーマとした映画であります。最初のころは、実際の銀行のセキュリティの高さからいってもこんなことは起こり得ないと笑われていたそうですけれども、ところが最近になりまして、この映画の話は、そう架空の話ではないという報告が出てまいりました。

 この2000年問題について早くから警告している世界的に有名な調査会社に、ガートナー・グループというところがあります。ここが最近まとめた報告書によれば、2000年問題に絡んで、電子的な詐欺やデータ盗難といった被害が起こる可能性があるというのであります。これは、2000年問題でシステムの修正にかかわったごく一部の担当者の中に、既に、他人のデータ、個人情報、預金などを盗むなど、にせのプログラムを組み込んでいる可能性があるという指摘でありまして、まさに映画に近い混乱が起こるかもしれないというものであります。何でも、被害額は最悪で十数億ドルになるかもしれないというお話ですけれども、既にアメリカでは、実際には複数の証券会社で、2000年問題対応のプログラムの中から、こうしたプログラム、要するににせのプログラムが発見されているという報道もございました。これは将来のプログラム修正のために組み込まれたものも中にはあるそうですが、故意に仕組まれていたものもあるということでございます。確かに、いかに銀行のセキュリティーが高いといっても、システムを理解している内部の人間が悪知恵に協力しているというのであれば、被害は防ぎようもないわけであります。

 この想定は、あくまで金融機関での想定に過ぎませんが、区に置き換えてみると、貴重な個人情報が危険であります。災害には必ずつきものの火事場泥棒とでもいいましょうか、2000年問題にかこつけて、どさくさに紛れて何か事件が起こるという可能性はないとは言えないはずであります。

 こうしたシナリオは、2000年にかかわった担当者が、その仕事の意味合いを認められず、正統な評価を受けられなかったと感じた時に起こる可能性があるというふうに警告されています。また、プログラムの修正にかかる日数を惜しんでしまって、他のチェックを受けず一人の担当者だけで修正作業に当たった場合にも起こる可能性があると警告されております。私は先ほど、理事者は現場をきちんと理解しているのかという趣旨の質問をさせていただきましたが、このような意味からも、きちんとした現場管理が重要になるのであります。区では、2000年問題を悪用した事件が起こる可能性についてどのようにお考えでしょうか。ご見解をお伺いいたします。

 さて、区はシステムの修正については職員で対応し、特段の予算を計上していないというお話でありました。さらに、この2000年をめぐる危機管理対応についても、現在なお特段の予算を取っていないようであります。ということは、区はその必要性を感じていないということになるかと思うのですが、危機管理についての質問の最後に、このあたりのご見解についてもお伺いしておきたいというふうに思います。

 続きまして、この2000年問題に関する地域への情報提供ということにつきまして、幾つかお尋ねをいたします。

 まず、区は、今後地域でどのように2000年問題を説明していかれるおつもりなのでしょうか。前回の定例会のご答弁では、消費者センターなどで相談にも乗っていくというお話がありました。ところが、今現在でもそのような体制があるようには思えませんけれども、いかがでしょうか。今後、区としてこの問題に対してどのような情報提供を行っていく考えがあるのか、お聞かせをお願いいたします。

 この問題はあくまで人災でありまして、ある日突然と発生する自然災害ではありません。その意味では、前々から事件が予想されていた有事なのであります。それでも、ちまたではまだまだ大変認識が低いわけです。
 今年度の防災白書をみましても、例えば防災訓練を行っている企業は全体の60%にすぎず、食糧や水を備蓄している企業も半数以下、また、その備蓄量といっても、3日ともたないところがほとんどだそうであります。

 さらに、東京都の商工指導所の調査によれば、都内の中小企業の中で、2000年対応が完了したと言っている企業はたったの三割、ことしじゅうに対応を予定しているところを含めても50%以下であります。さらに、いざというときの危機管理計画を策定している企業に至ってはたったの1割、策定予定のあるところを合わせても2割強というひどさであります。これは、8月上旬に郵送で商工指導所が調査したそうでありますから、回答してきた企業はまだ意識ある企業なのでありましょう。恐らく世間の実態は、もっと悪いことでありましょうし、ただ、これは資金難もあるかもしれません。しかし、どうも多くはこの問題についてよくわかっていないというような状況なのであります。行政の対応の遅れが、こんなところにもあらわれているわけです。

