杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線 No.28


堀部やすしの決算意見


 半月にわたって昨年度の決算を審議していた区議会・決算特別委員会が終わり、昨年度決算のすべてが認定されました。なお、私は3つの特別会計(国民健康保険・老人保健医療・用地の各会計)の認定には賛成しましたが、一般会計の認定については同意することができず、反対しました。

 今日は、私が議会で行った、その反対意見を掲載します(掲載にあたって、一般の読者のみなさんが理解しにくい部分については、多少補足し説明をつけておきました。なお、ご要望の多い基本的な用語の説明については、近くFAQを設置して対応するように心がけます)。区のこれからを考えていくうえで、決算をよく検討し、検証していくことは、非常に重要なことです。今後とも、現状について、建設的なご意見をお寄せいただければ幸いです。なお、今回の意見開陳で、緊急に意見要望したのは以下の5点です。

@今後は、子孫にツケを回すだけの借金(赤字債の発行)は止めるべき
A時代遅れの情報公開制度を早期に改善するべき
B区職員のみなさんも、区長の接遇・パフォーマンス上手を見習うべき
C福祉費の多くがハコモノ施設建設費に消えていくあり方は再検討すべき
D杉並病の解消とゴミの減量・再資源化に向け、「杉並中継所をなくすための行動計画」の策定を!


 堀部やすしの決算意見

 
(現在の杉並区の財政について)


 ここ数年、全国的に各自治体は、急激に財政を悪化させてきております。全国3300存在している他の自治体と比較してみれば、杉並区は比較的、堅実な財政運営に努め、極力、特別区債の発行を抑制されてこられたことは、これは私も認めるところであります。しかしながら、それは、あくまで相対的に比較すればの話でありまして、絶対評価という目でみたとき、区財政の状況は、きわめて危機的な状況にあると言わざるを得ません。残念ながら、区には、危機意識(財政悪化に対する危機意識)がまだまだ低いようですが、とはいえ、不幸なことに、来年度以降、極めて厳しい歳出削減を進めていかなければならない状態は否定しようもありません。そして、そのしわ寄せは、まず日常生活に密着したところから影響が出ることになりそうであります。厳しい時代でありますから、聖域を設けず全員がこの痛みを共有しなくてはならないことは言うまでもありませんけれども、もう少し早くから、一歩進んだ取り組みを進めていれば、ここまで厳しい事態には陥らなかったはずなのであります。


 (いわゆる「杉並病」についての現状認識)


 また、清掃事業の区への移管が目前に迫っているこの時期になっても、井草森公園周辺の環境問題が解決する展望は、全く見えてきておりません。問題発生から3年が経過し、状況は「水俣病」の辿った道と驚くほど類似しております。もし、このままの状態が今後も続くようなことがあれば、後生の歴史家はこれを必ずや「杉並病」と表現し、おそらくは後世の子どもたちが使う教科書にも「杉並病」と悪名高く記述されてしまうことでありましょう。我々区民だけが、必死になって、「杉並病などという病気はない」と言葉狩りをし、井草森公園周辺環境問題と言い張ろうとしても、後世の教科書までは差し止めることはできないのであります。このままの状態では、未来永劫、杉並のイメージは損なわれつづけ、ここに住む我々区民のプライドも、ズタズタにされてしまうことでありましょう。

 清掃事業の区移管は、いうまでもなく、すでに当該年度より大きな懸案だったはずであります。東京都清掃局の杉並中継所をめぐる環境問題が、もう何年にもわたって、前進が見られないことは、被害の拡大を放置したに等しい状況であり、実際問題としても、当該年度にこの問題への対応が遅れたことは、今後の区政運営に大きな影となってしまっております。その結果、本年度においては、区民を代表する区議会としても、ついに一次操業停止を求めざるを得ない状況に追い込まれてしまいました。この問題をめぐる状況は、日に日に悪くなるばかりで、今日現在でも、これが好転する兆しは全く見えておりません。


 (@今後は、子孫にツケを回すだけの借金(赤字債の発行)は止めるべき)


