杉並区議会議員(無所属)堀部やすし最前線2003



杉並区に残る「参入規制」 (区立保育園編)

 「都内の社会福祉法人」だけに限定する理由は・・・?
 杉並区立保育園に公設民営方式を採用する第一号として、改築後の高井戸保育園が対象となっています。平成16年4月より運営をスタートする予定であることから、次のようなスケジュールで公募が行われ、審査が実施されました。
 2003(平成15)年5月1日   公募開始
5月8日   応募を希望する社会福祉法人を対象に公募説明会を実施
6月6日   応募締切
〜7月   第一次・第二次審査後、法人決定
 杉並区における保育園初の公設民営化ということもあり、注目も集めた事例ですが、気になるのは、今回の応募条件が「都内の社会福祉法人」に限っている点です。

 要するに、お役所と付き合いの深い法人(社会福祉法人)以外は排除するということなのでしょう。「長年の実績」や「安定的な経営」ということを考えたのかもしれません。

 社会福祉法人 「だから」 安心なのか?
 しかし、今後の厳しい時代を考えると、社会福祉法人といえども、これまでのような「なぁなぁ」の経営では立ち行かない可能性も強く、社会福祉法人なら安定した経営ができるとする根拠は非常に疑わしいものがあります。

 実際に、ごく最近までの社会福祉法人の会計基準は、損益計算や減価償却という概念すらありませんでした(現在では新会計基準に以降済)。このような状態だったことを考えれば、少子化が進む中、「社会福祉法人としての長年の実績がある」という理由で、今後も安定的に経営を継続できる保証があると誰が言えるでしょうか。

 もうこれまでのような「官製市場」の中で、「社会福祉法人」という理由だけで生きていける時代は終わりを迎えているのです。

 現在では、区立保育園の管理運営先を社会福祉法人だけに限定する積極的な理由はないのであって、(仮に最終的に区内の社会福祉法人しかないと判断することになったにしても)、基本的には希望者に広く門戸を開く姿勢をとっていくことが大事と考えます。

 今後は運営主体(法人の種類)によって差別するのではなく、その法人の姿勢を見極め、真に利用者に支持される法人に委ねていくという姿勢をとっていくべきです。


 公募段階における「過剰な参入規制」は改めるべき
 従来、認可保育園は、自治体直営か社会福祉法人が運営してきましたが、すでに3年も前(2000年3月)の規制緩和により、NPO法人や株式会社などにも門戸が拡大しました。

 現在では、公立の保育園や児童館の運営をNPO法人や株式会社が担当する例は枚挙に暇がなく、都内でも大田区をはじめ広がってきています。

 認可保育園の運営をNPO法人や株式会社が行うことには賛否両論があるかもしれません。したがって、区民の総意と自由な選考の結果論として、最終的に社会福祉法人が選ばれることになったというのなら、私もそれを否定するものではありません。

 しかし、公務員や官製市場に対する風当たりが強くなっている中、最初から他の民間人(法人)の参入を一律に排除してしまうのは、さすがにどんなものでしょう?

 しかも、今回の選考は、保護者代表や学識経験者の参加の下、法人選定委員会を立ち上げ、慎重に選考されるのであり、単なる価格競争だけの一般競争入札ではありません。

 かりに問題があれば、それは審査の過程で、示されてきた提案内容や法人の過去の実績等々から判断すべきことであり、それを検証するためにこそ設置されたのが法人選定委員会であったはずなのです。

 応募法人に大きな問題があれば、それがどのような運営主体であれ、あくまで審査の過程で排除すればよいことでしょう。その過程で、利用者のニーズを的確にふまえる機会(保護者や保育士の意見の反映)を考え、適切に対応していけば、入口段階における参入規制を過剰にする必要はないはずです。

 しかし、応募資格を特定の法人に限定すれば、選択の幅を狭めてしまうことになります。また、それは、やる気と向上心のある業者の意欲を削ぐことにも繋がり、社会的にみても大きな損失です。

 入口の段階で多くの法人を閉め出してしまうのは、求められている入札・契約改革の流れに反することであり、過剰な参入規制と言わざるを得ないものです。

 日ごろつき合いのない多様な法人の応募があれば、談合まがいの日本的な調整が行われる可能性がより低くなることを考えても、「入口では広く門戸を開き、出口で厳しく審査する」ことが基本。今回のように公募段階における過剰な参入規制は問題と考えており、今後も改善を主張していきたいと考えています。


