杉並区長の在任期間に関する条例(通称:多選自粛条例)が廃止された。
田中良区長(民主党・社民党推薦)就任後、最初に提案された本格条例が「多選自粛条例を廃止する条例」となったのである。本当に「あっという間」の出来事だった。
多くの方が驚いている。杉並区長選マニフェストに何も書かれていなかった方針が、突然、当選直後に打ち出されてきたのだから、無理もない。
杉並区議会議員48名の中で、廃止に反対した議員は、私を含め5名のみ。自民党から共産党まで、9割近くの議員が廃止に賛成した。条例の制定時(平成15年)に賛成した議員で、廃止に反対した議員は、堀部やすし一人だけである。条例制定時に賛成しておきながら、廃止に同意した議員が大勢いたのである。
「杉並区の政権交代」は予想外の方向に走り出している。大連立(民主党・自民党の半数強・社民党の統一会派)が杉並区議会の最大勢力である今日、政策本位で対応する議員を増やす必要がある。
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改めて確認しておくと |
杉並区長は、区の予算編成権等を一人で独占しているほか、議会の招集権までも独占しているスーパーパワーである。
アメリカ合衆国(大統領)の場合は、予算編成権も、法案提出権も持っていない。これらは、いずれも議会側の権限と位置づけられているからである(予算も法律も議会側でつくる。大統領に拒否権はあるものの限界がある)。当然のことではあるが、上院も下院も議長が招集する。
これに対し、日本の地方自治制度は、権限が首長に集中する仕組みを採用している。
ゆえに、、権力に対する抑制は働きにくく、特に多選首長の支配下にある地方自治体においては、硬直化が進んだ。
そこで、杉並区では、区長多選の「自粛」を明確にしたのである(平成15年)。その当時は、自民党も、民主党も、賛成していた。
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突然打ち出された廃止方針 |
多選自粛条例は、山田区長時代に全国に先駆けて制定したものである。現職区長が4選をめざす場合には、相応の説明責任を果たすよう要請する趣旨であった。
これに対して、田中良区長は、区長就任後、この条例を痛烈に批判するようになり、突然「廃止する」と言い出したのである。
違憲との主張だった。区長が廃止の意向を表明した際、共産党の議員さんが喝采の声をあげていたのが印象的だった。
だが、条例は区長多選の「自粛」を求めているのみである。
多選は禁止されていないにもかかわらず、新区長が過剰反応を示したのは何故だろうか。
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