杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線2001 11月

レジ袋税(その4)
ひきつづき審議を継続するにあたって


 今回の定例議会(区長招集)では、マスコミを騒がせている「レジ袋税」について、紛糾につぐ紛糾を重ねました。

 報道されているように、12月以降も、審議を継続することになっています。

 私は、議会内でレジ袋税の審議を直接担当する議員10人のうちの一人。このため、議会に正式に提案されることが決まったその日から、賛否の問い合わせや意見が数多く舞い込んでくるようになりました。


 レジ袋税をめぐる議会の状況は

 直接審議を担当している10人の議員の内訳は、自民党3、民主党2、公明党1、共産党1、生活者ネット1、その他2(交渉会派に属していない1人会派=堀部やすし含む)。

 なお、民主党のうち1は委員長であるため、原則として採決には加わりません。過半数は5です。

 レジ袋税は、これまで党派を超えて強い難色を示す方がいたこともあり、賛否が読めない状況が続いてきました。

 議会でも、共産党(議席7)がハッキリと反対を表明したほか、自民党(議席16)も今のままでは反対だと明言する議員が出ていたこともあり、左右から厳しい発言が飛び出していました。

 これは、区の商店会連合会(以下、商連と表記)などが、レジ袋税に難色を示していたことが背景にありました。

 これに対し、区は、商連に対して必死の根回しを続け、巻き返しを図ってきました。そして、最後には、区長自ら「おみやげ」持参で商連の総会に出席し、総会レベルでなんとか合意を取りつけたのでした。

 その結果、自民党は党議拘束を外すこととなり、状況が一変。10人の議員の考え方は、賛成5・反対3・態度保留1・(ほかに委員長1=採決権なし)という様相になっていました。

 ちなみに、私は、条件付きでの賛成派。このため、新聞報道でも、5人の賛成で条例がすぐに可決され、本会議に回されるだろう・・・とする事前予想(報道)が出ていました。

  ただ、私は、これが「課税」である以上、賛成といっても、審議をいい加減にするべきではないと考えていたこともあり、事前より、とりわけ強く審議時間の確保を要請してきたところです。


 賛成派の私ですら、さすがに区長の姿勢には憤慨

 実際、ふたを開けてみると、朝10時からスタートした審議が、詳細に及ぶことなく深夜になるなど、改めて課題の大きさを実感することとなりました(条文審査初日)。

 しかも、審議の中では、非常に基礎的な点で区の提示していたデータ(レジ袋削減によるコスト効果・ゴミの減量効果)に矛盾があることが明らかとなり、再調査をする必要が発生しました。
 その結果、もう少し審議する必要があるとの意見が過半数となり、11月29日の本会議において、全会一致(議員全員)で、12月以降も審議を続行することを決定しました。


 区長は、なぜ勝手に実施時期の先延ばしを決めてしまったのか!

 以前より区は「ポイントシール制度を導入します」など商店街への補助金を増やす発言をするなど、商連にひたすらアメ玉を配っていました

 さらに今回、議会に条例を提案する前に行われた区長と商店会連合会との話し合い(総会)の場で、山田区長は、概ね2003年4月まで「レジ袋税」の実施を延期する意向に同意し、「条例ができても冷蔵庫に3年間しまっておきますよ」「お茶わんにふたをしておけば大丈夫です」と発言したというのです。

 ところが、その反面で、山田区長は、「継続審議は許さない」というような居丈高な発言をし、議会に圧力をかけているのです(東京新聞にも報道)。

 このように区長の判断だけで勝手に実施時期の先延ばしを決定(取り引き)しておきながら、議会には、まったく正反対の要求をしているのです。

 これは、条例を提案した手前、可決はしてほしい。しかし、選挙での報復を考えると実施は先送りしたい・・・という意図をもった「二枚舌作戦」のようでした。

 区長が表と裏でそのような相反する発言をするなら、私は、逆に区長が勝手に実施延期を商連と約束してしまった責任を問いたいと思います。区長が自分の判断で勝手に実施の延期を決めておきながら、それを議会のせいにするのは、あまりに卑怯です。

 このように、区長が勝手に実施時期の先延ばしを約束したことには、異論を感じていますが・・・ただ、延期された分、議会でしっかり審議することができるようにはなりました。

 今後は審議を尽くしたうえで、胸を張って結論を出せるよう、取り組みを進めたいと思います。


 1.いつ税をスタートさせるか、全く決めていない

 まず、「税」である以上は、租税法定主義(憲法84条)の原則に則って、適切な法制化(条例化)を図ることが重要だと考えています。

 なにしろ、「レジ袋税」条例(区長案)には、いつまでに税を実施するか何も書いていませんし、実際、区も、いつから課税するか未定だと説明しています。

 しかし、広く一般生活者を課税対象にした税で、スタート時期が全く未定のまま議会に可否を求めるのは、前代未聞のことです。

 これには背景があります。2003年春には区長選があるため、区長は、課税のスタートをどうしても選挙の後にしたいようなのです。

 前回、自民党や商連などを敵に回し、僅差で苦戦を余儀なくされた山田区長は、選挙対策を優先しようとしているのです。しかし、そんないい加減なことでは困ります。

 一般の税法は、みな実施期限を含めて、国会の承認を得ています。民主主義の原則からすれば、「租税法定主義」は、そう解釈すべきものだと考えます。

 また、原則を踏まえていえば、周知期間・準備期間を考えたとしても、可決した条例(法律)は、3ヶ月後(最大でも半年〜1年後)にはスタートさせるべきもの。議会を通過した税法は、役人の裁量で勝手に実施を延期できないと見るのが当然です。延期する場合は、改めて議会に諮るべきなのです。

