動き出した?杉並区議会の議会改革(2) 議長提案「議会運営に関する新たなルール」を考える/杉並区議会議員(無所属)堀部やすし
 杉並区議会議員 堀部やすし 堀部やすし ツイッター 2011年(平成23年)8月2日

 改選後、新たに就任した杉並区議会議長より「議会運営に関する新たなルール(案)」9項目が提案されてきました(平成23年7月15日付文書)。

 しかし、本質的な議会改革の必要性を主張している私の目から見ると、提案内容には、数多くの課題があると考えるため、以下のとおり意見を表明しました。

一.はじめに
 1)議会改革の前提について

 議会は、憲法93条及び地方自治法により「議事機関」であると位置づけられており、これを受けて杉並区自治基本条例においても「自由かつ活発な討議」が求められているところです。

 しかし、「自由かつ活発な討議」は未だに制約されたままであり、自治基本条例の当該規定は半ば空文化しています。本会議及び各委員会は、単なる意見開陳会や単なる表決の場ではないのであって、あくまで「議員間討議」を行う場であることを再認識する必要があります。

 特に実質的な討議を非公開または非公式の場で行うことは不適当であり、意思形成過程の透明化を図ることが必要です。

 2)委員会中心主義の考え方について

 このような状態の中、このたび議長より委員会中心主義を徹底させたいとの意向から、9項目にわたる議長提案が示されました。

 委員会による下審査及び下調査を議決の前提とする委員会中心の考え方自体は不合理なものではありません。

 しかし、委員会中心主義とは、委員会の審査及び調査の結果をもとに、本会議で質疑・討論・採決をすることであって、本会議における議論の形骸化を認める考え方ではないというべきです。

 @委員会においては一問一答が徹底されているとともに再質問について原則回数制限がないこと、A公聴会の開催及び参考人招致をすることができるのは委員会だけであること等の特徴から、委員会審査の自由度は高く、その活動には高い柔軟性があります。

 こうした特徴を踏まえ、充実した委員会活動を進めることが重要と考えます。

 3)本会議の活性化について

 しかし、委員会中心主義を徹底させるという名目で、本会議における議論の重要性が忘れ去られるとすれば、本末転倒です。

 議案等は、あくまで本会議における質疑及び討論を経て議決されるものです。

 議場とは、討議を行う場所の意味であり、本会議はその名に恥じない議事運営を進めていかなければなりません。議長におかれても、本会議における議論を活性化させることについて意識をもっていただきたいと強く願っています。

 たとえば、討論とは1回意見を述べれば終わるようなものではなく、また議案を提出した議員であっても討論に参加する資格があるものですが、歴代の議長は、会議規則等に定めのある「討論」を勝手に「意見開陳」にすり替え、ルールを骨抜きにしてきました。

 委員会中心主義を名目として、このような本会議の形骸化を放置継続強化することのないよう要請するものです。

二.議長提案について
 1)会期等の決定について

 議長より示された新たなルール(案)によると「少数会派の議員が会期等に対し意見がある場合は、議会運営委員会に委員外議員として出席し意見の開陳を行う。」とあります。

 しかし、議会の会期は、議会運営委員会ではなく本会議で決定されるものです。委員会は、本会議の下審査機関に過ぎないのであり、あくまで正式な意思決定の場は本会議であると認識する必要があります。

 したがって、本会議で意見を述べる機会を設けるのは当然であり、意思決定の場である本会議での議論を活性化させる観点から問題があります。

 2)特別委員会委員長報告について

 議長より示された新たなルール(案)によると「本会議における特別委員会委員長報告については、これまでの口頭による報告から、紙面による活動報告書の配付に変更する」とあります。

 しかし、各議員は本会議における委員長報告に対して質疑を行う権利がありますので、席上配付とすることは妥当ではありません。他の議案と同様、定例会告示日に事前配付する必要があります。

 3)一般質問質問時間について

 議長より示された新たなルール(案)によると「質問時間は再質問を含め概ね30分とする」とあります。

 しかし、再質問を一回のみに制限している杉並区議会において、時間のみを根拠に発言を一律に制限するのでは、本会議審議の形骸化を加速させることにもなりかねません。

 実際これまでも片道30分もの時間を使って質問をしている議員は、私のほかごく少数に過ぎないのであり、大半の議員は早々と終了しています。あえて厳格化を図る理由がありません。