 最近になって、政府や都による中小企業への対策も進むようになってきておりますが、しかしながら、さきの調査を見ても、中小企業の場合であっても、公的な支援として一番に求めているのが情報提供、そして情報公開でありまして、税制上の優遇や特別融資はその次の要求なのであります。

 ところが、行政自体は、青色申告者に対するパソコンの購入や買いかえについて、全額損金算入を可能にして優遇を図るのが関の山でございまして、民間人が一番に求めている情報提供については、おざなりのままであります。ましてや、ごく普通の消費者、区民などは、もっと情報不足の状態に置かれているわけであります。行政の情報提供の遅れを強く指摘しておきたいと思いますけれども、こうした情報提供の遅れについて、区はどのように考えているのでしょうか、お伺いいたします。

 防災課の啓発チラシによれば、アメリカ赤十字社の呼びかけを引用し、現金の準備や備蓄を求めているような記載がございました。しかし、その割には、そのチラシには「」買い占めはいけません」等とも書いてあるわけであります。

 先日の新聞によれば、政府は2、3日分の食糧備蓄を各世帯に求めていくという予定だと報道されておりましたけれども、また、区の、次に発行される広報などを見ておりましても、とりあえず3日分は必要だというようなことが掲載されておりました。ただし、この2、3日分といいますのは一体どの程度のものなのか。また現金については、例えば年末に実際どの程度手元に置いておくべきなのか、非常に漠然とした情報提供に留まっておりまして、どうにもピンとこないのであります。これでは関心のない方などは、いったいどの程度の準備をすればよいのやら混乱してしまい、それこそ区が指摘しているような買い占めなどという現象も起こるやもしれません。

 実際には、この問題の特性から見ても、他地域との相互援助協定もほとんど機能しない可能性がありますし、この機会に区として、一体、例えば年末に具体的にどの程度の現金及び食糧の準備を各世帯に求めていくおつもりなのか、ご説明をお願いいたしまして、第一番目の質問を終わります。


 理事者の答弁 


 区政情報室長

 それでは私から、2000年問題と情報公開に関するご質問のうち、所管事項につきましてお答えをいたします。
 
 まず、2000年問題についての今後の対応スケジュール、対策本部、危機管理計画等についてのご質問ですが、区では現在、助役を長として、部長を構成員とする杉並区コンピューター西暦2000年問題対策会議を設置し、9月末を目途に、杉並区コンピューター西暦2000年問題危機管理計画の作成に努めておリます。区では、危機管理計画策定後、直ちに区長を本部長として2000年問題へ対応してまいリます。
 
 また、年末年始における区の対応ですが、現在のところ、区では、予測しがたい事態に備えるため、災害対策本部の設置を視野に入れた対応を考えておリます。また、情報システム課及ぴ中央図書館などでは、1月1日にコンピューターの正常稼働の確認を行う体制を考えておリます。

 次に、プログラムの修正状況、現場の対応状況等についてのご質問にお答えをいたします。

 まず、プログラムの修正ですが、2000年問題が内在している1,134本のすべてのプログラムについて、8月末をもって修正を終了しておリます。また、現場の対応状況につきましては、作業の進行管理の強化をし、修正作業を進めてきたところでございます。

 また、マイクロチップの調査でございますが、本区の技術職員とメーカーの協力を得ながら、中央監視装置設置施設について確認作業を進めてまいりましたが、いずれの施設も2000年問題による障害は生じないことを確認いたしておリます。

 2000年問題対策部会による庁内調査の結果についてのご質間ですが、全課を対象に、オフィスコンピューター、。パーソナルコンピューター、施設管理機器及び区以外の機関等からの情報の入手について、2000年問題による障害の発生の有無を調査いたしましたところ、2000年問題による障害の発生はないとの結論を得ておリます。

 次に、模擬テストとその結果及ぴ九月九日の問題についてのご質問ですが、去る7月にシステム開発機でテストしました結果、正常稼働が確認されておリます。したがいまして、現状では、2000年間題への対応はできていると考えておリますが、なお引き統き、慎重を期すためテストを重ねてまいる所存でございます。

