杉並区に新しい区長(民主党・社民党推薦)が誕生し、「杉並区の政権交代」が起きてから早くも数ヶ月。前区政の政策は、いま次々と転換されている。
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それは、あたかも「オセロゲーム」のようである。
たとえば、減税自治体構想(減税基金への新規積立)は早々に凍結決定された。杉並区独自の教師養成塾(杉並師範館)も本年度末に解散廃止されることになった。杉並区政は大きく変化している。
問題は、選挙後になって、法定ビラ(マニフェスト)に記載されていなかった政策を次々と打ち出すようになっていることである。
それらを優先的に推進している印象も強い(→徹底検証!杉並区の政権交代)。 |
前区長時代に定めた「杉並区長の多選自粛条例」についても、さっそく廃止を打ち出してきた。
これもマニフェストには何も書かれていなかったことである。
この廃止方針は、10月に発表されたばかりなのだが、さっそく廃止議案を提出するとの意向が示されている。なぜ、いまトップダウンで廃止を急ぐのか。背景に何があるのか。
●杉並区長の在任期間に関する条例 (杉並区長の多選自粛条例) とは
杉並区が全国に先駆けて平成15年に制定。一人で多くの権限を独占している杉並区長の任期は
「最大3期12年」を目処とするよう定めている。努力規定であることから、多選は禁止されておらず、
立候補すること自体は可能。4選を目指す場合に相応の説明が必要になる、ということである。 |
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杉並区長・多選自粛条例の趣旨 |
アメリカ合衆国大統領の場合は、予算編成権を持っていない。法案提出権も持っていない。それは議会の権限となっているからである。
一方、日本の知事・首長は、予算編成権を独占しているだけでなく、議会の招集権さえも独占している。
首長に権限が集中する仕組みを採用しているのが日本の特徴。多選首長の支配下にある自治体は著しく硬直化が進んだ。
そこで、杉並区では、区長多選の「自粛」を明確にしたのである。区長が4選をめざす場合には、相応の説明責任を果たすよう要請する趣旨であった。
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当選したばかりの新区長が、トップダウンで廃止方針を打ち出すのはなぜ? |
ところが、新区長は、当選後この条例を痛烈に批判し、突然「廃止する」と言い出した。
違憲との主張である。区長が廃止の意向を表明した際、共産党さんが喝采の声をあげていたのが印象的だった。
だが、条例は区長多選の「自粛」を求めているのみである。多選を禁止しているわけではない。多選となる際には相応の説明責任を果たすことを求めているだけの話なのだ。それなのに新区長が過剰反応するのは何故だろうか。
権限を独占している首長多選の弊害は歴史が証明している。
当選直後の区長が急いで条例を廃止しようとするのは、他に別の理由があるからではないか。
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廃止はいつでも可能 いま急いで廃止する必要はない |
たしかに、自粛を要請しているに過ぎない規定であるとはいえ、現職区長が4期目を目指したいと考えた時に目障りとなるのは事実である。東京都議会議長の職を途中で辞職し、区長選に立候補した新区長にとって、これは切実な問題なのかもしれない。
しかし、それは、その時になって解決すればよいことだろう。いま急いで廃止する必要がどこにあるのか。
多くの区民がもう一回やってくれ、とお願いされるような状態であれば、その時に検討すればよいことなのである。(もともと多選は制限していないのだから、参政権の行使には全く影響はないのだが)
日本の知事・首長が、たった一人で数多くの権限を独占している状態にあることを考えれば、この「杉並ルール」は、もっと全国に広がってよいと考える。
それにしても、当選したばかりで、ほとんど実績を上げていない者が、このような提案をすること自体に強い疑問を持つのは私だけではあるまい。新区長は、まず目の前の職務に精励してほしい。今はまだ条例の存廃を論じることのできるタイミングではないだろう。
以上のような理由から、目下、この「廃止方針」の撤回を求め、活動中である。ご支援をお願いしたい。
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