杉並区議会議員(無所属)堀部やすし最前線



第2の「赤池」「夕張」とならないために  
土地開発公社はもう廃止すべきだ(4)
2007.
(4)土地開発公社に存在意義はあるか 廃止される土地開発公社

 ●廃止されはじめた土地開発公社

 杉並区関係者にとって、もはや当たり前のように利用されている土地開発公社の存在であるが、これは所与のものではない。

 事実、同じ東京23区内であっても、江戸川区では土地開発公社が設立されたことすらないし、八王子市でも、もはや土地開発公社と土地開発基金の役割は終わったとして、3年以上前にこれを廃止している。

 八王子市においては、これまで土地開発公社による用地買収の実績があったことから、一部に公社の解散には異論もあったようである。

 しかし、これに対して八王子市側は、今後用地取得の必要が生じたときには、予算化し、議会の議決を経て行うことが財政の健全化につながるという強い思いで解散を決断したと述べるなど、力強い答弁のもと、廃止が決定されたとのことである。

 他の物品購入に比べ、はるかに高額となる用地取得については、取得価格の妥当性や取得方法の透明性・公正性が一層強く求められるべきであり、八王子市の選択は当然と考える。

 ちなみに、八王子の場合、同時に土地開発基金も廃止されたので、そもそも「先行取得」という考え方そのものが完全に廃止されたと言っても過言ではない状況にある。

 このように、現に土地開発公社がなくても何ら困っていない区市が都内に2つも存在しているが、東京の場合、そもそも東京都にも土地開発公社は存在していないのである。

 また、全国各地で、いま公社の廃止が続々議論されているところである。具体的な廃止の動きとして、神奈川や広島、札幌などで本格化してきている。


 ●もはや土地開発公社は不要

 さて、区が直接用地を買い入れるというのではなく、土地開発公社を通じて間接的に用地購入をすることのメリットは--------私はこれをデメリットだと主張してきたわけであるが、、要するに、議会の議決を通さなくても先に用地を買うことができるという点にある。

 もちろん、バブル期のように、土地の価格が急上昇し、ぼんやりしていると必要な土地が買えない、価格もどんどん上がってしまうというような異常な時代においては、土地開発公社が一定の役割を担っていたことは否定しない。

 しかし、それは長い歴史の中では例外的な事象と言えるのであり、むしろ先行取得したがために高値でつかんでしまい、批判の的となってしまったケースや、もう少し価格交渉の余地があったのではないかと思われる用地購入も見られるところである。

 また、全国各地に目を転じてみれば、先行取得したまま塩漬けになってしまった土地の問題が深刻化し、それが住民訴訟に発展した事例も数々報告されているところだ。

 杉並区においては、著しく長期にわたる塩漬けはないものの、数年にわたって区に引き取られない用地は実際にあったわけであり、疑問がないわけではありません。果たして土地開発公社は必要不可欠な公社と言えるのかどうか、改めて問い直さなければならないものである。

 特に、従前より広く周知され、広く同意されていたような都市計画が存在するなど、だれの目にも必要性が明らかな物件ならばまだしも、購入に賛否があってしかるべき通常の物件までもが、行政サイドと土地開発公社側の意思決定に引っ張られる形で安易に購入されている点については問題が多く、それが数十億円単位の用地買収にまで適用されているのは、非常に問題と言わざるを得ないものがある。

 これに対しては、「本会議などでの議会審議及び議決を通さないことで迅速かつ柔軟に土地取得ができる」「包括的な債務保証をつけておくことで柔軟に土地取得ができる」といったような反対意見も存在しているところである。

 しかし、購入に当たって多額の資金を要する高額な土地を、まさに一秒を争って買わなければならないかのような緊急事情が、そう頻繁に発生するということはないはずである。

 一定規模のまとまった土地や、購入に多額の資金を要するような土地については、一般に事前に地元自治体に対して売り込みや購入の打診が行われていることが多く、何ら購入には問題がないはずなのだ。


 ●土地開発公社は廃止すべきだ

 また、近時では、地方自治法の改正を受けるまでもなく、名実ともに機動的に本会議を開催することができるようになってきている。

 特に杉並区においては、長年の取り組みが実って、日額の費用弁償が廃止されており、議会招集の手間もコストも極めて小さなものとなっている。

 仮に緊急時であっても、円滑かつ機動的に購入をすることができる仕組みが整ってきているのである。

 そもそも過去の用地購入の実績から見ても、土地開発公社を使わずとも、計画的に用地購入をすることは不可能ではない。

 いまや、かつてのような意味での先行取得の必要性はないと言うべきであって、土地開発公社は、もはやその役割を終えたと言えるものである。土地開発公社は廃止すべきである。

 さて、欧米における土地資産総額は、それぞれの国の名目GDP(国内総生産)とほぼ同じようなところに位置するというふうに言われている。

 これに対して日本の場合、内閣府の国民経済計算によりますと、依然として一千三百兆円もの土地資産があるということになっている。

 しかし、一方の日本のGDPは四百兆円台である。日本の地価総額は、依然としてGDPの二倍から三倍のボリュームがあるということになっていくわけであるが、このことは、日本の土地、とりわけ住宅地の地価がまだまだ高いということを示している。

 今後さらに少子高齢化が進むことを思えば、土地をめぐる諸課題はいまだ深刻と言えるのであり、土地利用のあり方、用地購入のあり方、用地管理のあり方もまた見直しは不可欠と言えるだろう。

 もとより、このような土地本位制について、ここで議論するつもりはないが、、いずれにしても、後年度になって土地に踊らされ、翻弄されることのないように、構造的な問題については、早期に手を打っていくということが必要と考える。

 土地開発公社についても、長期的な視野に立って、そろそろ賢明な判断を行うべきだ。


 ●「財政基本条例」の検討にも不可欠な視点

 杉並区では、財政基本条例の制定が本格的に検討され始めた。

 財政規律を保つためには絶対に必要な条例であり、私自身も以前より待望してきた条例である。いずれ地方債発行の自由化時代が到来することを踏まえるならば、財政規律を保持するための新しいルールづくりはもはや不可欠である。

 もちろん、これについては、債務負担行為の設定のあり方も非常に重要な論点と考える。そして、こうした中で財政基本条例を制定するとなれば、土地開発公社のあり方についても、再検討しないわけにはいかないはずなのである。

前に戻る 先頭に戻る


杉並 堀部ホーム ] 杉並 堀部ご意見はこちらへ