 また、障害の発生が予想されていました9月9日ですが、本区においては全く障害は発生いたしておリません。また、本区以外でも、特に問題が発生した事実は聞いておリません。

 和暦表示で間題は起こっていないかとのご質問ですが、現在和暦を使用しているシステムは、住民基本台帳事務処理システムがございます。このシステムは、コンピューターの中で西暦4けたで管理しておリ、和暦に変換して使っておリます。なお、七月にこれをテストしまして、問題は生じておリません。

 次に、対応済み、修正終了や完了をどのような方法で判断しているのか等のご質問ですが、中央監視装置設置施設につきましては、メーカーへの確認をもって判断いたしておリます。また、委託契約者から各施設ごとに問題発生時の対応策を提出させ、事前に内容の確認を行いますので、2000年間題への対応は図れるものと考えておリます。

 万一ふぐあいを生じた場合の対応についてのご質問ですが、データ保護のため、事前にファイルの複写作業を行うとともに、区民の基本情報である住民登録情報、課税・納税情報、国民健康保険情報を初め、各業務で必要とする帳票を出力し、万一に備え、区民に対応してまいる所存でございます。

 また、日常的な区の事務事業に支障が生じた場合の責任につきましては、区はできる限リの対策を講じてまいリますので、責任の問題は生じないものと考えておリますが、万一何らかの問題が生じた場合には、適切な対応を図ってまいリたいと考えておリます。

 区民への情報提供についてのご質間ですが、区民へは「広報すぎなみ」9月21日号に掲載し、また11月、12月号の広報紙による周知、さらにホームページ等を活用して、2000年問題とはどういう問題か、また、今後作成する区の危機管理計画等につきましても周知してまいリたいと考えておリます。また、2000年問題に対する区民の不安を早期に取リ除く上から、区民との会合等の機会を活用して情報の提供を行ってまいリたいと考えておリます。

 2000年問題を悪用した事件が発生する可能性についてのご質問ですが、区の内部におきましては、セキュリティー対策基準を定め、情報管理の徹底に努めておリますので、そのような事件が起こることは考えにくいものと思っておリます。

 補正予算の必要性についてのご質問ですが、詳細な対応につきましては未確定な部分が多くございますので、既定予算の中で対応してまいリたいと考えておリます。


 地域復興部長

 私から、2000年問題について3点お答えいたします。

 去る8月21日、22日の両日に実施いたしました総合震災訓練において、西暦2000年問題をどのように位置づけたかとのご質問でございますが、西暦2000年問題は、当区の災害対策の上で当面の重要な問題として受けとめておリます。当日、各参加企業及び訓練参加者に対して、啓発ビラの配付、各企業ごとの説明コーナー設置や参加者への説明会の開催など、積極的に働きかけたところでございます。

 次に、他の公共機関との連携についてのご質問にお答えいたします。杉並区では、他区に先駆けて2000年問題関係機関連絡会を設置し、最新情報の交換に努めているところです。今後、其体的な相互の協力体制の構築を行う予定でございます。

 3点目でございますけれども、各家庭の備畜品に関するご質問ですが、区では、三日分程度が必要であると考えておリます。


 (堀部やすし再質問)


 順序が逆になリましたが、2000年問題の方ですけれども、8月の末にシステムの修正が完了したというお話を初めてお伺いをさせていただきました。いろいろ質間をした次第なんですが、その確認をどんなふうにとっているのかということを質問しているわけです。テストしてみました、大丈夫でしたというのは、どこでも発表していることでありまして、繰リ返しになるわけなんですけれども、例えぱ、各業者が行っているような対応テストなどで対応済みとか完了といった発表は、本当に非常にあいまいな定義のもとで行われておリます。それが、ただ単にプログラムの修正が終わっただけなのか、それをどんな手段で確認したのかということについては、余リ公開されておリません。模擬テストをやったといっても、内部で簡単な模擬テストをしたのか、オンラインでちゃんとつないで、他社との接続まで確認して行ったのかとか、こういったことも含めてどういう対応をしたのか把握をしていきませんと、何でもかんでも、どこでも対応していると言うわけです。

