杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線 | No.35 |
「杉並病」 新提案 ゴミの圧縮だけでも中止を |
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私のホームページでも長らく取り上げてきた「杉並病」。私の情報公開請求(調査データの写しを磁気ディスクで交付するよう請求)に対し、都はようやくその一部をフロッピーディスクで交付してきました。昨年10月より延々と請求を続けてきたのですが、ようやく交付されることが決まったわけです。
開示された情報は、杉並中継所をめぐって実施された環境調査に関するもの。調査の結果、平成9年1月17日と11月6日に実施した環境調査の際の測定データを磁気ディスクで交付してほしい・・・これが従来からの私の主張でした。 すでにお伝えしているように、東京都清掃局は、杉並中継所に関する過去の調査結果について「都にあるコンピュータでなければ解読できないものであるため、データを提供することができない」という理由で情報開示してきませんでした。他の方の開示要求に対しても、論点になっている半揮発性物質についての磁気記録は、「捨ててしまった」などと理由をつけて開示しないなど、あくまでも公開しないという姿勢を守り続けてきました。 この世に1,700万種も存在しているという化学物質のなかから、都が都合よく選んだ物質の量が少ないからといってなんで毒性物質がないという証拠にはなりません。請求した情報のうち、定性分析の磁気記録は、その分析のときに得られた空気情報を人間の選択無しにすべて含んでいます。それが、調査結果の再検討と、原因究明のためには、必要不可欠なのです。 もちろん、この問題を検討している東京都の「調査委員会」にも、こうしたデータは提示されておらず、東京都に都合の良い方向で議論が進められているようです(すべてのデータが議論の俎上にのっていないことは、杉並区を代表して調査委員会に参加している杉並保健所長も認めています)。3月には一定の結論が出されるようですが、昨年末に2回ばかり委員会を開いたあと、今後は限られた委員の間だけで、密室で検討し、結論を出すようです。 昨年の杉並区議会・決算特別委員会の席でも、調査委員会では、まず、これまでの調査結果を再検討することが中心になる・・・と、保健所長は発言していたのですが、実際のデータを詳細に検討することがないなら、いったい何のために新たに調査委員会を作って検討しているのか、本当に疑問です。
そんなわけで、都の調査委員会にすら提示されていない情報が、開示されるわけはないとは思っていたのですが、やっぱり情報提供されることはありませんでした。東京都はすべて開示したのだと言っていますが、調査報告書を見てみれば、それが全部開示ではないことがわかります。 杉並中継所に関する過去の環境調査には、大きく分けて、排気ガスと水質に関する調査があります。このうち、排気ガスの調査には、@定量分析と、A定性分析がありますが・・・たとえば、定性分析といっても、@揮発性有機化合物、A半揮発性有機化合物、B有機酸類、C金属類、D陽・陰イオンと5項目の調査項目があります。もちろん、これらのデータが原因究明に必要なデータであるからこそ、「全部公開」を求めているのです。 ところが、今回交付されたフロッピーは、このうち、揮発性有機化合物の定性分析結果だけが収容されているもので、その他のものは、含まれてないものです。もちろん、正式に渡された開示決定通知書にも、開示内容は「揮発性有機化合物の定性分析結果」としか書いてありません。私は、揮発性物質のデータだけを求めているわけではありません。しかし、私の請求内容を意図的にすり替えて、一部のデータだけしか開示してこなかったわけです。 ところが、都によれば、とにかく、都が保有しているデータは、それがすべてだというのです。これらのデータの保存期間は3年間と決まっているにもかかわらず、それらが保存されていないというのは、どういうことなのか? 二つの調査あわせて2,000万円もの費用をかけておきながら、そのデータの一部を理由もなく破棄している(保存していない)というのは、どういうことなのか? これでは、都合の悪い情報は、なんでも破棄できることになってしまうではありませんか! 最初は、都のコンピュータでなければ読みとれないと、データの開示に難色を示し、その理由が使えなくなると、今度はデータの一部だけを開示して「これが全部」と言ってくる・・・どうみたって、全部じゃないんですが。しかも、開示にあたっても、そんな説明は一切ないんですから。こちらが気づかなければ、そのままトボけ通すつもりだったんでしょう。困ったものです。
そんななか、今日、ふと、原点に戻って考えてみようと思い、改めて、話題にしている調査結果報告書を読んでみました。そして、そこには調査の目的が次のように表現されていました。
うがった見方をするのは失礼ですが、これを読むと「排気の安全性を検証する」ことが主目的で調査をしたと読めてしまいます。すると、中継所の安全性を証明するデータだけしか都にデータが保存されていないというのも、わからない話でもありません。 しかし、排気が安全かどうかなど、まだ解明されていないことです。1,000万という単位で存在している化学物質のうちの、たかだか20〜30を取り出して「安全である」「許容範囲内である」と主張し、それ以外のデータの多くを保存していないことが、本当に理屈に適ったものなのかどうか、改めて、問題です。 結果として、安全性を検証するために行った一連の調査は、徹底的な原因究明のために、こと細かく調査するというところに目的を置いていなかったということなのでしょう。その意味では、都が安全性を証明するのに重要でないと考えたデータを破棄したのは、ごく自然なことだったのかもしれません。中継所の安全性(都の政策の正当性)を証明するために調査結果を誘導したかったのはわかりますが、それでは、行政はいったい誰の方向を向いて仕事をしているのでしょう?・・・しかし、それが「東京都の論理」の現実なのです。
実は、私は、毎年春先から夏前ごろまで、スギ花粉や、カモガヤ花粉の影響で発症する花粉症に悩まされています。花粉症も、杉並病の症例と同じようなところがあり、花粉が大量に飛散しているにもかかわらず、何年も何ともない人は大勢います。しかし、それまで何でもなかった人が、ある日突然、発症し、苦しくなるという特徴があります。そして、一度、発症してしまうと、基本的には花粉のない環境で暮らすしか、根本的には解決することはできません。花粉症と同じ扱いをするわけではありませんが、杉並病もまた、有害物質を出さないような環境を作り出すしか、根本的な解決策はないはずです。 現状では、たしかに原因究明への努力も重要ですが、やはり被害の拡大を防ぐための方策を真剣に考えなければならないと思っています。これまで説明してきたように、原因究明に必要な情報は、遅々として入手することができず、未だにどうにもならない状況が続いているからです。現状で何ができるのか、真剣に考えなければなりません。 そんななかで、今回、一部の地域住民が、興味ある新提案を行っています。どうしても杉並中継所の操業を中止することができないなら、せめて不燃ゴミの圧縮(有害物質を発生する元凶とみられる)を中止し、中継所では単なるゴミの積み替え作業だけをする場所に代えるべきだ、という提案です。ゴミの圧縮は、二分の一にしているだけですので、行政と地域住民の双方が譲り合うことのできる現実的な妥協案として、議論を進めることはできないか・・・と思っています。 |
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