裁判所の判断は |
さすがに矛盾だらけの現行制度なので、選挙制度については、これまでも数々の訴訟が提起されてきた。
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しかし、裁判所は混乱を避けたいために、「国会の裁量権の範囲内」と判断したり、「違憲ではあるが選挙自体は有効」という奇妙な事情判決を生み出し、なぁなぁのまま今日まで課題を放置させてきたのである。 |
写真は、法務省と東京高裁&地裁 |
だが、それは昨年までの話だ。今年1月の最高裁判決では、様相が明らかに変わってきたといえるのである。
まず、15人の裁判官のうち、前回の参院選は有効(合憲)だったと判断した裁判官は9人。無効(違憲)だったと判断した裁判官は6人となった。その差は従来より接近している。
しかも、有効(合憲)と判断した9人の裁判官のうちの4人が、かなり踏み込んだ発言を補足意見の中で表明しており、このまま次の選挙に行けば、違憲判決を下す可能性が高いことが強く読み取れる内容になっているのである。
詳細は、最高裁H16.1.14大法廷判決 平成15(行ツ)24選挙無効請求事件(判例集)に詳しい。結果が変わらないので目新しい判決ではないという意見もあるが、最高裁の立場としては、かなり頑張ったのではないだろうか。
もちろん、行政訴訟の9割以上を原告敗訴に終わらせている最高裁が、今後、本当に国会や行政(内閣)に厳しい判決を出すことができるかといえば、疑問ではある。
しかし、参院選の直前に、ここまでハッキリ判決文に直前警告が書かれていた以上、(もし今回の選挙をもとに、新たな訴えが提起されることがあれば)、今度こそ違憲宣言をするか、無効にするかしなければ、説明がつかないだろう。
参院選においては、かりに選挙無効の判決をしても、その対象は改選された選挙区議員だけである。衆議院議員や残りの参議院議員(比例代表選出議員と半数の非改選議員)は無関係なのだから、この間も国会は活動できる。選挙の無効をタブーとする必要はないはずなのである。
人口比5倍を超える格差を正当化できるか |
いうまでもなく、参議院がスタートした当初の議席数は、各地域人口割で、ほぼ平等になっていた。都市化の進行とともに、人口が流動していったが、それに対して何ら抜本的な改革をしなかったので、格差が拡大していったわけだ。
たしかに、「地方の声を届けるため」という理由には、一定の配慮をする必要があるだろう。しかし、そう言ってしまえば、大都市も同じことである。
大都市であるからこそ、多様な立場・職業・身分・門地・人種が住んでいるのであり、それぞれ実に多様な意見を持っている。しかも、大都市部においては、ムラ社会の論理が通用しなくなってきているのだから、お互いの利害調整作業も、簡単ではない。それに見合うだけの人数の代表者を送り出す必要がある・・・などと言い出したら、どうなるのだろうか。
よく「議員の数は多すぎる」といいながら、「地元の議員だけは例外にしてほしい」という身勝手な意見が各地で主張されることがあるが、そんな都合の良い理屈が成り立つわけはないのである。
多少の政策的な配慮は許せるとしても、5倍を超える格差はあまりにも大きすぎるだろう。これほどの地域格差を認めるのなら、納税額による格差も認めろという笑い話があったが、だんだん笑い事では済まなくなってきたように思う。
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