これを書いている今日は、参院選の投開票日である。開票速報をみながら、この文章を書いている。
これまでと比べると、年金改革をはじめ、今回の参院選は争点がわかりやすかった。投票率が下がらなかった(東京ではむしろ上昇した)のも、それと無関係ではなかっただろう。
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法改正や改革の遅れは、各界各層に深い影響を与えているが、年金問題はその典型だった。この問題は、世代を問わず全国民に直接的に影響が発生するテーマであり、関心が高くなるのも当然だったと言える。 |
ここ最近の国政選挙が、漠然とした「新党ブーム」「小泉人気」「新人タレント候補の乱立」といったムードだけの選挙が多かったことを考えると、今回は様変わりした感がある。
しかし、実際には連立与党全体の議席がほとんど変わらなかった(連立与党は安定多数を維持している)こともあって、私には変化の予感がしない。
おそらく年金改革法はすぐには見直されないであろうし、短期的な政局はともかく、国会の今後の行く末にも疑問が拭えないままだ。
民主党は「次期衆院選で政権交代」と言っているそうだが、こんな状態で与党は解散するわけがないだろう。ちなみに、現在の衆議院の任期満了日は、3年以上も先である。この状態が3年以上も変わらないということは・・・
最高裁による異例の「警告」 |
もっとも、そんな政局ばかりに注目しているわけにも行かない。実は、今回の選挙は、非常に重大な問題をはらんでいて、ひょっとすると、今度こそ選挙が違憲(または違憲無効)になってしまう可能性があることを指摘しておきたい。
「一票の格差」の問題が、それである。
今年1月の最高裁判決は、そのことを実感させるキワドイ内容だったのだが、この話題はテレビや新聞の選挙報道では、ほとんど話題になっていなかった。せいぜい経済同友会が話題にしていた程度である。
最高裁は、かなり踏み込んだ意見を示していた。しかも、それは国会に対し、異例の警告をしたといっても差し支えない内容だった。そうであるにもかかわらず、国会は何ら制度改正をせず、今回の参院選を実施してしまったのである。
日本は、一人の独裁者に権力が集中しているような国ではなく、権力分立(三権分立)の国である。内閣や国会といっても、何でも自由に権力を行使できるわけではなく、裁判所の判断は、相応に尊重しなければならないはずなのだが、今回はあからさまに最高裁の意向を無視してしまったのである。
最近、マスコミだけでなく、公的機関もまた、表向きには「差別」問題に敏感である(かのようである)。差別用語や放送禁止用語は増える一方だ(どうやら今度は「痴呆」という言葉も使えなくなるらしい)。
しかし、マスコミも、政治も、行政も、「一票の格差」という古くて新しい地域差別には、ほとんど無頓着のままである。いったいどう説明するのだろうか。
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