 こうした意味で、私は、一般会計歳入歳出決算の認定について、賛成することができない立場であります。なお、他の決算については認定いたしますが、以下、決算審議を踏まえた上で、来年度に向けての区政運営について、若干の意見と要望を申し添えておきます。

 まず第一に、今後、減税補てん債の発行は止めるべきであります。

 過去に発行された減税補てん債が、政府の勝手な減税政策による副産物であり、本区自体に落ち度のあるものではないことは理解しております。そして、本来であれば、都は区に対して適切な補てんを行う義務があり、区もそれを求める権利があります。その意味では、審議の中の答弁にありました「減税補てん債は、本来補てんされるべきものである」という区の主張は、まことにその通りであり、その正当性は疑うべくもありません。しかしながら、区の財政も、たしかに厳しいものがありますが、都や国の財政はさらに厳しい状況にあります。いかに区が正当性を声高に訴えようとも、現実的には「ない袖は振れない」というのが実際のところであることも、そろそろ直視していくべきではないでしょうか。

 ご存じの通り、この国は、いま、たいへんなモラル・ハザードを起こしております。バブル時代に狼藉の限りを尽くした不良銀行に対して、負債が巨額のものは信用危機を起こすという理由だけで債権放棄を許し、企業経営も続けて良ければ、公的資金も注入してあげる、などということになっております。一般の民間人や中小企業が、数百万円・数千万円単位で自己破産・倒産を余儀なくされている中で、数兆円というケタ違いの負債であれば、それだけで援助の手がさしのべられるうえに責任追及もほとんどないという状況は、まったく説明のつかないものであります。中途半端な借金をした者は見捨てられ、逆により悪質で手に負えない借金をした者だけが救われるということは、一言でいえば「正直者がバカを見る」という社会であります。こんな理不尽なことを政府が率先して音頭をとり、実行しているような国でありますから、この国はもうルールもへったくれもない状況に等しいわけであります。

 こうした状況から学ぶことができることは、そろそろ区も、国や都に依存した意識から、できるだけ早く脱却したほうが賢明だ、ということであります。区の権利として、国や都に応分の負担を求めても、ここまでモラル・ハザードが進んだ現在では、いくら制度がどうであれ、国や都を当てにしているほうが、間抜けというものであります。ましてや補填を期待してこれ以上の区債を発行し続けることは、大間抜けであります。誰だって、背に腹は代えられないのであります。区が区の利益を第一に考えているように、都も国もまた、自分たちのことしか考えていない、というだけのことであります。その意味では、どちらも五十歩百歩でありまして、それならば、こちらもこちらで賢くなっていかなければならないわけです。

 現在のように恐ろしい勢いで赤字債を出し続けている日本の姿を見ているかぎり、現実的には、最終的に減税補てん債を補てんすることのできる者など、もはや誰もいないことでありましょう。むしろ、今後さらに、自治が拡充し、権限・財源・人間が、23区に下りてくれば、狡猾な東京都は、ランニング・コストのかかっている都のさまざまなお荷物施設なども、特別区に押しつけてくるやもしれません。自治の拡充は、決してバラ色の未来だけが約束されているものではないのであります。今後は、目の前の危機を一時的にしのげばそれで良いというような行政運営はやめ、また後の世代に重い負担を押しつけることになる減税補てん債の発行は止めるべきであります。まさか区長も最初に公表した選挙公約を放棄するようなことないとは思いますけれども、今後は、区長の長年の政治的主張であります財政均衡の達成に向けて、その経営手腕をいかんなく発揮されるよう、要望するものであります。


 (A時代遅れの情報公開制度を早期に改善するべき)


 第二に、適切な事務事業評価と、合理的な歳出削減のためにも、時代に対応した情報公開制度を早期に整備するべきであります。

 「決算説明書」や「主要施策の成果」という報告書のあり方については、決算審議中に他の多くの新人議員から再三指摘があった点ですが、これは突き詰めて考えれば、私がかねてより指摘しております情報提供のあり方・情報公開のあり方の問題に行き着くのであります。必要な情報が、適宜スピーディーに入手することができるようになれば、決算審議も効率化することができ、濃密な議論をすることができ、その結果、審議時間も自然と短縮化できるのであります。