 レジ袋税について、区は「かりに条例ができたとしても、当面は実施を先送りする」と言っているのですが(後述)、以上のような理由から、「税」の場合、それは許されないことです。役人の勝手な裁量を認めるような立法(条例)は、認められません。

 このように、とくに「税」の場合は、あくまで実施する時期にあわせて条例を可決させるのが本筋であって、実施する気のない税(条例)をパフォーマンスで形だけ通すというのでは、ルールも何もなくなってしまいます。

 これでは法治主義は否定されたも同然です。日本は、王政でも、軍政でもなく、法治国家(法に基づいて行政運営を行う国)です。災害有事を除き、不自然な立法(条例化)は、厳に慎むべきです。

 この意味で、区長が商連と勝手な約束をして、成立後もダラダラと双方の「利害」と「メンツ」を立てようと実施を先送りしようとしているのは、感心しません。

 少なくとも私は、区の恣意的な判断でスタート時期を先送りしてしまうようなことのないよう、一定の「たが」をはめ、成立させる必要があると考えています。(→詳しくは、検証!「レジ袋税」条例へ)


2.継続審議は許さない?
 先に勝手に「課税の無期延期」を決めたのは、区長ではないか!

 継続審議とすべきと最終的に決断した理由には、ゴミ削減効果等のデータに不備があり、再調査が必要になったことが最大の要因ですが、こうした区長のフラフラした姿勢にも大いに問題があると考えたからです。

 とくに、この財政難のなか、レジ袋税の実施時期を未定としたまま、先にポイントシール制度だけを実施することを決めたのは、大問題です (これも検証!「レジ袋税」条例でふれます)。
  • ポイントシール制度(エコシール制度)=買物袋を持参した消費者にポイントシールを配る制度。25枚集めると100円券と交換。杉並区は、そのために新たに商連に対し、初年度約8,400万円(5年間で約9億円近く)もの補助金を出す予定。

 区長は、ここにきて2003年春までの実施延期を容認するような発言をしていますが、先にも指摘したように、2003年春には区長選を控えています。

 しかし、選挙直前直後に新税を実施することができた為政者は、そう見当たりません。このままでは選挙を理由に課税が先延ばしされることは必定です。

 なお、商連や自民党は、前回の区長選で山田区長ではなく、対立候補を応援していました。

 このため、山田区長は、元国会議員(新進党)・元都議会議員(自民党)を経験していながら、苦しい選挙となり、僅差での当選を余儀なくされています。

 次回の選挙も、自民党や商連などが対立候補を擁立すれば、同じく苦戦を余儀なくされることでしょう。

 直接的な応援は要らないにせよ、前回のつらい経験をふまえ、せめて対立候補を立てられないようにしておきたい・・・と山田区長が考えるのはわからないではありませんが・・・


 なお、強腕で知られる東京都の石原慎太郎・都知事ですら、都議選の前、新税構想(大型ディーゼル車の高速道路利用税・産業廃棄物税・ホテル税・パチンコ税)を取り下げてしまったのは、記憶に新しいところです。

 都議選が終わって半年。ようやく「ホテル税」だけは導入できそうですが、パチンコ税については、検討すら中止してしまったという状況とのことです。
※ホテル税は、都民の大半は、都内のホテルをほとんど使うことがないため、一般都民の反対は少ない税。反面、パチンコ税は、一般の都民にも直接関係する税でもあり、導入が難しかったのでしょう。

 強腕でタカ派の石原都知事ですら、こうならざるをえないのですから、もし、実施時期を決めずに条例を通してしまったら・・・ズルズルと実施が先送りされる可能性が大です。もし、税が導入されず、ポイントシール制度だけを導入したら、いったいどうなるか・・・


 3.「ポイントシール制度」だけ実施するとは・・・

 なお、ポイントシール制度は、いまでは耳障りがよいようにエコシール制度と名前を変え、計画通り2002年4月に実施される予定となっています。

 なお、ポイントシール制度だけを導入しても、レジ袋(の使用)は、あまり減らないことが、すでに実証されています(=詳細は、検証!「レジ袋税」条例へ)

 このままでは、(1)税の導入は先送り→(2)でも補助金だけは新規に支出される→(3)しかし、課税がないままなので、レジ袋の使用もほとんど減らないし、財政悪化も加速・・・そんな「悪夢のようなシナリオ」が現実となる可能性が強くなってきたのです。

 この点は、私も、相当危機感を強くしているところです。レジ袋税とエコシール制度は、同時にスタートしなければ、効果はないと考えます。まだまだ課題山積です。



 今後、審議を尽くし、胸を張って採決できるような状態になるよう、取り組みを進めたいと思います。まずは、公聴会を開催する必要があると考えています。今後も、ぜひご意見をお寄せください。


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