杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線2000 9月@ No.65 |
杉並区の「レジ袋税」構想を考える その論点(その1) |
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このリポートは、2000年(平成12年)9月のもので、当時の状況に基づいて書かれたものです。その後、状況に変化が出ていますので、ご注意ください。 ---------------------------------------------------------------------- 杉並区は、この9月(平成12年)、スーパーなどのレジ袋に対して一袋5円の「レジ袋税」を課す方針を打ち出しました(5年間限定)。発表当日から、区の内外で大きな話題を呼んでいます。これを受けて、私たちのページでも、投票掲示板を作っていますが、まさに賛否両論、そのどちらにも鋭い指摘が書かれています。
参考:「21世紀ビジョン」の策定・広報に関する予算は、総額5,217万6,000円です(1999年〜2000年)。 行政がどんな方針を打ち出そうと、最終的にそれが議会で議決されない限りは、条例は成立しませんので、今後、内外で大いに議論が盛り上がることを期待しています。賛否両論あるとは思いますが、内外で現実に根ざした冷静な議論をしたうえで、可否を決めて行くことができればと思っています。 |
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条件つきで賛成はするが・・・ |
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私は、かねてから環境税的なものは必要だと思ってきましたし、今回の提案は、あくまで一つのアイデアとしては、共感しています。 普段深く考えることもなくもらっているレジ袋ですが、東京都によれば、1世帯が1年間に消費するレジ袋は約650枚、都内508万世帯ではそれが推定33億枚にのぼっているそうです(このうち再利用されているのは65%に過ぎないとか)。そこで、行政も、マイバック・キャンペーンなどを行い、意識啓発に努めてきていましたが、現実にはあまり効果がありませんでした。このため、増収と環境問題を絡めて、ついに奥の手を出してきたというわけです。 実は、レジ袋課税(有料化)は、杉並だけではなく、福井県武生市や、埼玉県狭山市でも、同じような検討が行われています。杉並がいちばん遅く検討を始めたにもかかわらず、スピーディに検討結果が出てきたのには、やはり不燃ゴミの圧縮中継施設「杉並中継所」をめぐる問題(いわゆる杉並病)があったからです。 参考:いわゆる杉並病については、他の週間報告や、概要をまとめたこちらなどをご覧ください。 これまでも、このページでは、この問題の深刻さを訴えてきましたが、ここまで厳しい状況になると、こうした環境税(目的税)という手段によって、意識啓発を進めるという考え方そのものには、賛成します。 ただ、「環境税」と銘打つには少し課税のあり方に不公平さが残っていますし、今のままでは賛成しにくのも確かです。議論をして、もう少し批判に耐えられる内容にしたうえで導入すべきだと思っています。個人的には、増税するなら、公約違反の赤字区債の発行(山田区長誕生後に、これまで30億円強の発行を決定=2000年9月現在)は、ハッキリやめてもらいたいとも思っているのですが・・・いずれにしろ、まだ叩き台の段階ですので、どんどん議論して、よりよい結論を出すことができればと思っています。 とくに、きちんと議論しなければいけないのは、次の点。以下、順次整理してみていきましょう。 レジ袋税の論点(その1)
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※写真=ペットボトルやトレーなど資源ゴミが目立つ杉並中継所のゴミ |
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※その後の議論を受けてまとめた論点6〜10は、(その2)へ |
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●1.なぜ、5円? | ||||||||||||||||||||