 一番わかリやすい例、ちょっと例として適切かどうかわかリませんが、Windows95というのがあリました。これは2000年に対応していることを売リ文句に発売したものだったわけです。ところが、実際対応していなくて、次から次へと修正をされまして、結局同じWindows95といいましても、正確には4種類の製品があリます。皆、微妙に違うわけです。それでも対応ができなくて、今度は昨年、Windows98というOSが発売されました。このWindows98にしても、今度こそ2000年対応だと言っていたのが、やはリ対応できてなくて、また修正を余儀なくされているわけです。この対応済みという言莱が、例えばマイクロソフトのような、あのような非常に対応が進んでいるところでも非常にあいまいに、いいかげんに使われているというのが現状なのであリまして、テストしていると。それはまあテストしていると答えるのは簡単なんですが、一体どういうテストをして、どういう形でどういう根拠で大丈夫と言うのかということを詰めていきませんと、杉並区であっても対応を完了しているとは言えないんじやないかなというのが私の正直なところです。いかがお考えでしようか。

 それから、自治省なんかが求めている対策本部、これは対策会議と杉並区では言うそうですが、これは本部長が助役だそうでございます。危機管理についてお答えをお願いするときに、所管の部長でも結構ですが、やはリ本部長といいますか、対策会議の長は助役であリますから、助役の方からも、この問題の取リ組みというものについてご決意の方をお聞かせいただけれぱというふうに思っておリます。

 それから、各業者について対応がどうなっているかということで、ちゃんと確認書、保証書をとっているかという話、これは実は前の定例会でも聞いても答えてもらえず、今回も答えてもらえなかったわけですが、先ほども言いましたが、どこもかしこも対応しているとは言うわけですが、本当に対応していて大丈夫だったら、では、保証書を出してもらっても問題はないわけで、実際にしっかリしたところは、保証書を出しなさいなんて請求をして問答をしているところも民間にはあるわけですから、本当に安心だったら、保証書を求めて、それで提示していただきたいなというふうに、これは各業者に求めるべきではないでしょうか。

 それから、年末年始の対応ということでちょっとお聞きしたのですが、ひょっとすると、こんなことはないと思いますけれども、2000年問題で年末年始に電車がストップするかもしれない、こんな可能性は全くゼロとは言えないわけです。JRは大丈夫だとは言っていますけれども、わからないわけですね。では、危機管理計画の中で、万一年末年始に公共の交通網がストップした、こういう場合に、例えば災害が起こった。一体職員の皆さん方が何人ぐらい参集できるかということについて、これは年末年始の対応ということでお伺いしたのですから、いざというとき、年末はこういう対応でやっておリます、いざというときはこれだけ参集できるようになっておリますというような詳しいご答弁をお願いしたと思いまして、質問した次第であリます。

 私がちょっと調べたところ、都の下水道局でも、年末年始の場合は、発生から6時間後であっても全職員のうちの一七%しか参集できないだろうなんていうふうなデータが出てきたわけですけれども、それで果たして大丈夫なのかどうかということも、当然、危機管理ということについては議輪しなくてはならないはずであリますので、このあたリについても、そろそろ何らかの対応があるかと思いますので、ご説明いただきたかった点であリます。

 それから、年末年始、各世帯にどの程度の備蓄、準備を求めていくのですかという質間をいたしました。3日分という答えが返ってきました。私、質問したときに、2、3日分とか3日分じゃわからないと。民間の人たちは、3日分て何だろうという漠然とした思いを抱くことがあるわけです。特に現金についてなんですが、一体どの程度準備しておけぱよいかということについては、これはきちんと徹底しておかないと、とんでもないことになる可能性があるわけです。

 日銀は一応40兆円の紙幣を準備したと言っているわけなんですが、40兆円というのは、国民一人当たリにすると約40万円です。一人の人が300万も400万も引きおろされては、ひょっとすると紙幣が足リないよなんてことにもなリかねないわけで、それこそ買い占めじゃあリませんが、大変なことになるわけで、ある程度適切な額を、事前に早いうちにおろしておいてくださいではないですけれども、何がしかのそういう具体的な数値をもとに説明をしていかないと、ただ三日分だけ準備しなさいというと、これは三日分じゃ足リないだろうから、やはリ何百万も引きおろしておこうかいな、ということにもなリかねないはずであリます。この辺についても指導をしっかリとしていく必要があると考えておリますので、この辺もよろしくお願いをいたします。

