4.国が株主になると、どうなるか? |
年金資金を使って「株」を買った国が、陰に陽に株主としての権利をチラつかせるようになれば、それはもはや「純粋な民間企業」ではなくなってしまうということである。だって、国家機関が株主になるのだから。
年金資金による株式市場操作疑惑もさることながら、最大の問題は、ここにある。企業も、株価維持のためには、大口投資家に売却されてはかなわない。なんと言っても、総額150兆円からの年金資金を運用している投資家相手では・・・。
ちなみに、日本銀行の総資産は130兆円。そう考えれば、年金官僚がいかに大きな影響力を持っているか、わかる数字である。
このような大口投資家である国家機関が、もし強い姿勢で株主議決権を行使するようなことがあれば、民業に介入していることがより明確になってしまう。
公営企業が民営化を進める過渡期ならともかく、それまで純粋な民間企業として経営していた会社に対してまで、国家機関が株の保有を通じて影響力を発揮するのは、あまり好ましいことではないだろう。
さりとて、大口投資家が会社経営に無関心で議決権を行使しない姿勢を明確にしてしまうのも、どうかと思う。それでは今度は株主チェックが甘くなってしまうだけで、株式会社制度の理念からは遠く離れてしまう。民間の投資家がどのような意図で株を買おうと勝手とは思うが、国家機関がそれを推進するかのような姿勢をとるのは、あまり好ましい姿とは思えない。
どちらにせよ矛盾だらけなのである。
したがって、政府機関が民間企業の株主の一角を占めるようになると、なぁなぁになってしまい、その会社は、事実上「国家のファミリー企業の一種」になってしまいかねない。この数年の株価低迷で、年金資金が株価維持(PKO)に使われた可能性が高いことを考えても、この懸念は全くの杞憂ではないはずだ。
これでは(1)不自然な「天下り」、(2)不合理な経済的規制、(3)官僚や特定政治家の影響力の拡大・・・といった悪しき既得権(特権)の数々が解体されないまま、より悪い形で生き残ってしまう危険性がある。
このようなものは、運用損を出して、国民が損をしてまで、守るべき価値のあるものなのだろうか?
繰り返そう。国家機関が民間企業の株を買うということは、国が次々と民間企業の株主になる(公営企業化する)ということと同義だ。
そんな国を一般に「社会主義国」と呼ぶはずだが・・・(違いますか?)
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