杉並区議会議員(無所属)堀部やすし最前線2003


ゴミの出し方が裁判に発展した例も
どうする?ゴミの戸別収集

 歩きタバコやポイ捨て行為に罰則を盛り込んだ「安全美化条例」が10月より施行されました。すでに地域パトロール隊も活動を開始しています。

 しかし、課題はこれで終わりではありません。

 増えているゴミに関するトラブル

 かつて隣近所との深刻なトラブルといえば、日照権や境界確定といった問題が多かったわけですが、最近ではそれだけでなくペットやゴミ問題などでも深刻なトラブルに発展しているケースが出てきています。

 社会環境の変化にともなって、新たに取り組みが必要な課題となってきていることを実感しています。



 まず、ペットについては、環境省が「犬は放し飼いにしない」「譲渡が自らの責任で可能な場合を除き、繁殖制限措置を講じること」など『家庭動物等の飼養及び保管に関する基準』が定められ、ルールが明確にされるようになりました。

 杉並区においても、新しく施行した「安全美化条例」において、ポイ捨て行為や歩きタバコとならび犬のフンの放置や落書きにも罰則が設けられました。これも現在進められている地域パトロールの対象になっています。

 ただ、規制ばかりを強めて暮らしにくい社会にしているわけではありません。現在では、区内のいくつかの大規模公園において、ルールを守った上であれば、犬の散歩も認められるようになっています。一方では規制を緩和しつつも、ルールを守らない場合には厳しく取り締まるということです。

 今後はルール違反に罰則適用の可能性も(すでに落書きでは告訴された例も)あり、ひとつの転機となったことは間違いありません。



 一方、ゴミ問題のほうは、すでに必死の対策が進められてはいますが、成果という意味ではまだまだと考えています。

 カラスの被害(ゴミの散乱)もさることながら、とくにゴミの出し方の悪さに起因するトラブルが絶えません。私は最近もこうしたトラブルに遭遇したばかりなのですが、ほんの少しの心がけで解決するはずのことも、感情的な対立に発展してしまうと、解決が遠のいてしまうことを実感しています。


 ゴミの出し方で裁判になったケースも

 調べてみると、ゴミの出し方について、こんな裁判例がありました。

 Aさんの自宅の前は、ゴミの集積場。毎回の収集日はゴミの散乱と悪臭に悩まされていました。

 しかし、生きているかぎりゴミは全員が出すものであり、全員がこの苦悩を共有するべきと考えたAさんは、隣近所や自治会にゴミ集積場の持ち回り制(輪番制)を提案するようになりました。

 幸い、Aさんは熱心に一軒一軒事情を説明して回ったこともあり、そのうち理解者も増えるようになりました。

 ところが、この提案に反対していたBさんが自治会長になると、これを議題に取り上げることすら拒まれるようになってしまったのです。もちろん、それぞれに言い分はあったわけですが、さすがにBさんの強引なやり方には多くの自治会員が反発するようになり、Bさんは会長職をリコールされてしまいました。

 さて、その後、新しい自治会長の下で話し合いが行われた結果、ゴミ集積場の多くは輪番制とする(概ね1年ごとに各家の前に移動する)ことで、懸案は一応決着したかにみえました。

 ところが、一連の事件に不満を隠しきれないBさんら数世帯は、収集作業上格別の障害がなかったにもかかわらず、最後まで自宅前の公道を集積場にすることに反対し、輪番制を拒否しつづけたのです。

 困り果てたAさんは、Bさんらが集積場にゴミを捨てることを禁ずるよう求め、裁判を起こしました。


 ゴミの受忍限度は

 この裁判は、Aさんの主張が支持され、「一部住民のエゴで特定の者が害を被り続けるのは、社会生活一般の受忍限度を超えて、人格権の侵害に当たる」と判断されました(横浜地裁平成8年9月27日判決)。

 同様の判決は他にもあり、最高裁まで争われているのですが、最高裁も同様の事例でゴミ捨て禁止を命じた判決を支持しています(平成9年4月11日判決)。

 負けたBさんの主張は「Aさんはゴミ集積場に指定されていることを了解のうえで自宅を購入している」というものでした。

 これに対し、裁判所はゴミ集積場の存在によって被っている被害が受忍限度を超えるものであるかどうかの判断は、「単に被害の程度、内容のみにとどまらず、被害回避のための代替措置の有無、その難易等の観点のほか、関係者間の公平等諸般の事情を総合した上で行われるべきもの」で、「輪番制をとってごみ集積場を順次移動すれば、集積場所を利用する全員により被害を分け合うことが容易に可能であるのに、そのことを拒否し、特定の者にのみ被害を受け続けさせることは被害者にとり受忍限度を超えることとなる」と判断しました。


 「戸別収集」課題も多いが検討が必要

 現在、清掃事業においては、生ゴミの出る可燃ゴミの日に早朝収集や夜間収集を進めたり、各集積場にカラスネットを配付したりと、さまざま取り組みが進められています。作業員も収集の際にゴミの散乱に配慮するようにもなりました。

 その昔、行政が「カラス問題は清掃事業とは別」という姿勢をとっていたことを考えれば、確実に前進してはいるのです。

 しかし、そもそも排出の仕方が悪い場合はどうにもなりません。ゴミ袋から流れ出る汚水などの影響で悪臭が収まらず、相変わらずトラブルの種となっています。

 日野市においては、家庭ゴミの戸別収集が行われており、こうした問題は解消されています。効果が確認されていることから、八王子市などでも検討が進んでいます。

 もちろん、道路が広く区画が整理されている日野市と、そうでない杉並区を同列に論ずることはできないでしょう。また、戸別収集は収集時間の増加や収集コストが非常に高くなるなど、課題も少なくありません。

 日常生活に関わる問題です。ぜひご意見をお寄せください。

杉並 堀部ホーム ] 杉並 堀部ご意見はこちらへ


 最近公開されたばかりの織田裕二主演の映画「踊る大捜査線 THE MOVIE 2」でも、入札前に業者を一堂に集める談合シーンが出てきます。