杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線 No.53




横領事件が発覚 外部監査制度の導入を急げ!

 
 杉並区立井荻中学校で、学校職員が生徒の給食費等を隠れて使い込んでいたという事件が発覚しました。なかなか微妙な問題もあるため(使い込みをした当の職員は、すでにお亡くなりになっているため)、区も答えにくい話題でしょうが、まずは簡単に一般質問で取り上げることにしました。


 使い込み苦に自殺? 生命保険で補填

  警察によれば、使い込みを苦に自殺をしたのではないかというお話。家族あてに遺書があったほか、給食などに関係する業者の銀行口座を指定し、「私の生命保険金で支払ってください」というメモ書きもあったそうです。

 終わったことは仕方ありませんが、この使い込みについて、この職員が自殺するまで、誰にもわからなかったという事実を重く受け止める必要があると思います。すでに、本人の生命保険金を使って、遺族がこれを返還してしたので、区に経済的な痛みは残っていないわけですが・・・この職員は52歳。残された遺族はどうなるのでしょうが・・・


 会計にも内部牽制が働くように

 詳細な報告は、これからになりますが、この職員は会計担当。給食費など約1600万円を横領していたそうです(※注・7月 その後、私が議会で質問したところ、内部調査の結果、横領額は1400万円強であったと報告された)。

 
会計を一人で担当していたことから、横領の事実を誰にも知られることがなかったという言い訳になっているのですが・・・まず、今後、ここから改めてもらわなければならないと思っています。

 そもそも、ちょっと考えれば、これは実に困った話なのです。お役所は、個人事業主とは全然立場が違うのですから、かりに私費会計であっても、
ひとつの会計に複数の担当者が関与してもらわなければ困ります。そんな当たり前のことすらが行われていなかったことを考えると、このほか契約を担当した職員が、その契約の検査検収まで行っている・・・などという可能性もあるかもしれません。いずれにしろ、一人の人間がお金を扱い、伝票を発行し、帳簿をつけているというあり方は是正し、内部牽制が働くようにする必要があると考えます(当たり前すぎますよね・・・)。

 お亡くなりになった方がいることなどを配慮し、今後の改善を期待して、今は深く追及することを控えますが、しっかり改善されるよう、この場でもお願いしておきます。<担当者様。


 外部監査制度の導入を急げ!

 しかし、それ以上に、今回の事件を契機に、監査のあり方を再検討しなければならないと思っています。内部で牽制が働くシステムになったとしても、お互い牽制しあうべき人間どおしがつるんでしまえば、意味がないものになってしまいます。現在でも内部監査はありますが、それだけでなく、外部からも常に定期的に牽制されるようにする必要があると考えています。具体的には、地方自治法改正で条文化された外部監査制度の導入を急ぐべきと考えています。

 なお、外部監査は、これまでの内部の「なぁなぁ監査」にカツを入れるためにも必要な制度。都道府県や主要都市などでは既に導入されています。実際に、東京都でも、去年実施された外部監査で都立病院のズサンな経営実態が明らかになるなど、効果を挙げています。

 残念ながら、杉並区では、これまで外部監査の必要性を認めず、導入にむけた検討すら行われてきませんでした。外部監査を導入したら今回のような事件が発生しなくなるというほど単純な問題でもありませんが、各地で効果をあげていることもあり、杉並区でも早く導入できるよう、今後も強く推進していきます(個人的には、とくに弁護士を指名し、内部監査とは異なる視点での監査もできるようにしたいものだと考えています)。


 法改正で 地方自治体の外部監査は必要不可欠なものに

 実は、国の一機関にも、行政のお目付け役である総務庁の行政監察局というのがあり、しっかり機能すれば、なかなか効果を挙げることのできるところがあります(なお、行政監察局は、2001年の省庁再編にあわせて、総務省の行政評価局と改変され、各省庁の政策評価と各行政機関の業務の実施状況の評価と監視を行うことになります)。

 ここは、いわばオンブズマン的な働きをしており、行政への要望を伺ったり、一般市民から寄せられる行政への苦情を処理したりしているのですが・・・しかし、地方分権の推進という意味から、今年から、国が自治体にいちゃもんをつけることは、制限されることになりました。法改正があり、国と地方自治体は、「対等の関係」になったので、国が自治体の運営に不当に介入することはできなくなったわけです。
 
 問題は、これが監査についても同様だからなのです。今後、行政評価局が自治体に監察を行う際も、その自治体の意見を聴くことが前提になっており、実効性の高い「抜き打ち監察」は、全くできなくなったような状況です(もっとも従来から抜き打ち監査があったとも思えませんが)。うがった見方をすれば、腐敗している自治体には、朗報なのです。議会や内部の監査委員の過半さえ手中に収めていれば、いとも簡単に神聖不可侵の「聖域」ができてしまうからです。

 もちろん、地方自治は、たいへん良いことですが、監査は第3者が介入すべき性質の問題です。これでは、腐敗が進んでいる自治体の場合、外部の監視が弱くなることで、よりいっそう腐敗が進んでしまう可能性があります。その意味でも、外部監査制度は、もはや自治体に不可欠の制度になったと考えています。


 (※注 追記 7月)

 さっそくこの点について、今期の議会で話題に取り上げました。幸いにして、この機会に外部監査制度の導入を求めた私の提案に対し、議会の場で区長はこれを検討するとはじめて明言。区長も従来からしっかりした認識をお持ちのようでしたので、まずは安心しました。だったら、早くから検討を明言してくれれば話も早かったのですが。あとは実行あるのみです。





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