偏向した議席配分が失政を産む |
議席配分に多少の格差が出ることは、やむを得ないことかもしれない。技術的なことを考えれば、現状では杓子定規にピッタリ1倍にせよ、などというつもりはない。だが、いくらなんでも人口比5倍もの格差は、どんなものだろうか。
憲法でいえば、14条や15条(法の下の平等、普通選挙の保障)などは民主主義の原点とも言える規定であるが、これを無視し、5倍もの定数格差を放置してきたことによって、日本の政治が実際に歪められてきたことを忘れてはならない。
これまで地方・農村に手厚い議席配分によって、地方農村部選出の国会議員の発言権は、非常に強いものがあった。北陸や山陰などの実情を考えてみればいい。彼らはまず落選しないので、その人口の割には大臣になった者の数も多く、出世している議員が多い。
近年の首相経験者や自民党内の有力議員を思い出してみても、都市選出議員は実に少ない。他地域に比べ、議席が少なく、連続当選が困難だったからである。その結果、与党内の「実力者」といわれる国会議員のほとんどが地方選出議員となってきたわけである。
その実態に合わせるようにして、地方で次々と需要の低い公共事業が進められてきた。
実力者に対して、相応の(お手盛り的な)予算配分が存在してきたわけだ。しかし、その結果できた妙な道路やら空港やら保養所やらの成果は見るも無惨なものが少なくない。
今回の選挙結果は、6年間有効である。自民党の影の実力者(参議院幹事長)も、今回、島根選挙区で再選された。今後6年間、再びこのような矛盾した選挙(議席配分)で選ばれた議員が国を左右することになる・・・・
ちなみに、私は地方の生まれ育ちである。だから、昔はむしろ地方から偉大な政治家が多数出現していたことを知らないわけでもない。
たとえば、親中派でありながらも、中国に対して毅然とした態度をとっていた故・松村謙三代議士などは、私の郷里を代表する素晴らしい政治家である。尊敬に値する政治家もいたはずなのだ。
地方だから悪い議員が輩出されてくるというわけではなく、選ばれてくる政治家の質については、そう大きな地域差はないと思うのだ。
ただ、最近は、人口実勢に見合った議席配分になっていないがために、「需要」に見合った投資が行われてこなかっただけなのである。早く抜本的な定数是正をし、地方からも再び偉大な政治家が生まれてくるような環境を整備していくべきだと切に思う。
具体的には、選挙区については、都道府県代表ではなく、せめて東北、九州といったブロック単位の代表とすべきである。当然、将来的には道州制と連動させ、各道州の代表とすべきだ。そのうえで、議席配分は人口に比例させるべきである。
ちなみに、最高裁は、参院選半年前という微妙な時期に、異例の警告をする形で判決を出したが、それでも国会でまともな議論が行われた形跡は残っていない。国会は全く機能していないのである。これでは、もはや違憲立法審査権を持つ裁判所に期待するしかないのである。
今回の年金改革法を確認してみても矛盾だらけだったが、この問題は、それに輪をかけて矛盾が強いものではないだろうか。これだって立派な「差別」ではないのか。日ごろは差別問題にうるさい人たちも、なぜかこの問題には深い関心を示さないが、本当に不思議なことである。
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