 審議の中でも明らかになりましたが、区の冗費削減が進まないのは、情報公開に後ろ向きであることから発生しているものが少なからずあります。たとえば、今回でいえば、私は、区の車両用燃料の契約単価が高すぎるという問題を取り上げましたけれども、区民にとって、区に関する情報の入手が、迅速・簡易なものになっていれば、契約単価が誰の目にもわかるところとなり、決算審議をするまでもなく、とっくに冗費削減の声が大きく出てきていたはずなのであります。実際、このようなことは、OA化による情報の共有が進めば、実に何でもないことでありまして、この高度情報化の時代にそれを迅速に進めていかないのは、怠慢というものであります。

 この情報公開に関して、最近、私の情報公開請求と異議申立に対して、請求内容が全文書という請求であったために、請求趣旨が理解できなかったと発言された理事者の方がいらっしゃいました。プロの行政職員から、そのような発言があること自体、実に悲しいことでありますけれども、そもそも、私とて、ただ全文書と書くわけもなく、作成にあたっての経費内訳書や支出命令書等々例示した上で関係ある全文書を請求をしているのが事実であります。とくに必要なものを具体的に例示して請求書を提出しても、そのなかの資料が出てこないからこそ、異議申立をしたのであります。もう少しプロの行政職員としての自覚をもっていただき、区民の立場に立って仕事をしていただきたいと思います。人間の手による情報公開がそんなに煩わしく、手間がかかるのであれば、一刻も早く全情報の管理を電子化してしまえば、みなさんの仕事もラクになっていくのであります。かつて一般質問でも指摘させていただきましたように、情報管理のあり方や、情報公開制度についても、杉並NO.1(区長の公約)に相応しい時代の最先端を行くものとなるよう、早期に体制を整えるべきであります。


 (B区職員のみなさんも、区長の接遇・パフォーマンス上手を見習うべき)


 第三に、今後、適正な受益者負担や合理化を進めていくのは結構でありますが、それに対するフォローが欠けては行政改革は進みません。厳しい行革を行うべきであるからこそ、些末なところでつまずいていただきたくはありませんし、より慎重に対処していただきたいと思います。

 たとえば、平成13年より、各出張所が廃止される予定でありますが、その代替サービスについては、依然として明確には見えないままであります。そもそも出張所を頻繁に利用する区民は明らかに少数派であり、出張所を維持することに費用をかけるよりも、介護や子育てサービス等の充実を求める声のほうが、はるかに大きいところであります。現在の出張所に代わるサービスの提供は十分可能でありましょうし、出張所の廃止によって歳出削減が進み、福祉施策の後退に少しでも歯止めがかけられるのであれば、多数の賛成は得られるはずなのであります。

 ところが、区は先に出張所の廃止ばかりを大きく打ち出してしまったために、現在、区民に不安感だけを抱かせる結果を起こしております。これは、明らかに区のリリースの仕方・打ち出し方が失敗しているのであります。順序としては、先に代替サービスの見通しを具体的に緻密に説明し、時間をおいて次に廃止提案をするべきでありましょう。

 ご記憶にあるかわかりませんが、審議中に、私は、区民が日常的に使うわけでもない施設・遠くにある立派な保養所や自然村を廃止する方針を打ち出していないのに、区民の日常生活に密着したところから手をつける方針を先に打ち出すのは優先順位が間違っている、というお話をさせていただきました。実際の進め方はともかく、もう少し人々の心の機微を読みとり、区民の理解が得られるような話のもって行き方をされるよう、留意していただきたいわけです。このあたりのパフォーマンスは、区長自身が最もお得意とするところでありますが、本来は職員の皆さんこそ、こうした姿勢を大いに見習っていただきたいところなのであります。