 本会議における一般質問は、議案等の質疑と異なり、各議員単位に質問テーマが設定されています。一般質問の質問内容については、かなり早い時期に要旨を通告しなければならないルールがある等の理由から、各議員は自由に質問できるわけではありません。

 したがって、区職員の答弁が不明確または不十分な場合であっても、他の議員に改めて質問を託すことはできません。前の質問者の質問及び答弁を確認した次の質問者が、当意即妙にこれを引き継ぎ再質問することができるわけではないのです。各議員は、あくまで自らの責任で、個別具体的に再質問をしていかなければ、答弁が改善されるチャンスがないのです。

 しかも、再質問項目は、区職員の答弁次第で内容が決まるものです。

 すなわち、再質問に要する時間は、事前に判断がつきません。所要時間は、区職員答弁の巧拙や説得力の有無により左右されるわけで、時間がかかる場合もあれば、少ない時間で済む場合もあります。そのこと自体は議員の責任とは言い難いものです。

 質問時間に目安を設ける趣旨については理解していますが、そこに再質問を含め、機械的一律的に処理することには問題が多いと言わざるを得ません。

 安易に杓子定規なルールを適用し、その場しのぎの答弁を放置することにでもなれば、議会の怠慢と批判されても仕方がありません。本来必要な再質問まで杓子定規に制限するのでは、単なる発言封じも同然であり、今回の提案には強く反対します。

 4)議員提出議案の委員会付託について

 議長から委員会中心主義を徹底する意向が示され、今後は議員提出議案の場合も、原則として委員会に議案を付託する方針が示されました。

 これによって議員提出議案であっても、今後は公聴会開催への道が開けることになります。

 本会議における提案及び質疑を受けて委員会の下審査及び下調査が充実されるようになり、本会議における最終的な討論を充実させることできれば、議会の活性化につながります。適切な運用を期待します。

 5)議案審査について
 6)委員会での議案審査結果報告について
 7)請願・陳情審査について

 これら議長提案によると、委員会における質疑討論に時間制限や回数制限を設けるとされています。

 しかし、委員会は、付託された事件に関しては、独自の立場で自由に審査を行うことができることになっています(委員会審査独立の原則)。

 委員会運営は、第一義的には各委員会で判断すべきことであって、議長が機械的なルールを強要すべきではありません。たとえば、公聴会は、委員会の判断で開催決定できるもので、本会議で可否を判断できるものでもなければ、議長の命令で開催決定できるものでもありません。

 各委員会に付託した議案をどのような形で審査するかは各委員会の判断に委ねられており、議長に決定権はありません(なお、公聴会開催に関する議長承認は、対外的に公聴会を告示する等の必要があるためであり、議長の個人的判断で決定を拒否できるような性質のものではありません)。

 議長が、各委員会の個別具体的な委員会運営について、各委員長を直接指図することは認められていない、というべきです。各委員長に一定の目安を示すことであれば構いませんが、その場合も「自由かつ活発な討議」を推進する観点から最低限保障すべき水準を示す程度に止める必要があります。

 8)請願・陳情審査結果報告について

 請願・陳情審査を行った委員会の委員長が、本会議において結果報告を行うとの提案には賛成します。

 9)意見書、決議について

 意見書及び決議の提案説明を改善する提案が示されています。

 しかし、ここで委員外議員の発言を取り上げるか取り上げないかだけをクローズアップさせているのは何故でしょうか。これら提案説明のあり方については、これに止まらず全体を見直す必要があるというべきです。

 意見書及び決議の内容は、折々の社会情勢を色濃く反映したものである場合がほとんどです。しかし、議決の際に常識であった事項も、年月を経ることで常識ではなくなっていく場合があります。このため、後に会議録を読んでも、当時なぜ当該文面で議決する必要があったのか、背景事情がよく理解できないケースもあります。

 提案に至った経緯については、提案理由において、やや詳しく説明することが必要と考えます。現在のように、ただ案文を朗読するだけで提案説明を終えるべきではなく、委員会審査等の状況を含め概要を報告することが必要と考えます。

杉並区議会議員(無所属)  堀部 やすし




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