杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線2000 8月@ No.61

●学校選択の自由化を考える・その1 


 
学校選択の自由化に保護者の75%が賛成 まずは区立小中学校の情報公開を

 
 いま、杉並区では、区立小中学校の学校選択制(通学区域の弾力化)が、議論されています。今年度発足した「杉並の教育を考える懇談会」も、「たんに学区制の自由化を考える会なのではないか?」という疑問が出されるほど、学校選択の自由化は、注目を集めている話題のひとつです。そこで、今回と次回の2回に分けて、この問題を取り上げます。

 結論からいえば、私は通学区域の弾力化には賛成なのですが、その前に、@学校情報の積極的な公開を進めること、A少なくとも学校評議員制度を導入することが必要だと思っています。

 もちろん、このほかにも、教育委員会の抜本的な改革や、児童・生徒が発言する機会を確実に提供することなども模索していくべきと考えていますが、なにより保護者や子どもが、根拠のない風評など一面的な見方だけで学校選択をさせられることのないよう、最低限の配慮したうえで、導入すべきだと思っています。

学校評議員制度とは?
 校長が学校外の意見を聴くための仕組み。保護者だけでなく地域住民なども対象となるもの。学校評議員には、学校と地域との新たなパイプとなることが期待されており、学校の説明責任を果たすうえでも、導入を求める声があります。

 ただし、残念ながら、学校評議員の活用は、学校長の判断次第といったところが大きく、うまく活用されない可能性も指摘されています。本来はもう一歩進んだ制度(私立における理事会的な制度)の導入を模索すべきだとは思うのですが・・・現行の法制度の下では、これ以上、深く地域住民が学校運営に参画することはできないのが残念です。


 保護者アンケートの結果は?

  区の教育委員会は、「教育を考える懇談会」名義で、この問題について保護者アンケートを行っており、7月31日の懇談会の席上で、その結果が公表されています。

 保護者アンケートは、区立小学校に通う1年生と6年生をもつ保護者に対して実施。対象人数は5,999人でうち回答者数は2,841人。回答率は47.4%でした。興味深いのは、1年生の保護者の回答率が56.6%である反面で、6年生の保護者の回答率は39.1%だった点。みなさんは、どう判断されるでしょうか?




 グラフを見ていただければお分かりいただけるように、学区制の維持を求める意見(指定校に入学するのが望ましい)は、わずか1.5%に過ぎませんでした。その反面で、学校選択は自由にすべきと考えている保護者が75%にも達していることがわかりました。

 うち4割強が完全自由化を求めていることからもわかるように、「教育共産主義」はもうやめるべきでしょう。親と子どもが学校を選択し、その選択の結果にも責任を持つ。学校(教師)は、自らが選択されるに足る学校(教師)になるよう切磋琢磨する。こうした緊張感がなければ、学校はよくならないはずです。これからは公教育においても、選択の自由とそれに伴う責任意識を取り入れていくべきです。

 一部に強硬な反対意見がありますが、今回のアンケートから、おおむね現在の学校教育が抱えている問題に対処するにあたって、従来の学区制の枠を維持することは適切ではないという意見が多数であったと判断してよいと思います。


 まず、学校は情報公開と説明責任を果たすべき

 
もともと日本は自由主義社会であり、区立小中学校といえども、利用者(保護者・子ども)に「選択の自由」を保障することは当然だと考えます。その意味で、私は、将来的には、通学区域の弾力化といったレベルにとどまることなく、学区制は完全廃止すべきであると考えています。

 ただし、その前提として、各学校がよりいっそうの情報公開をすすめ、自らの教育方針についても、その説明責任を果たしていく必要があると考えています。最低限、地域にはどのような学校が存在しており、どのような校長の下で、どのような方針をもっているのか、きちんと公開されていなければ、利用者(子ども・保護者)としても、通うべき学校を選ぶことができないはずです。