 選定前に「業者を一同に集める合同説明会」の弊害は・・・
 さらに、今回は公募過程にも疑問があります。

 区は、工事等における入札改革で、最近「談合の温床となっている」との批判の強かった事前の現場説明会を廃止したばかりのところです。これは、私も常々求めてきた「入札・契約制度改革」の一環であり、区が廃止を公約していたものでした。

 事前に事業者を一堂に集め、入札や公募に参加を希望する面々が明らかとなってしまえば、そこに不適切な調整や談合的な配慮が働いてしまう可能性があることは、かねてより指摘されてきたことです。廃止は当然で、遅きに失した感すらあります。

 このため、現在区の入札においては、説明書的なもの、図面・仕様書等々は役所外のコピー店で販売し、その内容に関する質問及び回答も、原則ファクスで行い、落札決定されるまでの間は利害関係者の接点を極力なくすなど、公正な入札・契約の実現のため、改善が図られています。

 しかし、この原則は、さまざまな理由をつけ、未だに守られていないのです。

 こうしたことは、入札改革・契約改革を骨抜きにするものであることから、以前強く抗議しましたが、今回もまた杉並公会堂改築等事業のときと同様、この原則は守られず、5月8日に受託を検討する法人を一堂に集める形態での説明会が行われていたわけです。

 公正性の確保という観点からも、また入札改革という観点から見ても、このようなものを行うことは適切ではありません。

 かりに、区がどうしても合同での説明会が必要不可欠と判断した場合であっても、少なくとも公募締め切りや第一次審査が終わるまでは実施を差し控えるべきでしょう(個人的には絶対行うべきではないと思いますが!)。要は、約束された入札・契約改革がなし崩しになっているのです。


 「公平性を期するために」こそ必要なこと
 なぜ原則に外れてこのようなものを実施する必要があったのか、議会でも追及していますが、これに対する区の回答は、対象となる法人が多く、応募が多数予想されたため、「公平性を期するために」実施したというものでした。

 しかし、これは妙な理屈です。そもそも公平性を期するためにこそ、一同を集める形での説明会は、談合の温床となるとのことで廃止されたのです。それを復活させることのほうが、公平性を害することではありませんか!

 公平性を確保するために最も重要なことは、妙な参入規制は廃止すること、広く公募の実施を周知することと考えます。公平な業者選定を行うためにも、やってはならないことをやってしまっているのです。

 また、対象となる法人が多いことや応募が多数予想されたことも言い訳にしていますが、行政事務は、公平でクリアであることが重要なのであって、そんなことは理由にもなりません。

 このようなことは、申込期間や審査期間に余裕を持たせ対応すればよいことです。だいたいにおいて、オープン予定が来年4月ということを考えれば、あと1〜2ヶ月程度余裕を持った選考は可能というものです。

 なお、参考までに、合同説明会に参加した法人は20法人。その後実際に応募してきた法人は、7法人でした。

 今後も課題はつづく
 以上について、議会で追及したところ、今後の公募にあたっては、広く門戸を開いていくことを約束する答弁が返ってきています。

 しかし、業者を一堂に集めて実施した説明会については、残念ながら、あまり反省の色がありません。

 業者を選定する前に、参加希望業者を一同に集め、合同説明会を開いた杉並公会堂改築のときは、数多くの業者が興味を示しながら、最終的に入札に参加してきたのは1社のみ(そのまま落札)という最悪の結果を招いています。

 さすがに1社入札(落札)という結果には、さすがにあちらこちらから不満の声が出ましたし、このようなことは今後はあり得ないとは思います。しかし、今後も希望者が事前に一同に参集する機会が残れば、暗に談合的な配慮が働きかけが行われ、ついつい調整したくなってしまうのも「人情」というものです。

 情にほだされて公平性が失われることないよう、そして不適切な調整が行われることのないよう、応募の条件・過程を含めた業者選定には細心の注意が必要と考えます。

 杉並区では、今後学童クラブの運営についても、公設民営方式の検討があります。今後も同様に注視していく必要があると考えています。


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 最近公開されたばかりの織田裕二主演の映画「踊る大捜査線 THE MOVIE 2」でも、入札前に業者を一堂に集める談合シーンが出てきます。