「ゴミをより多く出す者こそ、より多くの負担すべき」という考え方そのものには、賛成です。しかし、5円では効果が低いでしょう。 すでにスーパーの中には一枚6円でレジ袋を販売しています。報道によれば、それでかなりの効果を挙げていると言っているようです。このスーパーは、私も独身時代には頻繁に利用したスーパーなのですが、私がみた限り、それでもまだまだ実に多くの人がレジ袋を利用していると思うのですが・・・ 5〜6円程度では、「効果てきめん」とまではいえないようです。 環境社会工学がご専門である筑波大学の安田助教授は、レジ袋を適切に有料化すれば、それを90%以上削減することができると主張していらっしゃいます。その結論は、レジ袋を10円で有料化すれば90%の削減ができ、90%以上の人が買い物袋を持参することがわかったというものです。(参考ページ) たしかに、すでにレジ袋を5円や6円で販売しているスーパーや生協での減量実績が一定量に止まっていることを考えたとき、区長提案の5円という税額では中途半端で効果が薄いだろうと感じるのが、正直な感想です(しかし、スタンプ還元方式よりははるかに効果があるようです。参考ページ)。 しかし、これ以上の重税は、脱税が容易であることを考えると難しいのも事実(後述)。私が聞いた意見なかには、100円にしろとか、500円にしろという意見もあるのですが、このあたりも議論を深めていかなければならない点だと思います。 |
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●2.なぜ、レジ袋だけ? しかも、なぜ、スーパーやコンビニだけ? | ||||||||||||||||||||
レジ袋課税の理由として、@環境問題への意識高揚のきっかけづくり、Aゴミ減量、B石油資源の消費抑制、Cレジ袋は使い捨て文化の象徴であるが代用が効く・・・という理由を挙げています(検討結果報告書による)。 問題は、なぜ「レジ袋」だけなのかという点です。 研究会メンバーの一人である課税課長にヒアリングしたところ、@トレーやペットボトルは消費者が勝手に外して持ち帰れない(トレーやペットボトルに代わる代替手段がない)、Aトレーやペットボトルにまで対象を広げると大きな混乱を招く可能性がある、B徴税コストの問題と説明していました。 たしかに、トレーなどにも課税するとなると、レジのposシステムやバーコードの大がかりな変更が必要になるでしょう。また、大型スーパーの場合、バーコード番号を決めるのは本社のシステム担当だと思いますが、杉並区の店だけを別番号で登録する必要が生じてくることでしょう。この意味では、トレーなどへの課税は、その負担やコスト面からみて現実的でないかもしれません。 しかし、「じゃあ、なぜ環境税なんて宣伝するの?」という批判は起こりそうです。実際にも、今年行われた「杉並中継所不燃ゴミの組成調査」によると、ラップ類は、レジ袋よりはるかに多く捨てられています。また、トレーやカップ類、ペットボトルもそうです。さらに、豆腐や魚肉類など水物をいれるために配布されているビニール袋類についても課税対象としないというのでは、「とりやすいところからとる」という態度がミエミエで、不公平感が残ることでしょう。 また、レジ袋の定義は「消費者が商品の持ち帰りのために用いるプラスティック製の手提げ袋」となっていますので、書店などで入れてもらう紙袋や、手提げ用の紙袋などは対象外になってしまいます。このあたりも、賛否両論が出てくることでしょう。 ところで、スーパーやコンビニなどのレジ袋だけをねらい打ちしたのは、なぜなのでしょう?(3につづく) |
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●3.小規模商店や消費税免税事業者をなぜ免除とするのか? | ||||||||||||||||||||
区長サイドが出してきた報告書には、小規模商店などの消費税免税事業者は免除という方針になっています。この税を導入するのであれば、小さくとも同じようにゴミを出しているのなら、しっかり課税対象としていくべきだと考えています。そうでなければ、純粋に「環境税」とはいえず、たんなる大型店やコンビニいじめ税になってしまうかもしれません。 先の課長に、なぜ、免税にするのかと尋ねてみると、区内の事業者28000社を対象に課税するとなると、徴税コストの面で問題になる・・・という答えが返ってきました。これも「環境税なのに、とりやすいところからとるだけでよいのか」というような批判をすでに耳にしています。 ちなみに、今回の報告書では、納税義務者2000〜2400、その税収見込は1億8800万、徴税コストは3000万〜3500万程度と予想されています。対象を拡大しても、コストばかりかかさんで、税収はあまり多くを見込めないというのが本音のようです。 (※2000年9月追記) この税の難しいところは、レジ袋を使う人がいなくなれば、税収は入らないという点。その後、議会のなかで、区の生活経済部長も、それを認めながら「収入減がゴミ処理費用の削減にもつながる」というメリットを挙げ、この税は環境税(法定外目的税)なので、あくまで「税収は副次的なもの」と答弁しています。レジ袋が減ったぐらいで処理費用が大きく削減されるとは到底思えませんが、少なくとも増収目的で導入するわけではないことが、これでハッキリしました。 そうであるならば、環境税という目的にふさわしいように徴税するのが本筋で、徴税コストを理由に小規模事業者への免税措置を設けるのは不適当だと考えます。環境、ゴミ問題に対する区民の意識啓発が真の目的であるなら、極論すれば「赤字にならなければ良い」という程度に考え、導入するべきです。 (※2001年10月追記) なお、その後、課税対象者が消費者に変更され、免税措置がない提案に変更されています。これによって、対象事業者が拡大し、税収見込も4億円になっています(2001年10月追記) |
