杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線2000 8月B No.63
情報公開条例 見直しのゆくえは?
いろいろ調べたいことがあって、図書館や役所へ出かけることもあるでしょう。私も、以前は自分自身の研究の一環として、また、現在では議会議員活動の一環として、よく利用してきましたが、以前より情報公開や個人情報の取り扱い方については、非常に疑問を持っていました。私にとって、行政の情報公開の推進は、非常に関心の高いテーマのひとつです。
一口に情報公開といっても、情報公開のルールがしっかり定められていなければ、真に必要な情報を入手することはできません。ルールが穴だらけで、情報をきちんと入手することができないというのでは、懸案を議論する場合にも、特定の研究活動を進める場合にも、支障をきたしてしまいます。
そこで、私は、当選直後より、とくに「お役所仕事の情報公開」をテーマに、区議会でもいくつかの問題を提起してきました。おかげさまで、昨年秋には、区長も「杉並区情報公開条例」の改正の必要性を認め、現在、その改正案が検討されるに至っています。
なお、先ごろ、行政内部の「情報公開制度見直し検討委員会」の報告書が出されました。報告書の問題点については、改めて議会で取り上げ、詳述する予定です(その詳細は、9月第2週へ)。
「情報公開No.1」をめざして
私が当選した当初、杉並区は、いまの情報公開条例を改正する予定はないと言っていました(1999(平成11)年・第二回定例会本会議での答弁)。もちろん、これは「情報公開 NO.1」を標榜していた区長の公約とは、全く相容れない発言でした。
なにしろ、情報公開条例は、区民への情報提供について定めた極めて重要度の高い条例です。新しい区長が誕生したのに、時代遅れになっている条例を変えないでどうするのか!と、当初から私の怒りは頂点に達していました。こちらが議会活動をしようと思っても、正確な情報(真に必要な情報)を入手することに多くの時間と労力を消耗させられてしまうというのでは、議員は仕事をするな、と言われているに等しいことです。まじめに活動に取り組もうとする者が、これを黙っているわけにはいきませんでした。私は、区の情報公開制度の改善に向けて、あの手この手で妥協せずに真っ正面から取り組むことにしました。
そこで、私は、とくに、昨年、いまの行政の情報公開制度がいかに時代遅れであるかを執拗に議会の場で検証してきました。あまりに執拗にやったためか、横やりも入りましたが、徹底的に取り組んだ甲斐あって、ついに区長も「情報公開条例を変える必要性を感じるに至った」と議会で明言し、さっそく内部の検討作業が始まりました(情報公開制度見直し検討委員会)。
議会での執拗な取り組みは、必然的に厳しい発言を繰り返すことになったのですが、賢明なご決断をしていただくことができ、区長には本当に感謝しています。ただ、本当に「情報公開No.1」を実現することができるかどうかは、これから改正される条例がどうなるかにかかっています。その意味では、これからが本番なのです。
改正は、これからが本番
最近、東京市民オンブズマンなど五団体が、都内自治体の情報公開制度について、その使い勝手を比較したリポートを出しました。今月中に各自治体にその結果が配布される予定となっているようですが、都内トップは小金井市と狛江市だったそうです。幸い、杉並・中野・港区も、範囲を23区内に限れば、トップの評価を得ていましたので、まずは安心しました。
私が当選したてのころは、一度請求された前例のある情報であっても、迅速に公開が決定されず、限度ギリギリまで延々と待たされたり、きちんと情報が出てこないといったケースが発生していましたから、わずか1年でも隔世の感があります。いろいろ文句を出してきた甲斐があったとも思っています。読者のみなさんも、小さなことでも、区や議員にどんどん意見を出すようにしていただければ幸いです。
しかし、先進自治体と比べれば、杉並も、まだまだ多くの改善が必要です。なんといっても、山田区長は「情報公開No.1」を公約して当選した人。しっかり改善が進むように、今後もチェックし、私も発言を続けていく予定です。
<付録> 公開されるもの されないもの
