杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線 2001年12月〜
検証!「レジ袋税」条例(6)
6.「杉並病」問題から考える
   →家庭ゴミの有料化とレジ袋税 「容器包装リサイクル法」の欠陥を補うために
※全6回シリーズの第6回。審議を受けて随時内容を更新します。
なお、総目次は、こちら

それでゴミが減るわけではないが・・・

 ハッキリ言ってしまえば、レジ袋税は、「ゴミの減量」という視点では寄与しません。レジ袋は、可燃ゴミの2%弱と不燃ゴミの4%強を占めるに過ぎないものですから、これは仕方のないことです。

 しかし、ここまで数々の論点で厳しいことを書いてきたものの、それでもそれでも「レジ袋税」に意味があるとすれば、税源を使って容器包装リサイクル対策を加速させることができるという点に尽きます。

 「それでは税の二重取りではないか!」という批判もあることでしょう。それは事実なのですが、まずは、以下の文章に、少しお付き合いください。


税金の二重取り vs. 行政の二重負担


 まず、ゴミの減量を目指した法律として、日本にも「容器包装リサイクル法」という法律があるにはあります。

 しかし、この法律の欠点は、リサイクル経費の多くを事業者負担ではなく、行政負担とした点。欧州では、このようなことはありません。これが日本で不燃ゴミの減量が進まない原因となっている重い現実があります。

 レジ袋税は、「税金の二重取り」という批判は、その通りですが、この分野では、欧州と比べ「行政が二重負担」しているかのような状態にあるのも、事実なのです。

 「二重取り」をしないで済むようにするには、「二重負担」しないでも済むよう、法改正する必要があります。

 それには、容器包装リサイクル法の改正が必要です。欧州並みの改正ができれば、行政は「二重負担」をする必要がなくなります。つまり、「税金の二重取り」をする必要もなくなるのです(詳細は、後述)。


「杉並病」 風評被害を克服するために


 杉並区は、いわゆる「杉並病」という問題が話題になった地域です(過去「杉並病」と騒がれた問題の詳細については、こちらへ)。

 現在でも、不燃ゴミを圧縮処理するために作られた杉並中継所をめぐって、一部の地域では、いまなお不動産価値が驚くほど下がったままになっています。

 この施設が存続するかぎり、風評被害は消えないと言われています。実際、かの中継所は、住宅地のど真ん中にあるにもかかわらず、「混ぜるな危険」と書かれた洗剤の空きボトル等を今なお、みなごちゃ混ぜにして圧縮処理しつづけているのです。

 同じ空気を吸っていても、花粉症を発症する方としない方がいるように、あの施設から排出される大気の安全性は、現代の科学では完全に解明できないままなのです。

 この意味では、都や区がどんなに環境問題と杉並中継所との因果関係を否定しても、不信感が残っている以上は、高い市場価値がつくわけがありません。

 ただ、このような圧縮中継施設は、全国に存在するものではありません。

 あくまで東京都内の特殊事情(交通渋滞の解消や運搬コストの削減)といった理由から、やむなく設置されている施設であり、不燃ゴミを減少させるなど努力すれば、存在は不要になります。

 廃止にむけて対策を加速させることは、井草地域・杉並のイメージ回復と風評による不動産価値の低下を防止することができ、区民全員に利益のあることです。その意味でも、私は、

  1. 家庭ゴミの有料化等によって、ゴミの総量の削減を進めること
  2. 環境税を創設し、その財源を使って「容器包装リサイクル法」の限界を早く打破すること・・・を主張しているのです。

 山田区長も、2000年に「不燃ゴミを減らして、10年以内に杉並中継所を廃止したい」と言っています。概算では、埋立地(最終処分場)に持ち込む不燃ゴミを大胆に削減できるようになれば、それは可能になります。

 なお、不燃ゴミの半分以上を占めているのは、プラスチック系のゴミ。必然的にプラスチック対策がその中心になります。

 杉並病問題(不燃ゴミの圧縮施設・杉並中継所の問題)の核心は、不燃ゴミの排出量が多いことにありました。 このため、プラスチックの使用抑制とリサイクル(or資源再利用)対策を進める必要に迫られているのです。


