みなさんは、区市町村が名簿の販売業者としての側面を持っていることをご存じでしょうか?(正式には「閲覧」ですが、実態としては同じことです)
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七五三の案内、受験、墓石の宣伝・・・どこからともなくダイレクトメールが届くことがあります。
自分のことはともかく、なぜ子どもの名前や年齢まで正確にわかるのか・・・ |
そんな経験はありませんか?
もちろん、遠い過去に、社員名簿や出身校の卒業生名簿などが作成されている場合はあるでしょう。しかし、当然のことながら、そこに掲載されているのは自分の名前だけですし、そもそも卒業生等以外は利用できない性質のものです。当然、子どもの名前がわかるはずもありません。
なぜ、このようなことが発生するのでしょうか。答えは簡単です。お住まいの自治体が住民の名簿を閲覧させているのです。
これが「住民基本台帳の大量閲覧」の問題です。
住民基本台帳(住民名簿)は何人でも閲覧できる |
住民基本台帳とは、簡単に言えば、住民票情報が掲載されているファイルのことです。
ファイルには、地域住民の「氏名」「性別」「住所」「生年月日」が掲載されています(戸籍情報は掲載されていません)。これは一定の手続さえとれば、原則として誰でも閲覧することができるのです。
私は初当選(1999年)以来、この「住民基本台帳の大量閲覧」問題に関心を寄せ、これまでどのような業者が閲覧してきたのか、毎年調査してきました。
ちなみに、毎年の状況は、以下の通りとなっています。
住民基本台帳法(第11条第1項)によると、このファイルについて「何人でも・・・閲覧を請求することができる」としています。これが民間企業の商品案内や受講生の募集などに活用されているわけです。
報道では頻繁に「個人情報が流出」と話題になっていますが、ヤミで売買せずとも、このように法律に基づいて、堂々と個人情報を閲覧・入手(メモ)することが可能になっている現状があるのです。
もちろん、公序良俗に反するような不当な目的を持っていることが明らかな場合は閲覧できません。また、二次利用(正当な目的以外の悪用)を防ぐために、コピーをとることも禁止、第三者への販売・譲渡も禁止されています。
しかし、個人情報の漏洩事件が多発する中で、いま、その実効性が問われています。
営利目的の閲覧を完全に禁止する自治体も |
もちろん、杉並区は、とりわけ個人情報保護に熱心な自治体ですから、(法の定めるルールの枠内ではあるものの)一定の対策をとってきました。
まず、悪用を防ぐための手立てとして、閲覧申請者には、(1)身分証明書や会社概要等の提示を条件とし、(2)目的外使用しないように誓約していただき、(3)あわせて非常に高額な閲覧手数料の支払いを求めることで、安易な大量閲覧について抑制を働かせてきました。
閲覧にあたっては、職員の立ち会いのもと、不正行為が発生しないよう、厳重に管理されています。他区の取り組みと比べても、個人情報を擁護する姿勢は強いものがありました。
しかし、個人情報保護に対する関心が高まっている昨今、今のままでは実効性に乏しいことも事実です。事実、高額な手数料を払ってでも、個人情報がほしい業者は後を絶たなかったのです(上記の一覧表をご覧ください)。
このような状態を受けて、最近では、熊本市などで商業目的の閲覧を一切認めないことを定めた条例が制定されるようになっています。要綱で自主的に商業目的の大量閲覧を認めないようにする自治体も出ています。
こうした取扱いは、実は住民基本台帳法違反の疑いも強く、非常に悩ましい状態ではあります(自治体の条例は、あくまで「法律の範囲内」で定めるものとされているのです)。
住民基本台帳法を尊重すれば、閲覧を一方的に禁止するわけにもいきません。しかし、これが個人情報の流出原因になっていることは否めない事実です・・・。
個人情報保護法は4月1日施行へ |
学術調査研究・報道・世論調査など、社会の健全な発展のために、このようなサンプルが必要となる時はあります。私も、それを否定するつもりはありません。
しかし、専ら営利・商売目的の利用となると、話は別でしょう。
この間の社会環境の変化を考えれば、営利目的の大量閲覧については、そろそろ自治体レベルで大胆に規制することを検討すべき時なのではないでしょうか。強い姿勢に出ることを決断すべきと思います。
もちろん、問題になるようであれば、住民基本台帳法第11条が違憲立法でないのかどうか、司法判断を仰ぐことも必要かもしれません。
なお、4月1日には、いよいよ個人情報保護法が施行されます。このタイミングで禁止することが理にかなっていると考えています。
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