杉並区が中小企業向けに提供していた福利厚生事業(通称:ジョイフル杉並)が、条例の定めるルールを無視した経営を続けていました。
参加資格のない企業が、ジョイフル杉並に不正に参加し続け、利益を受けていた重大な条例違反が、堀部やすしの独自調査により発覚したのです
◆ジョイフル杉並とは
杉並区が、杉並区勤労者福祉協会(区全額出資の外郭団体)を設立したのは、1992年のことでした。
区内中小の企業団体や個人事業主向けに福利厚生事業を提供することが目的でした(区職員OBの天下り再就職先ともなっていました)。
しかし、ピーク時こそ6,245人の会員を抱えていましたが、ニーズを失う中で会員の減少がとまらず、 外郭団体としては、2012年3月末で解散となりました。
ところが、外郭団体が解散となっても、事業は廃止されることなく、 杉並区がそのままの形で事業を引き継いだのです。
これにより、区職員が、その立場のまま直接その事務に従事することとなりました。
◆参加資格のない企業が不正参加
杉並区が、この「ジョイフル杉並」を引き継いだ2012年4月、その参加者数は3,115人まで落ち込んでいました。ピーク時に比べ、参加者数は半減していました。
杉並区内には約2万の事業所があり、その従業者数は約17万人です。その数から考えれば、この参加者数がいかに少ないかよくわかります。
本来は、参加者数が大幅に減少した時点で、そのあり方を抜本的に見直す経営判断が必要で、堀部やすしは、かねて議会でそう強く主張していました。
人々のライフスタイルも選好も多様化しています。税金を投入して、特定少数の参加者だけに東京ディズニーリゾートのチケットを安く融通するといった事業の継続が肯定できる時代でもないでしょう。
自治体としては、社会環境の変化を踏まえ、貧富を問わず不特定多数に福利厚生サービスを提供することよりも、むしろ深刻化する「こどもの貧困」などに支援の重点を移していくことが必要というべきでした。
しかし、その後も、ジョイフル杉並は漫然と継続され、事業は強引に維持されることとなりました。 事業の民営化が推進されていた時代背景の中で、それとは逆に区直営で事業を行うこと自体、極めて異例のケースでした。
その理由は、ジョイフル杉並の参加者の多くが、区の外郭団体、補助団体、委託先、保険給付先など、区の取引関係先であったことが影響していると考えられました。
ところが、実際には、それにとどまらない「闇」があったのです。
参加資格を持たない企業(区外でパチンコ・パチスロ店などを経営)が、ジョイフル杉並に団体参加し続け、利益を受けていたのです。
◆あからさまな条例違反
ジョイフル杉並を利用することができる者は、①区内に主たる事業所又は事務所を有し、②常時使用する従業員の数が300人以下の中小企業の代表者及び当該企業の従業員等と定められていました。
しかし、杉並区外でパチンコ・パチスロ店などを経営するS社は、これら双方の要件を全く満たさなくなっていたにもかかわらず、ジョイフル杉並に不正に参加し続け、利益を受けていたのです。
あからさまな「条例違反」もさることながら、民法703条・704条にいう「悪意の受益者」と判断するほかない状態でした。
当該企業は、2017年10月をもって脱退となり、職員にも懲戒処分が行われています(ただし、条例違反は平成24年度から発生しており、この懲戒処分の事実認定は肯定できません)。
◆「条例違反の利益供与」を認めた後も、 不当利得返還請求を怠っている杉並区長
堀部やすしは、以前より「ジョイフル杉並」に参加している企業団体の情報を提供するよう区に求めていました。
しかし、正当な理由もなく、過去これが徹底的に拒否されてきたのです。本来は、隠す理由のないものです。
あまりにも不自然であったため、 こだわって独自に調査したところ、これら一連の事実が発覚するところとなりました。本来、隠す理由のない情報を隠していた理由は、
これだったのです。
堀部やすしの追及により、当該企業は2017年10月末日をもって脱退させられましたが、課題は残り、区長はその後もまだ「後始末」をしていないままです。
杉並区長は「条例違反の利益供与」を認めた後も、 当該企業への不当利得返還請求を怠っているのです。
本当に利害関係がないのであれば、不当利得返還請求権を行使できるはずですが、なぜか放置されたままになっているのです。極めて不自然です。
◆任務懈怠の杉並区長を提訴
当時「ジョイフル杉並」参加者約3,000人の中で、S社の参加者数は全体の1割を超える300人超となっていました。
S社は長く参加者数1位の企業だったのです。
杉並区は、全く参加資格のない者のために、その事務経費を税から負担したうえで、各種サービス給付を行っていたのです。
不当利得について民法704条は「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければなら ない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。」と定めています。
この問題については、「条例違反」状態を是正するとともに、長く不正経営を続けていた特別会計についても廃止することができました。しかし、課題はまだ残っています。
関係者の悪意・重過失が明らかであることを踏まえ、杉並区長は不当利得返還請求権の行使など必要な措置を講じなければなりません。
堀部やすしは、課題解決に向けて、さらに取り組みを前に進めていきます。
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2019.4
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