日本の「容器包装リサイクル法」の限界


 しかし、前述したように、容器包装リサイクル法(以下、容リ法)には限界があり、なかなか対策は進んでいません。

 再確認になりますが、容リ法では、プラスチックなど容器・包装類のリサイクル費用の大半は、行政が負担することになっています。

 つまり、対策を進めようとすると、多額の税金を使わざるを得ない構造になっているわけです(→税金の二重取り vs. 行政の二重負担へ)。

 なお、欧州では、このようなことはなく、費用は完全に事業者の負担となっています。

 リサイクルでいちばん費用がかかるのは、収集・運搬作業。ペットボトルのリサイクルにおいても、その費用の7割は収集・運搬費ですが、この部分は、すべて行政の負担です。この点が、欧州と決定的に違う点です。


 ペットボトルではなく、「瓶」「缶」を使うようにしていただければ幸いです。「瓶」や「缶」のリサイクルであれば、プラスチックほど多くの処理費はかからないのです。


地方自治体がリサイクルに熱心になれなかった理由は


 このため、リサイクルに熱心な自治体は「リサイクル貧乏」を覚悟さざるを得ず、自治体がリサイクル事業を進めようとすると、税金がどんどん出ていく仕組みになっています。

 コンビニにおかれているペットボトル回収箱にしても、あれはコンビニが全責任を負っているわけではありません。

 コンビニは場所を貸し、多少のリサイクル費用を払っているだけのことで、回収も運搬も自治体がやっています(その費用は、ペットボトル1本あたり約25円=都発表の概算数値)。

 これについては、大手事業者は、容器包装リサイクル法に基づいてリサイクル費用の一部を負担している・・・といったような反論が寄せられています。

 しかし、これは1キロあたり105円を負担するといった程度で、リサイクル費用の大半を事業者が負担している欧州と比べれば、事業者全体の負担が重いとは言えません。実際、行政が総費用の大半を払っているのが現実なのです。

 つまり、現行法では、ペットボトルの使用が減れば、その分、保育・介護・教育など他のジャンルで有効に税金を使うことができる・・・ということなのです。地方自治体が、リサイクルに熱心になりきれない本音は、このあたりにあります。

 実際、山田区政になってからも、予定していたリサイクル事業があっけなく中止になってしまったことがありました。環境を重視しているかにみえる山田区長も、それとは全く逆の政策判断をした過去があるのです。


 このように、現在、とても悪循環な状況が、延々と続いています。つまり、
  1. リサイクル費用の大半が「税金」でまかなわれているので、メーカーは商品を見直したり、無駄な包材を省く努力を本気でしない
  2. 直接財布を傷めない消費者も、便利さに甘えて、つい環境に悪いものを買ってしまう
  3. 自治体も、財政難が故に、こうしたシステムに甘えて逃げようとする・・・

 これを悪循環といわず、何というのでしょうか。この悪循環を改めるには、やはり容器包装リサイクル法の改正が必要です。

 現時点で、徹底したリサイクルを行うとき、とくに行政が重い負担をせざるを得ないという日本のルールのなかでは、行政が尻込みするというのも、ある意味で自然なことなのです。(=増税に結びつきやすくなってしまうため、それを忌避しようとすると、逆に対策が進まなくなっていく)

 ここでも「三方一両損」(事業者・行政・消費者)でバランスよく負担をするようにしないと、対策が前に進まないのです。

 ただ、区レベルで、国の法律を変えられるわけはありません。現時点の区にできることは、
  1. 自治体レベルでできる対策を進めること(→家庭ゴミ有料化の検討など)、
  2. 必要とされる膨大なリサイクル経費を区独自で準備し(→ムダな歳出削減+環境税)、リサイクル対策を加速させること
 ・・・ということしかないのです。



検証!「レジ袋税」条例(6+α)
 ゴミを減らすために必要なこと


リサイクルというより「減量」と「再利用」を


 ただ、その際、「リサイクルのしやすさ」について、十分に検討する必要があります。

 リサイクルで環境が救えるという単純な意見もあるようです。しかし、「リサイクルのしやすさ」「しにくさ」は無視できません。

 たとえば、リサイクルにあたって、化石燃料を大量に使わなければリサイクルできないというのでは、意味がないのです。その場合、その製品は、リサイクルではなく、使用を抑制しなければならない製品なのです。

