杉並区に日本初となる「減税基金」条例が誕生しました。山田宏区長の提唱する「減税自治体構想」を現実化するための器となる基金です。
財政力指数が「1未満」の杉並区が、この理想を達成するには法制度的に乗り越えなければならない数多くの課題がありますが、とにもかくにも杉並区はその第一歩を踏み出すことになりました。
その成否は未知数といえますが、現時点における課題を解説します。
1.(はじめに)杉並区の財政力指数は「1未満」
2.減税自治体構想とは
減税基金の新設/新年度予算の現状は
3.【課題1】◆まだ区債ゼロが未達成/高利・残債務の問題
高利負債の圧縮を後回しにするのは問題
「借金返済による利払い減(年6%台)」と「年1.5%の利子収入」 どちらが得?
4.【課題2】◆地方自治法上の問題
今のような都区財政調整制度がある限り、杉並区の勝ち逃げはありえない
地方自治法上の限界 特別区制度
5.【課題3】◆地方財政法上の問題/老朽化する社会資本
施設整備基金への積立計画がない杉並区の現状
区立校67校中約50校が近く築50年ほか課題山積
6.【課題4】◆地方税課税原則上の問題(続編)
7.【課題5】◆東京23区の将来の問題(続編)
地方自治体の財政力を示す指標(各自治体の財政力を同じ尺度で測るために指数化された公式統計)です。
この数字が「1」以上であれば、その自治体は、自らの税収によって、一般標準的な行政運営を行う財政力を有していることになります。
普通地方公共団体の場合、財政力指数が「1」未満の場合、国による地方交付税の交付対象になります。国から特段の財政支援があるということです。
特別区(東京23区)の場合は、東京都と財政が一体化しているため、各区はその財政状況を問わず地方交付税の不交付団体となっています。そこで、相対的に財政力の弱い区には、東京都が特別区財政交付金(都区財政調整交付金)を手厚く交付することで、それに代わる財政調整が行われています。
杉並区の財政力指数は0.6です。お隣の武蔵野市は1.6であり、港区は1.2です(平成20年度)。詳しくは総務省のページなどで毎年一覧を確認することができます。
なお、杉並区決算では、この数年500〜600億円の区税収入に対し、都区財政調整交付金(収入)が350〜400億円となっています。
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