杉並区長選挙を契機に考えたい「杉並区政の課題2018」/杉並区議会議員(無所属)堀部やすし
2)【五輪】たばこ受動喫煙防止対策
  • 田中良区長就任後、堂々と灰皿が置かれていた区長室
  • IOCとWHOが合意している「たばこのないオリンピック」
  • 五輪開催都市に相応しい受動喫煙防止対策が必要
 2020年オリンピック東京大会の開催が迫ってきました。これに伴う受動喫煙防止対策の必要性は、招致活動当時よりわかっていた課題ですが、いまなお対策が遅れています。

 このような中で、東京都が「従業員を雇用しない飲食店を除き原則屋内禁煙」とする方針を発表したところ、さっそく田中良区長が強く反発したのです。いくつかの新聞報道で確認することができます。


 堂々と灰皿を置いていた田中良区長


 田中良区長(元民主党・都議会議長)が杉並区長に就任した当初、区長応接室には、堂々と灰皿が置いてありました。

 庁内のルールを逸脱するものでしたが、こちらが議会で指摘するまで放置されていたのです(平成25年9月11日杉並区議会本会議)。


 驚くべきことに、その後も、田中良区長は、次のように発言しています(平成26年3月10日杉並区議会予算特別委員会)。


 五輪開催都市となった東京は、五輪主催者であるIOCとWHOの合意に従って、たばこのない五輪を実現する責務があります。

 五輪開催都市となるにあたっては、東京23区関係機関それぞれ招致決議などをあげ、これを熱心に後押ししていたのであって、その責任は、都も区も共有すべきものです。

 杉並区も、今後、五輪キャンプ地に立候補する予定であるほか、五輪を利用して来街者を増やすことも模索しているところであり、従来の延長でたばこ対策を考えることはできません。
 IOCは「たばこのない五輪」を明確に標榜している


 第1に、IOC(国際オリンピック委員会)は、明確に「たばこのないオリンピック」を標榜しています。

 IOCは、1988年以降オリンピックでの禁煙方針を採択し、たばこ産業のスポンサーシップを拒否しています。また、2010年7月には、WHO(世界保健機関)とIOCとの間で、たばこのないオリンピックを目指す合意も締結されています。

 これを受けて、その後のオリンピック開催都市は建物内禁煙(原則屋内禁煙)とされており、今やそれが徹底されることはあっても緩和される傾向にはありません。

 オリンピックはIOCが主催者です。東京都は好きこのんで立候補し、たばこのないオリンピックの開催都市となりました。

 開催都市となるにあたっては、23区議会も招致決議を上げ、これを後押しをしていました。

 たばこのないオリンピックは、招致前から厳然と定まっていたIOCの方針なのであって、自ら好んで開催都市となっていながら、今さら抜け穴を設けようとするのは非常識というものです。

 五輪招致を進め開催を実現させたからには、WHOとIOCの方針に従って建物内禁煙を推進するのは、当然の責務というべきでしょう。喫煙権の侵害だと主張するような向きもあるようなのですが、だったら、なぜ五輪招致に熱を上げていたのか、ということです。

 オリンピックも楽しみたいが、たばこも自由に吸いたいなどというのは、五輪開催都市では全く通用しない理屈です。
 日本も批准している「WHOたばこ規制枠組条約」


 第2に、WHOたばこ規制枠組条約が、2003年の世界保健総会において全会一致で採択されており、日本もこれを批准した上で2005年に発効している点も重要です。

 ここには「たばこの煙にさらされることからの保護」が明確にうたわれており、その中には、「たばこの煙にさらされることが死亡、疾病及び障害を引き起こすことが科学的証拠により明白に証明されている」と記載されているところです。

 2007年には、同条約8条を根拠に、たばこの煙にさらされることからの保護に関するガイドラインが、外務省、財務省及び厚生労働省で構成される代表団が参加する中、策定されています。

 ここには100%禁煙以外の措置、換気、喫煙区域の使用は不完全であるとして、喫煙室や空気清浄機の使用では受動喫煙を防止することができないことが確認されています。

 日本政府みずから批准した条約に記載のある内容であり、このガイドラインもまた、日本政府代表団が参加した上で策定されているものです。

 このことを棚に上げて、単に分煙補助事業さえ実施していれば、それでよいなどといった主張をするわけにはいかないでしょう。

 オリンピック招致前ならいざ知らず、正式に五輪開催都市となったからには、姿勢そのものを改めなければならない状況にあります。
 五輪開催都市として漸進的な対応はもはや許されない



 2018年2月23日東京新聞朝刊から
 このように、2020年を目前に控えた今、受動喫煙防止対策については、もはや漸進的な取り組みは認められない段階にあります。

 全国一律に適用される健康増進法改正案が五輪開催都市に相応しい内容を持つものではない場合、東京都が独自に相応の内容の条例を定めることは、五輪開催都市として当然の責務というべきです。


 五輪開催地とならない府県はともかく「五輪開催都市である東京」は、この課題に後ろ向きであってはならない立場にあります。

 したがって、五輪開催都市・キャンプ地として相応しい受動喫煙防止対策を推進するとともに、禁煙治療を強力に後押しする政策誘導が不可欠です。

 妊産婦と同居する配偶者などの禁煙治療を促進するため、時限的にその自己負担費用の一部助成を実施するなど、積極的にムーブメントを盛り上げていくことを含め、幅広い対策を考える必要があります。

 五輪開催都市である以上、杉並区もそれに相応しい対応を行っていく必要があります。従業員を雇用しない飲食店を除き原則屋内禁煙を推進することなどは、好むと好まざるとに関わらず、もはや受け入れなければならない課題です。

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