 リサイクルしにくいものは、そもそも使わないようにする。これが最も重要な環境配慮行動です。だいたいリサイクル(循環)といっても、リデュース(減量 reduce)、リユース(再利用 reuse)も伴わなければ、環境を救うことはできないのです。


リサイクルは万能ではない


 以前、プラスチック・リサイクル施設の調査に出たことがあります。

 いわば3K職場といいましょうか、みなさん本当に厳しい労働環境の中で、一生懸命働いていらっしゃったのが印象的でした。そして、この視察を通じて、コストダウンの難しさについても痛感しました。

 プラスチック・リサイクルの現場では、仕分け作業は手選別となっています。また、現場は、ほこりや異臭が充満しており、本当に厳しい重労働を余儀なくされています。

 リサイクル現場を直視すると、「廃プラスチックを減らせば、そこで消費するエネルギーや排水・異臭の発生も抑制することができる」とも思うのです。過剰な使用さえしなければ、余分なエネルギーを消費せずともよいのですから・・・リサイクルといっても万能ではないことを痛感します。

 よく「市民はリサイクルに協力している」と、いとも簡単にいう方がいますが、現場を直視すると、その処理の難しさ・ゴミ(廃棄物)の出し方の悪さは、言語を絶するものがあります。

 その結果、リサイクル(再資源化)の現場では、労働集約的な3K重労働を余儀なくされ、選別作業に膨大な時間と費用をかけざるを得なくなっている現実があります。コストダウンができず、税金を食う大きな要因の一つです。

 リサイクルは、その「費用対効果」があい、「環境効果」を出すことが重要です。効果があわなければ、そもそも環境保全にはなりませんし、現状では税金も上がる一方です(→日本の「容器包装リサイクル法」の限界)。

 繰り返しになりますが、その場合は、リサイクルではなく、その製品の使用をやめていくべきなのです。

 また、逆説的なことですが、みんながリサイクルに励み、プラスチックが完全に燃やされなくなってしまうと・・・燃焼カロリー数が減少してしまいます。それはそれで問題が発生します。

 そうなると、ゴミの持つカロリーだけで燃焼させること(自燃すること)ができなくなり、灯油など燃料を追加投入しなければ燃えなくなる可能性が出てくるわけです。これではかえって資源を無駄にしてしまう可能性があります。

 つまり、せっせとプラスチック製品をリサイクルしたら、ゴミの持つカロリーが減少してしまい、わざわざ灯油をたくさん使って燃やす必要が出てきた・・・こうなってしまうと、本末転倒というわけです。

 このように、リサイクルは推進すべきことですが、それだけで問題が解決できるわけではないのも現実です。やはり資源の無駄遣いをやめることがいちばん大事で、バランスよく取り組んでいくことが必要なのだろうと思います。


行政の「無駄のカット」は当然だが、それは一人ひとりの生活も同じ


 また、議員や職員の数が多い、行政には無駄が多い、という批判があることは承知しています。実際、まだまだ内部努力が足りないのは、間違いありません。これを放置しておいて、負担ばかり求めるのは、たしかに間違っています。

 たとえば、私についていえば、議員定数の大胆な削減を提案してはいるものの、なかなか実現のメドが立っていないことについて、反省すべき立場にあります。

 ただ、かりに議員の数をゼロにしたとしても、それで対策が進められるわけではないことも現実です。ゴミ対策に必要な費用は、それよりケタが2つくらい違うのであって、それだけで根本的な解決につながるわけではないのです。
  • もちろん、なんとしても、削減は実現しなければなりません。
  • (参考)人口52万人の杉並区の財政規模は2,400億円。うち一般会計は1,400億円。うち清掃関係費は約100億円。議員報酬・費用弁償経費は、約6億円。

 なお、区の清掃関係費は、年間100億。入札の改善などでコストダウンは可能とみていますし、これまでも入札改革を力説してきましたが・・・しかし、この件について限って言えば、かりに入札改革が成功したとしても、それでも費用対効果が合うとは思えません。