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●4.申告納税となるが、きちんと捕捉することができるのか? | ||||||||||||||||||||
これも、反対意見に使われていくのではないでしょうか? 杉並区が使用したレジ袋を正確にカウントすることができるのでしょうか? 本部によってしっかり管理されているような大型店等では、そう不正は発生しないだろうと思いますが、マルサが毎日の分まで細々確認するわけではないでしょうから、不正ができないわけではなく、あまりに脱税が容易なのです(もっとも、そう言ってしまえば、印紙税なども同じなのですが)。消費税でいう益税が発生したり、事業者が納税日までに他に流用して納税できなくなるという例も発生するかもしれません(なお、消費税のような中間申告の制度は検討されていません)。 ただ、消費者が、みなレジ袋を使わなくなれば、益税など発生しようもないわけで、この問題を逆手にとって、「だからこそレジ袋を使うのはやめましょう」というキャンペーンを行い、効果をあげるという手がないでもありません(笑)。私は、むしろこうした逆手にとった宣伝の仕方でレジ袋の使用を抑制していくのも、おもしろいと思っていますが・・・(ふざけ過ぎでしょうか?) もっとも、民間でそれをやるのは自由ですが、区の広報にそんなことを掲載すれば、「私はロクに捕捉できない税を導入したバカ者です」といっているようなものですので、掲載は不可能でしょう。現実にも益税が発生するのがわかっていながら導入することを問題視する方は多いかもしれません。 |
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●5.杉並区内の消費が低迷する可能性は? |
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これも、反対意見に使われていく可能性があります。 はじめて消費税が導入されたときには影響が出たといいますが、レジ袋を使うのが主に日々口にする食料品であることを考えれば、影響は少ないのではないかと思います。また、買い物バックを持参するようにして、レジ袋を使わないようにすれば、課税されないことを考えれば、影響は軽微なのではないでしょうか? しかし、それでも、厳しい経済環境の中では、これが大きな反発要因となるかもしれません。どなたかこれを検証する有用なデータをお持ちでしたら、お知らせください。 (追記 なお、その後、特定地域で影響が出るとの指摘も。その2 論点6へ) |
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ご意見をお聴かせください |
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レジ袋税提案は、複雑化している環境問題が背景になってはいるのですが、紛れもなく増税になることですから、とくにしっかり議論していかなければならない課題だと思っています。 この税は「法定外目的税」なので、使い道は環境関連に限られていくでしょうし、区の構想ではそのための基金を積み立てることも検討しています。技術的な問題は残っているものの、使い道に対する不安には応えていくことができると思います。 「増税になることは、とにかく嫌だ」とか「財政難の責任を区民に押しつけるな」というのは容易いことですが、現実にゴミ減量を急ピッチに進めなければならないのも事実なのです。文中では、今回の区の提案に対して、批判めいたことをたくさん書きました。ただ、これまで区が行ってきたゴミ問題に対する意識啓発も、実際にはなかなか実を結んでいないことを考えると、レジ袋税を導入したいという区の思いは理解したいと思っています。 このような税を導入しなければならないとしたら、非常に悲しいことかもしれません。しかし、ここまでゴミ問題が深刻になったのは、ゴミに対する意識の低さの裏返しでもあるわけです。ここを解決していかないかぎり、環境税構想は、何度でも出てくることでしょう。反対するとしたら、これに対する「説得力のある代替案」を出していかなければならないと思います。 賛否両論あるとは思いますので、内外で現実に根ざした冷静な議論をしたうえで、可否を決めて行くことができればと思っています。 ●杉並区の「レジ袋税」構想を考える論点その2へ |
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