さて、お役所では意外なものがそのまま公開されている反面で、なぜ情報提供されないのか、不思議に思ってしまうようなものもあります。
たとえば、杉並区の条例上、公開しなくてもよい情報としては、次のようなものがあります。
1.純粋に個人のプライバシーに関するもの
たとえば、他人の年収や健康状態に関するデータなど。当然といえば、当然ですが、ただし、住民票データ(住所・氏名・年齢・性別など)や高額納税者データ(住所・氏名・納税額)については、誰でも閲覧することができることをご存じですか?(なお、個人情報保護については、法整備が求められており、現在、政府も、法制化に向けた検討を進めています)
2.電子情報・電磁的記録(コンピュータ情報)
提供されるものは、「紙に打ち出されたもの」が原則となっています。電子メール・インターネットの普及が進んでいる時代に、公式には紙でしか情報提供できないというのです(あとは任意で提供をお願いするしかありません。しかし、議員が議会審議に必要と要望しても、お役所が断るというケースが実際にありました)。
たとえば、区役所内のコンピュータに内蔵されている情報や、プロッピーディスクなどでの情報提供(紙ではなくフロッピーのコピーで情報提供する)は、現在の条例上、拒否することができます。
過去の私の体験でいえば、杉並中継所の環境調査(いわゆる杉並病と疑われた点について、原因究明するために実施)を私なりに独自に調査しようとしたところ、基礎データ(電子情報)の開示を拒否された・・・ということがありました。このような規定は、高度情報社会にはそぐわないため、とくに改善する必要があります。
3.他との協力関係を著しく損なうおそれのあるもの。
外部(国や他の自治体・民間企業等)との間でやりとりされている情報を「機関間情報」といいます。これによって、外部との過去の協議の様子がわかったりします。この機関間情報のなかで、かりにプライバシーに関わらない部分についても、区が「協力関係を著しく損なうおそれがある」と判断したものは、情報提供されないことになっています。
こうした規定を設けるのも、わからないではありませんが、いったいどういうものが「協力関係を著しく損なうおそれがある」のか、曖昧になっているのはいただけません。
4.意思形成過程にある情報(審議検討中の情報)のうち、公開することにより区民に誤解・混乱を招くおそれがあるもの
区内部での意思形成過程段階にある情報のうち、内容が不確実なため、公開することにより、区民に誤解あるいは混乱を招くなどの事態が生じ、公正または適正な意思形成に著しい支障を生ずるおそれのあると区が判断したもの(公開することにより後の意思形成に支障を生ずる場合があるもの)は、非公開となります。難しい問題ですが、運用でこれを多用しないようにはしてもらいたいものです。
つい最近では、学校給食の民間委託化を検討する会議(学校給食調理業務運営改善検討会)の模様が公開されないということで、区民からクレームがついたことがあります。これは、区の意思を形成するための会議であり、そこで話し合われることは、典型的な「意思形成過程情報」という扱いになっていたわけです。
もっとも、この検討会は、会議そのものは非公開でしたが、そこで配付されていた資料等は公開されており、また外部のPTAの役員などがメンバーとして参加しているなど、配慮がみられました。今後も、審議過程にある情報についても、積極的な情報公開を進めて行くべきでしょう。
5.外郭団体の情報
行政の出資がなければやっていけない公団や公社、公益法人などには、多くの補助金が出資されているものですが、その情報はベールに包まれたままだという批判があります。
杉並区にも外郭団体がたくさんありますが、区が出資している法人や財政援助団体についても、情報公開を推進していく必要があります。
ところが、現在、条例には、その必要性が全く明記されていないのです。現在、行政に提出される事業報告書程度の類は、一般にも開示されてはいますが、それだけにとどまらず、今後さらに外郭団体の情報公開制度についても、しっかり整備していくことが必要です。
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