 すでに指摘しているように、ペットボトルやプラスチックのリサイクルは、費用がかかりすぎるのです。

 結局、行政の無駄遣いのカットもそうですが、一人ひとりの日常生活の無駄のカットも、同じように進めなければ、対策は追いつかないのです。

 だいたいゴミの処理費ほど、無駄遣いになっているものはありません。全員がゴミ量を減らせば、すぐにその分の税金が浮くのです

 それはすぐに教育や保育・介護、過去の借金の返済などに充当させることができるものなのです。ゴミを出している者全員が、それを痛感すべきです。

 なお、過去に、実際あまりに廃棄物が多く、リサイクルが間に合わない、再生しようにもなかなか商品化できない・・・という現象が起きていたのは、報道でも周知のとおりです。

 せめて、ビン・カンなど比較的リサイクルが容易な他の容器包装を使うようにしなければ、税金は上がる一方だということを肝に銘じるべきです。ライフスタイルの見直しを行う必要があることは、間違いありません。

 以前も書いたことですが、もっと早くそれが実現できていれば、「レジ袋税」という発想が出てくることもなかったはずなのです。


家庭ゴミの有料化 近隣市では2003年実施へ


 私は、いろいろ課題はあるものの家庭ゴミの有料化に賛成しています。

 しかし、東京23区においては、すぐに有料化を実現できない限界があり、これが悩みの種となっています。

 東京23区の場合、もともと東京都清掃局が清掃事業を担当しており、ようやく昨年(2000年/平成12年度)、それが23区の仕事に変更になったばかりです。

 このため、現在も清掃職員は「東京都からの派遣職員」という扱いになっているなど、まだまだ移行期間の域を出ていないのです。

 このような背景から、家庭ゴミの有料化にあたっては、他の区との協議が必要とされ、杉並区だけで、すぐに有料化を始めることは、現実には困難な状況にあります。

 しかし、同じ東京でも、三多摩(市町村)地域では、2003年までに家庭ゴミを有料化することを決定。すでに日野市や青梅市が有料化を成功させていることから、対策を加速させてきているところです。

 いうまでもなく、杉並区は、23区の最西端。武蔵野市・三鷹市などと接しているため、これらと同時に家庭ゴミの有料化を実施しなければ、不法投棄が増加する可能性もあり、私は検討を急ぐべきであると主張しています。

 実際、市部(三多摩)の話とはいえ、隣の自治体の話ですから、23区全体との協議を待って・・・と悠長なことは言っていられない状況だと思いますし、対策は待ったなしだと思います。


ゴミの減量は、複数の対策が必要 レジ袋税単独ではダメ


 前述したように、山田区長は、「杉並病」の原因施設と疑問視されつづけている杉並中継所(不燃ゴミ圧縮中継施設)について、「10年後に廃止したい」という明確な方針を持っています(2000年発言)。

 しかし、その実現には、相当手荒な改革が必要とされる現実があります(不燃ゴミの半減〜1/10程度までの削減をめざす必要があるため)。家庭ゴミの有料化だけで解決できるものではありませんが、もはやそれをタブーとしてはいられない段階でしょう。

 「有料化しても、しばらくするとゴミがまた増えていく」「不法投棄が増える」という批判もありますが、各地の事例をみても、それはやり方次第のように感じますし、実施のメリットは小さくないと思います。

 なお、日野市では、家庭ゴミの有料化によって、ゴミをほぼ半減させることに成功しています。 戸別収集などと並行することで、効果をあげたと言います。

 「有料化だけ」「レジ袋税だけ」「ポイントシール制度だけ」「戸別収集だけ」を実施しても、効果はないでしょうが、それらを上手に組み合わせ、総合的に実施すれば、効果をあげられることが実証されてきていると思うのです。

 この意味で、23区全体の都合で「家庭ゴミの有料化」が実現できない間(or国の都合で「容器包装リサイクル法」が改正されない間)、当面、レジ袋税の税収をもって、当面必要な対策経費を生み出す・・・ということであれば、私は、大局的な判断から、短期的な矛盾に目をつぶることも、やむを得ないと判断しています。

 もちろん、この点は「究極的な政治判断」のレベルであり、役人が勝手な運用を行わないように、今後も慎重に考えていかなければならないと考えています。

 少なくとも、実施時期を曖昧なままにしたり、脱税・免税・補助金の利権化といった「抜け道」は、条例化(議会審議)の段階で、できるかぎり改善していかなければなりません。

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