岩波新書に『変革期の地方自治法』という本があります(2012年1月20日初版発行)。
東京都立大学名誉教授の兼子仁先生のご著書です。この中に、2002年(平成14年)、日本で最初に制定された「自治基本条例」として、杉並区自治基本条例の全文が掲載されています。
ただし、この初版に掲載されていた条文は、改正後の現行条例ではなく、2002年制定当時の旧条例となっています。 |
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あまり知られていないことですが、実は、この改正前の古い「杉並区自治基本条例」には、大きなミスがありました。
まず、当時の条例を確認して見ていただければと思います(杉並区自治基本条例の改正履歴)
誰にでも理解できます。旧条例の第3章(4条・5条)と第4章(6条)とを比較して確認してみてください。
明らかに「見出し」と「条文」の内容に不整合があるのです。
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第4章の見出しは、「事業者の権利及び責務」でした。しかし、第6条の条文中に「責務」という用語は全く出てきません。(「義務」という用語は出てきます)
一方、第3章の見出しは、「区民の権利及び義務」となっており、第4条及び第5条の条文の中で使われている用語も「権利」「義務」で統一されていました。
つまり、旧条例は、各章の見出しに「権利及び義務」と「権利及び責務」という2種類の言い回しを用いていたものの、それとは整合しない条文を定めていたわけです。
日本初となる自治基本条例は、こんな日本初の過ちを犯していました。 この問題は、2002年自治基本条例の制定当時(委員会における修正審議の際)、議会の中で私が強く指摘した点です。
しかし、いわば強行採決で、そのまま制定へ…。情けないやら、悲しいやら、忘れられない思い出です。
杉並区自治基本条例は、その後7年間そのまま改正されることはありませんでした。とかく人の世は難しい、ですね。
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