 これは決算説明のあり方や行革大綱ほか、区のパブリシティに至るまで全体に言えることですが、説明・アピールの仕方がいかにも官僚的といいましょうか、少々事務的で冷徹なイメージを感じております。杉並区は、せっかく政治家出身で全国的にも有名な、しかもパフォーマンスの実に上手な区長が新たに就任したわけですから、区長から多くを吸収し、効果的な説明・広報のあり方を検討していただきたいと思います。同じことをやるにしても、その表現と説明の仕方で、人々の感じ取り方は大きく異なってくるものであります。些細なところで、つまづいてもらいたくはありませんので、説明技術とでもいいましょうか、売り込み方というものをもう少しご研究いただければ幸いに存じます。


 (C福祉費の多くがハコモノ施設建設費に消えていくあり方は再検討すべき)


 第四に、相変わらず、区は介護需要・保育需要に対応することができておりませんが、今後は、学校の空き教室などの既存施設の積極的な転用を進め、対応を図るべきであります。また、むやみやたらに(ハコモノの)建設助成を行うことは、そろそろ再検討するべきであります。

 施設の建設のために新たに土地を求め、設計し、新築するというあり方は、時間ばかりが掛かる上に、今日の財政状況を考えてみても、負担が大きく、得策ではありません。医療福祉サービスについては、施設が豪華であれば、利用者が喜ぶというような単純なものではなく、そこでどのようなケアが行われているかが重要なのであり、今後のサービスのあり方についても、この点を十分にご配慮いただきたいと思います。

 また、現在のように福祉費の多くが、福祉施設費や建設費に消えていくこと自体、誠に残念なことでありますが、区がわざわざ法定外で建設助成をした施設であるにもかかわらず、区民の優先利用が進んでいないのは、さらに残念なことであります。現実的に対応に苦慮されているのはわかりますが、負担に応じた利用をすることができるよう、今後、より慎重な判断を望みます。


 (D杉並病の解消とゴミの減量・再資源化に向け、「杉並中継所をなくすための行動計画」の策定を!)


 第五に、ゴミの減量・再資源化に向けて、具体的に「杉並中継所をなくすための行動計画・アクションプラン」を、区民参加のもとで早期に策定するべきであると考えます。もちろん、区民にも徹底したゴミ減量に向けての協力を具体的に要請するべきであります。

 杉並中継所をめぐる問題については、私も都に情報公開を求めておりますが、都の姿勢は硬く、都のペースで話を進めていては、進む話も進められないという状況であり、もはや打つ手なしの状況であります。しかし、区長が、心底から杉並中継所をなくすことをお望みであれば、そろそろ具体的に道筋を立てていかなければなりません。清掃事業の区への移管は来年度に迫ってきているわけですから、対策は焦眉の急であります。

 実際に杉並中継所をなくすためには、区民の自覚と積極的な協力がカギであります。しかし、現実には多くの区民は、どのようにしたらよいものかわからず、指定された収集日に、ただ漫然とゴミや資源を出しているだけというような状況であります。これは区がISOを取得すれば解決するというような単純な問題とは異なり、早急に取り組んでいきませんと、いつまで経っても杉並中継所をなくすことなど不可能であります。

 実は、この件、過日の災害・環境問題対策特別委員会でも、要望させていただいた件ではありますが、残念ながら、この委員会への区長の参加がなく、また、いくら理事者のみなさんにこれを要望しても、ほとんど聞き入れてもらえないに等しい状況であります。ぜひ、区長にはリーダーシップを発揮していただき、「杉並中継所をなくすための行動計画」を、区民参加のもとで早期に検討し始めていただきたいと思います。話題になっている今ならば、多く区民の参加も得られることでありましょう。積極的な取り組みを要望いたします。


 (最後に)


 以上、決算審議を踏まえた上で、若干の要望を補足させていただきました。今後、区長がいうところの「介護・教育・環境」という3Kの水準を向上させていくためにも、まずは、財政再建に全力を挙げていただくことを願っております。なお、決算審議にあたりましては、実に多くのみなさんから資料提供等、ご協力をいただきました。最後に、この場をお借りいたしまして感謝申し上げ、私の意見開陳を終わらせていただきます。


 
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