杉並区議会議員(無所属)堀部やすし最前線
田中良区長による「新しい杉並」/初議会の教育委員人事
平成22年(2010年)7月30日


 トリプル選挙(参院選・杉並区長選・区議補選)の後、初となる国会・区議会(本会議)が招集された。

 杉並区議会においては、複数の人事案件が議題に。2名の欠員が発生していた教育委員人事については、女性2名が提案された(候補者の概要)。私は、この2名のうち、1名の人事に反対した。

 その主たる理由は次の3点である。いずれも軽視できない問題だと私は考えている。(なお、人事は賛成多数で即日可決)

   1.いま必要な人材は「即戦力」 (小学校の教科書採択は来月8月に迫っている)
   2.任命のあり方に対する疑問 (新区長のいう「教育の公正中立」に対する疑問)
   3.教育委員会 あまりにもアンバランスな年齢構成


1.いま必要な人材は「即戦力」 (小学校の教科書採択は来月8月に迫っている)

 この8月、教育委員は、来年度の「小学校教科書」を採択する仕事を行うことになっている。

 新任の教育委員にとっては、初仕事から大仕事を抱えているのである。本日すでに7月30日であることを考えると、新任の教育委員は、就任後ごくわずかの時間で、それぞれの教科書の是非を判断しなければならない。

 そこで、新委員の任命にあたっては、「この短期間で数多くの教科書に目を通し、その是非を判断する能力があるか否か」検討する必要があった。

 小学校の教科書採択は、本当に大変な仕事だ。

 中学校とは異なり、学年も多く、科目数も多い。数多くの教科書を比較対照し、吟味しなければならない。その教科書の数を考えると、頭がくらくらする。暑い中、休み返上で対応する必要があるだろう。

 これは教科書に精通している専門家であっても、決して楽な仕事ではない。短期間に誰にでもできるような仕事ではないのである。

 この点、候補者TH氏は、現在、ある区立校で学校司書をされている方であった。図書資料等に精通しているという点では、いちおう「即戦力」として働いていただけることだろう。

 だが、私が疑問に感じた候補者TN氏については、この点がはっきりしなかった。

 しかも、この方の場合、現役小中学生の保護者ではないことから、いわゆる「保護者枠」で特別に教育委員に任命されるわけでもない。そうであれば、いっそう高い識見が求められるべきだが、新区長に質問しても、この点に関する能力実証は「面談等を通じて判断した」と述べるにとどまった。

 この方が素晴らしい人物であることは、方々の評判を通じて理解しているつもりである。地域からの信頼も厚いようだ。しかし、現実問題として、小学校の教科書採択は目前に迫っている。採択日まで時間をかけてゆっくりと知識経験を培っていく・・・そんな時間的余裕は全くないのだ。

 いま必要な人材は「即戦力」。残念ながら、そのための能力実証が十分であると判断することはできなかった。

2.任命のあり方に対する疑問 (新区長のいう「教育の公正中立」に対する疑問)

 私が疑問に感じた候補者は、現在、数多くの公職に就任している。

 具体的には、ある区立中学校の学校運営協議会委員(会長職務代理)、保護司、民生児童委員、青少年育成委員会委員などである。

 そこで、「教育委員就任後、現在就任している数々の公職はどうなるのか」と質問したところ、新区長からは「辞職するか否かは、本人に任せている。辞めるよう言うことはない。」との答弁が返ってきた。辞める必要はない、との判断である。

 しかし、就任されている公職の中には、教育委員と兼職することで「利益相反」または「利益誘導」を発生させる疑いのある職もある。

 たとえば、「教育委員会の委員」としての職責と「特定校の学校運営協議会の委員」としての職責をよく考えてみればいいだろう。このような職については、教育委員就任とともに辞職することを前提として(条件として)、内示・内定すべきである。

 残念ながら、今回そのような対応は行われず、今後に課題が残った。新区長は「教育の公正中立」を殊更に強調して当選された方であるが、これでは公正中立とはいえない。

 今からの対応でも遅くないので、兼職の範囲を限定すべきだろう(これは兼業兼職のすべてがいけないと言っているのではない)。公正中立というなら、利益相反または利益誘導を発生させる疑いのある兼職については辞職してもらうべきである。

3.教育委員会 あまりにもアンバランスな年齢構成

 教育委員会委員の年齢構成は、現在70歳代が2名、60歳代が1名である。

 このうち70歳代の委員は、任期中に80歳に到達する。

 このような年齢構成の中で、さらに60歳代の委員を新たに任命することには強い疑問がある。これは、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(地教行法)4条4項の規定に反する。

 杉並区教育委員会が所管しているのは、小学校・中学校行政が中心である。そんな小学生・中学生からみると、教育委員は「おじいちゃん」「おばあちゃん」ばかりなのだ。教育委員を定年後の名誉職と位置づけるのは、そろそろ改めるべきだろう。

 小学生・中学生の保護者の多くが、30歳代〜40歳代であることを考えても、委員の年齢構成の歪さは否めない。大所高所から意見する高齢者の存在も大切だが、そのような人ばかりではなく、もう少し若い世代の委員も登用していかなければならない。

 新区長は「新しい杉並の実現」というが、新しい杉並の実現は、世代交代から始めるべきではないのか。教育委員を「上がり」のポストとするのは適切でないと考える。

 教育委員の定数は5人。今回の人事では、そのうち4人までが60〜70歳代となっている。このようなアンバランスな年齢構成は、地教行法の規定に抵触しているとの自覚を持つ必要がある。




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