●課題1 高利負債の圧縮を後回しにするのは問題
どちらが得? 「借金返済による利払い減(年6%)」と「年1.5%の利子収入」 |
第1の課題は、災害対策基金を廃止し、減税基金に積立を開始できるような状態になるには、いましばらくの時間が必要である点です。
現在進行中の実施計画・財政計画を達成していない状態の中、いわば「見切り発車」する形で、減税基金への積立を開始することが妥当か否かという問題です。
それには杉並区の残債務と基金取崩しの状況に注意を払う必要があります。区の負債の中には年利6.8%といった高利のものがまだ残っているのです。
杉並区では区債残高ゼロを目指す財政計画に基づき、数年前より区債の繰上償還を進めてきました。
この数年は円滑に繰上償還を進めてきました。しかし、新年度予算においては、収入減から財政計画どおりに償還できる見通しは立っておらず、財政当局もこれには苦渋の答弁をしています。
東京都からの財政調整交付金が、ピーク時決算の400億円から325億円にまで減少する見通しの中においては無理からぬことでしょう。
杉並区は、第4次行財政改革実施プラン「スマートすぎなみ計画」において、区債残高を平成23年度末までにゼロにすることを目標に掲げています。
これを達成するためには、平成22年度当初予算に計上された定時償還分だけでなく、これに加えて、さらに76億円を年度内に償還しなければなりません。
しかし、これを今後の補正予算で処理できるのかといえば、現実にはかなり苦しいものがあります。よほど強引なことをしなければ無理でしょう。
実施計画上の事務事業の少なくない部分が、当初予算に計上されることなく先送りとなっていることをも考え合わせると、前途は多難です。
このような中、新たに減税基金に10億円の積立をするというのですが、その運用目標は1.5%だというのです。
この問題を考えるためには、まず、現在の長期金利が1.3%という低金利にあることを踏まえるべきでしょう。
このような状態である以上は、あえて減税基金に積立をして利子収入を狙うのではなく、本来まずは高利の負債を圧縮することを優先させなければなりません。
利払いを軽くみるべきではありません。
たとえば、杉並第十小学校の校地買収に伴う区債発行額は約40億円でしたが(昭和58年度)、これに伴う利払いは最終的に47億円を超えています。
これでは利子を払うために土地を買っていたようなものです。
現状の低金利状況の下においては、ない知恵を絞って運用益を狙うより、むしろ過去の高利の債務を整理したほうが、相対的に得られる利益は多く、効率的です。合理的な繰上償還は、従来の計画どおり優先的に進めるべきです。
ところが、この方針は、なぜか突然変更されてしまったのです。
●低金利時代なのだから、年利6.8%の借金を先に処理すべき |
現在償還中の区債には、利率7.1%の簡保資金を筆頭に、高利のものが数多くあり、それらに伴う利払いが負担となってきました。
新年度についてみると、利率6.8%台のものをはじめとする高利の区債償還を後回しにする予算を編成していますが、好ましいものではありません。
この低金利の下では、減税基金に10億円を計上して1.5%の利子収入を狙うことより、6%以上の利払いを余儀なくされている過去の区債について繰上償還をしたほうが、明らかに得策というべきです。
補正での対応がかなりの困難を伴うと予想される新年度において、なぜ今年になって方向性を変えたのか、私にはさっぱり理解することができません。
また、今後は区債を発行しないことを原則にすると区は発言していますが、残債務について、高利のものを低利のものに合理的に借り換えるのであれば、何も硬直的に考えることはないはずです。原理原則に囚われて高額な利払いを放置しているというのでは元も子もないのです。
依然として高利の残債務が残っている新年度においては、過去の区債の償還を優先したほうが合理的と考えます。
減税基金の設置(積立の開始)は、あくまで、このような債務の整理がついた後の話だと思うのです。
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