杉並区議会議員(無所属)堀部やすし最前線
対案なき「多選自粛条例」の廃止は問題である(3)
平成23年(2011年)1月


 【疑問1】 なぜ「区長選マニフェスト」に何も記載がなかったのか

 昨年7月の杉並区長選において、田中良候補は、「多選自粛条例の廃止」を選挙公約にはしておらず、杉並区政の争点とも位置づけていなかった。
 そうであったにもかかわらず、田中良区長は、選挙の翌日、副区長に対し、条例廃止の検討・検証を指示したことが明らかになっている。
 その理由は、憲法違反の可能性をはじめとする法律問題を指摘するものであった。
 しかし、憲法違反の疑いがあるという区長の問題意識は軽いものではない。
 行政活動の大前提に憲法があるのはイロハのイである。それほど重要な問題との意識を持っていたのであれば、なぜ区長選の際に、そのことを強く主張していなかったのだろうか。

●「あえて選挙公約に書かなかった」と答弁した区長

 そこで、「違憲の疑いがあるから廃止というなら、なぜ7月の区長選で廃止を選挙公約にしていなかったのか?」と質問してみた。
 すると、区長は「従来からの政治信条で機会をとらえて話をしてきたため、あえて選挙公約には書かなかった」と答えたのである。
 憲法論に及ぶ重要事項であると考えていながら、選挙で争点隠しを行ったことを簡単に認めてしまったのである。
 正直、驚くしかなかった。
 区長は、廃止は自分の政治信条だったと述べていたが、マニフェストに書かれていない田中良氏の政治信条など、不特定多数の有権者は知る由もないだろう。
 また、区長は、条例を廃止する根拠として「住民自治の観点から、選挙については、民意を最大限に反映することが必要」とも主張していたが、有権者に必要な情報を提供せずに「住民自治」が成立するはずがないだろう。
 この条例は、前区政の象徴といえるものであった。廃止は、それこそ「区政における争点」そのものだったはずなのである。
 トップダウンによる改革手法を否定するつもりはない。だが、マニフェスト(選挙公約)に明記していなかった争点については、独り善がりに陥ることなく、熟議のうえで意思決定することが必要だったというべきである。


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