 それから、2000年問題を悪用した事件が発生する可能性があるが、どう考えていますかということなんですが、余リしっかリした、まあ対応は大丈夫だというようなお話だったかと思います。ただこれは、別に疑うわけではあリませんけれども、現場の職員の方など、やはリ大変なことだと思うわけです。実際、新聞報道でも、2000年問題対応で非常に過重勤務を強いられて、耐え切れずに飛びおリ自殺してしまったというような事例も報告されておリます。今さらやっても間に合わないだろうなという本音を持ちながら、薄々だめだろうなと思いながら準備をし、まさか上司に対応できていませんとは言えないので、対応していますというふうに答える場合もあるといいます。このあたリ、改めて客観的な尺度から確認をしていかないと、一人の人間が対応し、確認テストはしたといえども、ちまたでも話題になっておリますが、確認テストと現実はやはリ違うということが間々あるわけであリます。

 三鷹市の例なども、和暦問題に対して三鷹市で混乱が起こったことが話題になっておリましたけれども、その場合も、確認テストで失敗をして大変だったというご報告が新聞にもあリました。このあたリも含めて、確罷テストと実際はどう違うのかということをもう一度検証していただきたいと、最後にこのあたリは要望ということで申し添えておきたいと思います。
以上です。


 私の再質問に対する理事者の答弁


 区政情報室長

 それから、8月末にテストが完了したということについて、どのようにしたのかということでございますが、これにつきましては、7月に、ことしの12月の例えば11時50分という時間を設定し、そして零時になったときにどういうふうに機械が稼働するかということで、具体的に日時を設定し、そして2000年を迎えたときに修正したプログラムが正常に動くかどうかということを、実際に日時を設定したテストを行っておるということでございます。

 それから、業者の確認書、保証書等を求めるべきだということでございますが、現在、確認書とか保証書というものはとっておリませんが、特に大きな影響を与えるNECと中央電算については、契約をしておリます。したがって、NECに対しましては、どういう対応をし、今後どういう区との連携を図っていけるのかというようなことでの文書をいただいております。それから、他の業者につきましては、安全確認はしていただいておリますけれども、保証なリ確認書はいただいておリませんが、委託管理をしていただくその委託書の中に、そういう万一の場合の対応等を含めて、委託契約の中に、そういう対応を含めたものを入れていくということで対応しているのが現状でございます。

 それから、年末年始の具体的な対応でございますが、一応、電車がとまってしまった場合には来られないということもございます。ただ、防災課の方では、区役所に歩いてこられる人間がどのくらいいるのかということも把握しておリますので、いざとなれば、そういう体制等も考えられようかと思っておリます。そこで、年末年始の対応につきましては、防災課では、12月29日から1月3日にかけて、即時対応ができるような体制を考えていくということになっております。情報システム課は、先ほど申し上げましたように、1日に出勤し、実際に稼働をし、テストをしてみる。もし異常があれば、始業の1月4日までの間に修正をすべて終えるよう、NECとの約束をしておリます。したがって、情報システム課が1日に出てくる。

 これに関連しまして、オンラインで結ばれているということがあリますので、出張所、庁内の陳税とか戸籍窓口、それから図書館、そういうところは出勤をし、オンラインテストを行う予定になっておリます。先ほど申し上げましたように、一日に実際にやってみて、もし異常があれぱ、4日の、要するに始業までに、プログラムの修正なり必要な対応を図って、正常な勤務ができるようにしていきたいと考えておリます。

 私からは以上でございます。



 地域復興部長

 現金を含めました備蓄品に関する再質問にお答えいたします。
 
 まず、区内の各家庭におきましては、家族構成、所得、ペットの有無など、状況が千差万別だと理解しておリます。そのため、おのずから、準備する品目、数量、そして手持ちの金額に差が生じてくると認織しておリます。このため、区では、区民の皆さんがご自分のお考えに従った3日分程度の備蓄品をお願いしている、そういう状況でございます。

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