5)いま必要な「コンプライアンス」の確立
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田中良区長は、以前より、区が補助金を支給している相手方など「利害関係者」にパーティー券を売り付ける形で、定期的に大規模な政治資金パーティーを開催してきました。 しかし、田中良氏といえば、かつて都議会の場で、石原都知事による政治資金パーティーの開催を厳しく批判していた方です。 そうであるにもかかわらず、実際には石原都知事と同じように「行政の長」の職を背景に、大規模な政治資金パーティーを定期的に開催しているのは、なぜでしょうか。 |
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驚きの「区長ゴルフコンペ」 田中区長の政治資金パーティーは、田中区長本人が代表者となっている「東京良友会」と、後援者が代表を務める「杉並を良くする会」との共催で行われています。 これと同様の形で、田中区長を中心とした「ゴルフ会」が定期的に開催されていることに注目したいと思います。 関係者の間で、このゴルフ会は「区長のゴルフコンペ」と言われていましたので、以下「区長ゴルフコンペ」と表記します。
関係者よりご提供いただいた情報から、区長ゴルフコンペの参加者を確認して驚きました。 東京良友会・杉良会「秋のゴルフ会」の参加者の多くが、区の公金が支出されている取引先の関係者(利害関係者)だったのです。 東京良友会ゴルフ実行委員会の実行委員長は、区の仕事を受けている有名な造園業者。競技委員長も、これまた区の仕事を受けている有名な電気設備工事業者。その他、多くの参加者が、区の補助、委託、請負、指定、許認可等の相手方など利害関係者となっていたのです。 「OB・池ポチャ・4パット以上の場合、それぞれ罰金500円」と堂々と記載されていたことにも驚きました。 最も驚いたのは、杉並区の「契約担当者」として仕事をしている区職員が、このゴルフコンペに参加していたことでした。 ゴルフコンペの参加者が所属している企業の中には、過去の入札において、とりわけ有利に指名されていた企業も含まれていたのです(この問題は、議会審議の中で、個別具体的に指摘しています)。 |
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コンプライアンスのあり方が問われる杉並区の現状 区の契約担当者が、入札・契約の相手方(利害関係者)との接触のあり方に全く注意を払っていない事実は衝撃的でした。 国家公務員の場合、事務次官をはじめとする管理監督者・契約担当者が、民間の利害関係者と一緒に旅行、ゴルフ、マージャンなどをしていれば、懲戒処分の対象となります(国家公務員倫理法・国家公務員倫理規程)。 これは、過去の公務員不祥事の実態を踏まえて定められたルールです。契約担当官の行動には、とりわけ慎重さが要請されているのです。 区長ゴルフコンペの組み合わせ表は、開催前に参加者にメール送信されていました。各自のスタート時間等を事前にお知らせするためです。 これに目を通していれば、利害関係者が多数参加するゴルフコンペであること、かつ、利害関係者と同じ組でゴルフコースを回ることは、事前に容易に把握することができたのです。 |
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国家公務員なら「懲戒処分」の対象に 杉並区においては、例えば、1億5千万円未満の工事(請負契約)は、議会の議決が不要となっています。 このレベルの契約は、仮契約となることなく、契約担当者(区職員)が契約した時点で、そのまま契約が成立するのです。 したがって、その入札要件の設定から契約までの権限を持つ「契約担当者」は、契約の相手方(利害関係者)との接触について細心の注意を払うとともに、その行動についても誤解を招くことのないようにしなければなりません。 この点、国家公務員の場合、安易な対応は認められていません(国家公務員倫理法・国家公務員倫理規程)。過去の公務員不祥事において、利害関係者と私的に深く接触した契約担当官が、不公正な取引に加担していた事例がさまざま確認されているためです。 それゆえに、国家公務員の場合は、明確に「懲戒処分」の対象とされているのです。 杉並区職員(契約担当者)の倫理行動基準についても、国家公務員と同様に厳格化を図らなければなりません。 利害関係者とともに行われているゴルフコンペに区職員(契約担当者)が参加していた実態について、議会で繰り返し問いただしましたが、当事者(契約担当者)は開き直るばかりであり、全く反省の色が見えなかったのが印象的でした。 |
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田中良氏自ら過去に語っていた「パーティーのからくり」 杉並区と契約関係にある業者など利害関係者が、区長のゴルフコンペに多数参加しているところをみると、区長の政治資金パーティーにおける「パーティー券の大口購入者」についても、容易に想像がつくというものです。 政治資金パーティーは、実質的にみて企業・団体献金の受け皿も同然であり、その「隠れ蓑」として使われているとの指摘があります。 田中良区長の古い著書『実録!東京都議会議員 私はこうして闘った』95ページ以降にも「パーティーのからくり」と題する一節があり、本人自らこの点を詳しく解説しています。
田中良氏は、都議時代から、政治資金パーティーこそ、深刻な問題を抱えていると熟知していたのです。 |
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通常の政治献金と同様に パーティー券の「大口購入者」も公表を たとえば、平成23年3月8日の田中良区長就任を祝う会(政治資金パーティー)は、1,771万円の収入が確認されていました。 パーティ券は1枚1万円。しかし、報告書によれば、その購入者数は「912」となっています。 複数枚のパーティー券を購入されている方が、少なからず存在していることがよくわかります。 これは、その後も毎年同様です。 平成28年4月27日の田中良区長を囲む会(政治資金パーティー)は、ちょうど1,250万円の売り上げが確認されていました。 報告書によれば、購入者数は「830」です。パーティ券は1枚1万円でしたので、ここにも複数枚の購入者がいたことがわかります。 田中良区長の前掲著書には、パーティー券の買い手(業界や企業側)と売り手(政治家)の関係について、非常に興味深い内容が書かれていますので、紹介しておきましょう。
これは田中良氏本人が書いていたことなのです。 実際に売上金額と購入者数が一致していないことからも明らかなように、複数枚を購入している購入者がいることは明らかです。 平日の昼間に区長ゴルフコンペに参加できる利害関係者の中に、そのような大口購入者がいるとみるのが、状況からみて自然でしょう。 通常の政治献金と同様の水準で、つまり、合計5万円を超えるパーティー券購入者の情報について自ら公表し、疑惑を払拭されたらよいのではないでしょうか。 これに対する田中良区長の回答は「くだらない」「報告する義務はない」というものでした。 |
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自治体における「内部統制の整備」は、首長の責務 会社法が「内部統制」システムの整備を義務化(法制化)したのは、もう10年以上も前のことです。 内部統制の基本となるコンプライアンスの確立とは「果たすべき務めを果たすこと」。2017年に成立した改正地方自治法も「内部統制の強化」が焦点の一つでした。対応が必要です。 強制徴収されている税金によって運営されている政府・自治体は、民間企業以上にコンプライアンスのあり方が問われます。 このままでは部下に示しがつきません。杉並区長は、内部統制システムを構築する責務があります。区長を含む経営陣は、公務の遂行において「公私混同のない人」を選びたいものです。 |
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