 そこで、少なくとも、
  1. 入学する前の年には、校長主催の学校説明会・学校見学会を行うこと
  2. 各校を比較対照することができるよう、「学校選択の手引き」を入学予定者に渡せるようにすること
  3. 各学校ごとにホームページを設け、教師の紹介のほか、可能な限りリアルタイムで教育内容について情報提供すること(その抜粋を学校新聞という形で発行できれば理想ですが、さすがにそこまで求めると、少々過重労働になってしまうかもしれません。なんとかボランティアを募り、時間や人手のかかる編集・印刷作業を担うことができれば学校側の負担も軽くなるかと思うのですが・・・ただ、最低限、ホームページを作成して最低限の情報公開はしてもらいたいと思います。)
  4. このほか、授業参観の機会を増やすなど、教育内容のよりいっそうの公開を進めること

 ・・・などなど、配慮が必要ですし、同時に学校評議員制度の導入も行うべきだと考えます。


 もちろん、問題がないわけではありません。すでに、品川区では、一足先に自由化をスタートさせていますが、これまでの経緯を寡聞するに、「校舎が古い」「洋式トイレが少ない」「グランドの水はけが悪い」といったような理由で通学先を選択する可能性はあるかもしれません。ソフトの部分や教育内容そのものではなく、ハードの部分ばかりが注目されるのは残念なことですが、まだまだ学校の内部情報が不足している段階では、じゅうぶんに考えられることです(ただ、アンケート結果によれば、実際には、ハードよりもソフト面での充実を望む声の方が圧倒的でした→8月第2週を参照のこと)。

 こうしたハードの部分で見劣りがする学校には、とくに特色ある学校づくりを図るために、学校選択制をスタートさせるまでに、「オンリーワン」と言えるようなものを作り上げられるよう、区も配慮すべきことは言うまでもありません。「校舎は古いがインターネットが設置されており、教師のパソコン・スキルも高い」といった具合に特色があれば、それなりに選択する子どもはいるはずです。


 いまのように、なし崩し的に弾力化が進むのはよくない

 現在の杉並においても、最近では、かなり柔軟に対応されていることもあって、実際には通学区域の弾力化は、すでに始まっているようなところがあります。

 たとえば、「大きな幹線道路を渡って学校に行くのは危険」といった地理的な理由や、「いじめなどで対応が必要」と判断された場合などは、現在でも指定された学校以外への通学が認められています。その数や、中学では、もはや1割近くにも達しています(5年前の3倍強)。

 中学の新入生の1割近くが、すでに学区外の学校に通学しているという現実は、重い現実です(小学生より中学生のほうが自我が発達しており、自らの意志で通学先を希望する場合が多いことでしょう)。要するに、すでに学区制は、「なし崩し的に」有名無実化しているわけです。

 しかも、それは、「本来の意味での選択肢」がきちんと提示されることなく、ただなんとなく「なし崩し的に」弾力化が進んでいるだけに過ぎません。私には、このような状態で、学区外の学校に通う子どもが増えていくのは、あまり好ましいとは思えないのです。

 今のまま「なし崩し的に」弾力化を進めるのではなく、この際、ハッキリと自由化を打ち出し、通う学校を選んだ側にも、しっかり自覚を持たせる(また選ばれた学校側にも、よりいっそうの責任感を持たせる)ような形に変えていくほうが、スッキリするのではないでしょうか。


 早く方針をハッキリさせなければ、それこそ現場にシワ寄せが!

 現場の話によれば、新入生の受け入れ準備は、毎年10月ごろより始めなければならないのだそうです。ゴタゴタしてしまい、新入生の受け入れ人数が直前まで決まらないようなことになれば、現場の指導体制・教育環境にも支障をきたす可能性があるでしょう。

 このような時間的な制約を考えれば、現実問題として、来年度からの自由化に壁が多いのは事実です。もちろん、このあたりに配慮した上で導入を図る必要があるのは、いうまでもないことですが、それを理由にグズグズと導入が遅れることのないよう、注視していかなければならないと思っている今日この頃です。


  その2につづく

●学校選択の自由化を考える・その2 
  学校選択制を導入すべき これだけの理由



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