9.これで年金改革を終わりにさせないために |
年金はそれこそ「国家百年の計」なのだから、改革が失敗に終わるわけにはいかない。まもなく政府与党案が衆議院で可決するようだが、参議院では、これまで指摘してきた諸問題点について、よくよく時間をかけて議論してほしいと思う。
そのほかにも、とくに年金一元化の議論が今後本格化していくと思うが、その際には納税者番号制についても、タブーとすることなく議論していかなければならないと思う。民主党の提案していた年金一元化案は、概ね合理的な提案だとは思うが、この点が不明確である。これも冷静に議論を深めることが必要なテーマだ。
なにしろ年金一元化の方針は、すでに昭和59年に閣議決定されていたことで、これまで延々と先延ばしされてきたのである。何も目新しい話ではない。
昔から誰もが必要と考えながら、官僚や族議員の強い抵抗に負けてきただけのことなのだが、ここまで未納者が激増してしまうと、もう一定の結論を出していかなければならない段階である。
ただ、年金一元化は、すでに恵まれている公務員にとっては、何らメリットのない制度改正ともいえる。(だから、話が進まないわけだ)
したがって、政府与党がどこまで本気取り組むかは全くあてならないし、さりとて民主党も、公務員の労働組合から物心金票の各側面で支援を受けているだけに、どこまで本気で年金一元化を主張しているのか、よくわからないところがある。ここでも世論の強い後押しが必要だ。
また、この機会に年金だけでなく、広く公金徴収のあり方も見直さなければならないと思う。
国民年金は、かつて区市町村が基本的に徴収を担当していたが、それが数年前より社会保険庁(具体的には各地の社会保険事務所)が直接に担当することになった。その後、ますます徴収率が落ちている。社会保険庁は、地域に根ざした拠点(滞納整理活動の拠点)が極端に少ないことも一因のようだ。
改めて考えてみると、国税は税務署、都税は都税事務所、区税は区役所、年金は社会保険事務所・・・要するに、徴収担当者がバラバラになってしまっていることがわかる。
もし、これらを効率化して、徴収事務・滞納整理を合理化することができたら、徴収コストを下げることもでき、その分しっかり督促することもできるようになるはずなのである。
これまで各省庁間や国地方間の「利権の縄張り争い」で、税制(毎年の特措法etc)も、保険制度(介護保険etc)も複雑になってきたが、そろそろシンプルかつ低コストで運営できることを基本とした制度設計に切り替えていかなければならない。
これは官僚の利権に踏み込むのだから、官僚主導では絶対に実現不可能である。世論の圧力と政治家の判断で変えていくしかないはずなのだ。
たしかに、「将来、年金はいくらもらえるのか?本当にもらえるのか?」「大臣ですら払ってない年金なのに払えるか!」「国会議員の未納状況を公開すべき」という興味の持ち方も大事なことではある。
未納者叩きもそれはそれで必要なことかもしれないが、それだけに終わらず、早く必要な議論ができるような環境になってほしいと思う。自分の支払った年金資金がどのように運用されて、それがどのように活かされているか知るようにならなければ、問題の核心は見えてこないはずなのだ。
徴収した年金資金の行方(昔より融資先となっている数々の特殊法人の実態と今後の経営見通し。株式購入先となっている具体的な企業名。銘柄選定や購入基準)、年金制度維持のための徴収事務コスト・・・・
それらのいずれも、まだ一般には知られていないし、知ろうとする人も少ない。これらは年金と無関係の話ではなく、重要な年金改革の争点である。
|